19 / 98
18
しおりを挟む
18
昼までは自由に過ごして良いとの事で、シャーロットとマリアは王城の図書室へやって来た。
「あ、ロッテさん、クラリスさんは大丈夫だったの?」
フェリシティがシャーロットとマリアを見つけて駆け寄って来た。
「フェリさん。大丈夫です。誤解は解けました」
「そう。良かったわ」
シャーロットが笑顔で言うと、フェリシティは安心したように息を吐いた。
「それで、そのクラリスさんは?」
「えーと…」
部屋でイザベラ様と、お互いの親同士の恋愛の話しで盛り上がってる…って言わない方が良いわよね?
いくら誤解だったって言っても、あんな剣幕で盗んだとか言っといて、急に仲良くなるなんておかしいもんね。やっぱり。
「クラリスはさすがに精神的に疲れたって、部屋で休んでるわ」
マリアがそう言うと、フェリシティはさもありなんと頷いた。
-----
図書室のテーブルで本を読んでいるマリアやフェリシティとは別にシャーロットは紋様や装飾の載った本を求めて本棚の間を奥へと進んで行く。
分厚い本の背の凝った装丁を見ているだけでも楽しい。
高い天井まで届きそうなほど高い本棚を見上げて本の背を眺める。
あ、あの星みたいな模様、綺麗…レースで編んで繋げてストールとかにしたらどうかな。
シャーロットは高い位置にある本に手を伸ばす。が、もう少しで手が届かない。
「あとちょっと…」
背伸びをして、本の背の上の部分に指を引っ掛けて引っ張ると、勢い良く本が抜けてシャーロットの頭の方へ落ちて来た。
「……!」
頭上に影。
頭を庇う事もできず、思わず固まるシャーロット。
視界に紺色の装丁の本の影。そして横から白い影が横切った。
バサッ。
シャーロットに当たらず、横に落ちる本。
「え…?」
シャーロットが白い影の方を見ると、そこに右腕をシャーロットの頭上に差し出したユリウスが立っていた。
「当たらなかったか?」
ユリウスはシャーロットの前に屈んで落ちた本を拾う。
「……」
何でユリウス殿下がここに?
「兵法の本じゃないか。読むのか?」
本のタイトルを確認すると、シャーロットの方へ差し出した。
「……」
「ロッテ?」
「…!!」
呆然とユリウスを見ていたシャーロットは思わず息を飲む。
なっ!何でユリウス殿下が私の名前を呼ぶの!?
「ああ…ルーカスがいつも呼ぶように呼んでしまったな…ロッテ嬢、か」
「…いえ、あの、ロッテで良いんですけど、あの、何でここに?お、おられるんですか?あの、何か、あの…不味いんじゃないんですか?」
選考者と接触しちゃいけないとか、だったよね!?
「ああ。わかっているんだが、気分転換に。だから俺とここで会ったのは内緒にしておいてくれ」
人差し指を口の前に立てるユリウス。
「は…はい」
あ、いけない。殿下に本を持たせたままだわ。
「すみません。あの、本が腕に当たりましたよね?大丈夫ですか?」
「ああ、なんて事ない。ロッテの頭に当たらなくて良かった」
「ありがとうございます」
シャーロットはユリウスが手に持った本へ手を伸ばす。
「この本を読むのか?」
シャーロットに本を渡しながら言う。
「あ、いいえ。あの…本の背の模様を近くで見たかったんです」
「模様?」
「星みたいで綺麗だな、と思いまして」
「なるほど」
目の前に濃茶の髪。
やっぱり雰囲気が彼女に似ているな。
前髪の分け目からのぞく額…
ユリウスは思わず手を伸ばしてシャーロットの額に人差し指と中指の背を当てた。
ビクッとシャーロットが身体を揺らす。
そういえば学園の食堂でもトレイに驚いていたし、先程も本が落ちて来て硬直していたな。視界の上に何かが急に入って来るのが苦手なのか?
「…あの…殿下?」
少し上目遣いにユリウスを見るシャーロット。
女の子の顔がこんなに近くにあるのは初めてだな。表情も見えるし…いいな、この感じ。
「ロッテと同じ様な濃茶の髪の女性を知らないか?」
指の背を額につけたまま指で前髪を挟む。
見た目より髪が柔らかいんだな。
「濃茶の髪の女性…ですか?」
「ああ。今二十四、五歳くらいだと思うんだが」
「うーん…」
お兄様が冬に二十二歳になるのだから、それより二、三歳…四歳くらい上?
私より八歳か九歳上って事よね。
その年代に知り合いとかもいないし…よくわからないな。
シャーロットは首を傾げる。が、ユリウスの指は額から離れない。
それにしても何なんだろう。この手は…
…手、大きいな。
「わからないよな。祖父の誕生パーティーに来ていたんだから貴族令嬢の筈だから、俺も色々探してみたんだが、さっぱりわからないんだ」
苦笑いを浮かべるユリウス。
シャーロットの前髪を弄ぶ指。
「彼女が、ロッテと同じ言葉を言ったんだ。だから知らないかと思って…」
「私と?同じ言葉ですか?」
昼までは自由に過ごして良いとの事で、シャーロットとマリアは王城の図書室へやって来た。
「あ、ロッテさん、クラリスさんは大丈夫だったの?」
フェリシティがシャーロットとマリアを見つけて駆け寄って来た。
「フェリさん。大丈夫です。誤解は解けました」
「そう。良かったわ」
シャーロットが笑顔で言うと、フェリシティは安心したように息を吐いた。
「それで、そのクラリスさんは?」
「えーと…」
部屋でイザベラ様と、お互いの親同士の恋愛の話しで盛り上がってる…って言わない方が良いわよね?
いくら誤解だったって言っても、あんな剣幕で盗んだとか言っといて、急に仲良くなるなんておかしいもんね。やっぱり。
「クラリスはさすがに精神的に疲れたって、部屋で休んでるわ」
マリアがそう言うと、フェリシティはさもありなんと頷いた。
-----
図書室のテーブルで本を読んでいるマリアやフェリシティとは別にシャーロットは紋様や装飾の載った本を求めて本棚の間を奥へと進んで行く。
分厚い本の背の凝った装丁を見ているだけでも楽しい。
高い天井まで届きそうなほど高い本棚を見上げて本の背を眺める。
あ、あの星みたいな模様、綺麗…レースで編んで繋げてストールとかにしたらどうかな。
シャーロットは高い位置にある本に手を伸ばす。が、もう少しで手が届かない。
「あとちょっと…」
背伸びをして、本の背の上の部分に指を引っ掛けて引っ張ると、勢い良く本が抜けてシャーロットの頭の方へ落ちて来た。
「……!」
頭上に影。
頭を庇う事もできず、思わず固まるシャーロット。
視界に紺色の装丁の本の影。そして横から白い影が横切った。
バサッ。
シャーロットに当たらず、横に落ちる本。
「え…?」
シャーロットが白い影の方を見ると、そこに右腕をシャーロットの頭上に差し出したユリウスが立っていた。
「当たらなかったか?」
ユリウスはシャーロットの前に屈んで落ちた本を拾う。
「……」
何でユリウス殿下がここに?
「兵法の本じゃないか。読むのか?」
本のタイトルを確認すると、シャーロットの方へ差し出した。
「……」
「ロッテ?」
「…!!」
呆然とユリウスを見ていたシャーロットは思わず息を飲む。
なっ!何でユリウス殿下が私の名前を呼ぶの!?
「ああ…ルーカスがいつも呼ぶように呼んでしまったな…ロッテ嬢、か」
「…いえ、あの、ロッテで良いんですけど、あの、何でここに?お、おられるんですか?あの、何か、あの…不味いんじゃないんですか?」
選考者と接触しちゃいけないとか、だったよね!?
「ああ。わかっているんだが、気分転換に。だから俺とここで会ったのは内緒にしておいてくれ」
人差し指を口の前に立てるユリウス。
「は…はい」
あ、いけない。殿下に本を持たせたままだわ。
「すみません。あの、本が腕に当たりましたよね?大丈夫ですか?」
「ああ、なんて事ない。ロッテの頭に当たらなくて良かった」
「ありがとうございます」
シャーロットはユリウスが手に持った本へ手を伸ばす。
「この本を読むのか?」
シャーロットに本を渡しながら言う。
「あ、いいえ。あの…本の背の模様を近くで見たかったんです」
「模様?」
「星みたいで綺麗だな、と思いまして」
「なるほど」
目の前に濃茶の髪。
やっぱり雰囲気が彼女に似ているな。
前髪の分け目からのぞく額…
ユリウスは思わず手を伸ばしてシャーロットの額に人差し指と中指の背を当てた。
ビクッとシャーロットが身体を揺らす。
そういえば学園の食堂でもトレイに驚いていたし、先程も本が落ちて来て硬直していたな。視界の上に何かが急に入って来るのが苦手なのか?
「…あの…殿下?」
少し上目遣いにユリウスを見るシャーロット。
女の子の顔がこんなに近くにあるのは初めてだな。表情も見えるし…いいな、この感じ。
「ロッテと同じ様な濃茶の髪の女性を知らないか?」
指の背を額につけたまま指で前髪を挟む。
見た目より髪が柔らかいんだな。
「濃茶の髪の女性…ですか?」
「ああ。今二十四、五歳くらいだと思うんだが」
「うーん…」
お兄様が冬に二十二歳になるのだから、それより二、三歳…四歳くらい上?
私より八歳か九歳上って事よね。
その年代に知り合いとかもいないし…よくわからないな。
シャーロットは首を傾げる。が、ユリウスの指は額から離れない。
それにしても何なんだろう。この手は…
…手、大きいな。
「わからないよな。祖父の誕生パーティーに来ていたんだから貴族令嬢の筈だから、俺も色々探してみたんだが、さっぱりわからないんだ」
苦笑いを浮かべるユリウス。
シャーロットの前髪を弄ぶ指。
「彼女が、ロッテと同じ言葉を言ったんだ。だから知らないかと思って…」
「私と?同じ言葉ですか?」
10
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい
瑞原唯子
恋愛
だから、きっと、恋を知らないままでよかった。
伯爵令嬢のシャーロットはもうすぐ顔も知らないおじさまと結婚する。だから最後にひとつだけわがままを叶えようと屋敷をこっそり抜け出した。そこで知り合ったのは王都の騎士団に所属するという青年で——。
---
本編完結しました。番外編も書きたかったエピソードはひとまず書き終わりましたが、気が向いたらまた何か書くかもしれません。リクエストなどありましたらお聞かせください。参考にさせていただきます。
人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
転生令嬢は腹黒夫から逃げだしたい!
野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
華奢で幼さの残る容姿をした公爵令嬢エルトリーゼは
ある日この国の王子アヴェルスの妻になることになる。
しかし彼女は転生者、しかも前世は事故死。
前世の恋人と花火大会に行こうと約束した日に死んだ彼女は
なんとかして前世の約束を果たしたい
ついでに腹黒で性悪な夫から逃げだしたい
その一心で……?
◇
感想への返信などは行いません。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる