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「お兄様の結婚相手は、美しくて、優しくて、嫋やかで、清楚で、奥ゆかしくて、優雅で、艶やかで、麗しい人でないと!私は絶対に認めないわ!」
アイリーンが立ち上がってシャーロットとマリアの方を指差して言う。
そんなアイリーンには構わず、シャーロットは驚愕の表情で、マリアは不思議そうな表情で、互いに見つめ合っていた。
「……!」
「……?」
アイリーンはシャーロットとマリアを交互に何度も見る。
「姉上…この二人、どうしたんです?」
スアレスが言うと、アイリーンは
「知らないわよ!何なのよ!私の話しを聞きなさいよ!」
と叫んだ。
-----
第一王女アイリーンが飲み物を一口飲むと、口を押さえて倒れ込む。
「キャーッ!」
「アイリーン殿下!?」
近くにいたフェリシティはスローモーションの様に倒れるアイリーンを見ていた。
青い顔で口を押さえるアイリーン。波打つ髪の毛が床に広がっている。
「毒だ!!」
アイリーンの護衛騎士がそう叫ぶ。
毒?毒って…こんな所で何故?
「アイリーン様!」
アイリーン付きの侍女らしき女性が駆け寄る。ダンスの相手をしていた侍従や近衛騎士たちも集まって来て、アイリーンの周りを取り囲む。
令嬢たちが少し離れて人垣を作り、フェリシティもその人垣の中にいた。
「医師を!早く!」
「飲み物か!?」
「どうしてアイリーン様が!」
ザワザワと騒めく中、アイリーン付きの侍女が一人の令嬢を指差して言った。
「あの方がアイリーン殿下に飲み物を渡されました」
「私…?」
指差された令嬢は青褪めてふるふるとクビを振る。護衛騎士がその令嬢に歩み寄ると、その令嬢の周りにいた人たちが少し離れて令嬢と騎士を遠巻きにした。
「飲み物に何か入れたのか?」
「いいえ」
護衛騎士が言うと、令嬢は青褪めながらも毅然と言う。
「名は?」
「オードリー。オードリー・グッドウィンよ」
グッドウィン公爵家の令嬢なのね。公爵家なら、王子と年齢の釣り合う娘がいれば妃にする事を一度は考えるだろうけど…例えあのオードリーという子が王太子妃になりたいと思っていたとしても、王女に毒を盛る理由はないわね。
フェリシティは騎士とオードリーと名乗る令嬢との遣り取りを聞きながらそう考えていた。
「私は何もしてないわ!」
「では何故、貴女が渡した飲み物を飲んだ殿下が倒れられたんだ?」
「知らないわ。私があのグラスを持つ前に、既に何か仕込んであったのでは?」
腕を組んで、騎士を見据えて言うオードリー。しかし組んだ腕が震えているのがフェリシティには見て取れた。
担架が来て、アイリーンを乗せると、人垣を抜けて行く。
「もちろんグラスを並べた者や飲み物を注いだ者にも状況を聞くが、貴女にも聞かせてもらう。別室へ来てもらおう」
「…いやよ。何故私が…私は何もしていないのに…」
「話しは別室で聞こう」
騎士がオードリーの方へ手を伸ばす。
うーん…目立ちたいのも確かなんだけど、それよりも単純にこういうの、嫌いなのよねぇ。
フェリシティは咄嗟に駆け寄ると、騎士の手首を手刀で叩いた。
「何を!?」
騎士が驚いた顔でフェリシティを見た。
あら、格好良い。さすが王女の護衛騎士。でも証拠もないのに令嬢に高圧的に接するなんてきっと嫌な奴だわ。
「レディに乱暴な真似をするものではなくてよ?」
フェリシティは騎士に微笑みかける。
「ら、乱暴など…」
騎士は「心外だ」という表情でフェリシティを見たが、フェリシティは無視してオードリーに話し掛けた。
「オードリー様、ここで騒ぎを大きくするより別室でお話しをされた方が良いかと」
「でも…」
フェリシティを見るオードリーのすがる様な不安そうな瞳。
「大丈夫ですよ。オードリー様にアイリーン王女殿下を害する理由なんてありませんもの。きちんと説明すれば疑いは晴れますわ」
ニッコリと笑って言うフェリシティ。
オードリーはこくんと頷くと、フェリシティのドレスの袖のフリルを摘んだ。
「一緒に…行ってくださいませんか?」
「もちろん。騎士様がお許しくだされば」
フェリシティはちらっと騎士の方を見る。
「構わん。一緒に来ると良い」
騎士はフェリシティから目を逸らすと仏頂面で言った。
「お兄様の結婚相手は、美しくて、優しくて、嫋やかで、清楚で、奥ゆかしくて、優雅で、艶やかで、麗しい人でないと!私は絶対に認めないわ!」
アイリーンが立ち上がってシャーロットとマリアの方を指差して言う。
そんなアイリーンには構わず、シャーロットは驚愕の表情で、マリアは不思議そうな表情で、互いに見つめ合っていた。
「……!」
「……?」
アイリーンはシャーロットとマリアを交互に何度も見る。
「姉上…この二人、どうしたんです?」
スアレスが言うと、アイリーンは
「知らないわよ!何なのよ!私の話しを聞きなさいよ!」
と叫んだ。
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第一王女アイリーンが飲み物を一口飲むと、口を押さえて倒れ込む。
「キャーッ!」
「アイリーン殿下!?」
近くにいたフェリシティはスローモーションの様に倒れるアイリーンを見ていた。
青い顔で口を押さえるアイリーン。波打つ髪の毛が床に広がっている。
「毒だ!!」
アイリーンの護衛騎士がそう叫ぶ。
毒?毒って…こんな所で何故?
「アイリーン様!」
アイリーン付きの侍女らしき女性が駆け寄る。ダンスの相手をしていた侍従や近衛騎士たちも集まって来て、アイリーンの周りを取り囲む。
令嬢たちが少し離れて人垣を作り、フェリシティもその人垣の中にいた。
「医師を!早く!」
「飲み物か!?」
「どうしてアイリーン様が!」
ザワザワと騒めく中、アイリーン付きの侍女が一人の令嬢を指差して言った。
「あの方がアイリーン殿下に飲み物を渡されました」
「私…?」
指差された令嬢は青褪めてふるふるとクビを振る。護衛騎士がその令嬢に歩み寄ると、その令嬢の周りにいた人たちが少し離れて令嬢と騎士を遠巻きにした。
「飲み物に何か入れたのか?」
「いいえ」
護衛騎士が言うと、令嬢は青褪めながらも毅然と言う。
「名は?」
「オードリー。オードリー・グッドウィンよ」
グッドウィン公爵家の令嬢なのね。公爵家なら、王子と年齢の釣り合う娘がいれば妃にする事を一度は考えるだろうけど…例えあのオードリーという子が王太子妃になりたいと思っていたとしても、王女に毒を盛る理由はないわね。
フェリシティは騎士とオードリーと名乗る令嬢との遣り取りを聞きながらそう考えていた。
「私は何もしてないわ!」
「では何故、貴女が渡した飲み物を飲んだ殿下が倒れられたんだ?」
「知らないわ。私があのグラスを持つ前に、既に何か仕込んであったのでは?」
腕を組んで、騎士を見据えて言うオードリー。しかし組んだ腕が震えているのがフェリシティには見て取れた。
担架が来て、アイリーンを乗せると、人垣を抜けて行く。
「もちろんグラスを並べた者や飲み物を注いだ者にも状況を聞くが、貴女にも聞かせてもらう。別室へ来てもらおう」
「…いやよ。何故私が…私は何もしていないのに…」
「話しは別室で聞こう」
騎士がオードリーの方へ手を伸ばす。
うーん…目立ちたいのも確かなんだけど、それよりも単純にこういうの、嫌いなのよねぇ。
フェリシティは咄嗟に駆け寄ると、騎士の手首を手刀で叩いた。
「何を!?」
騎士が驚いた顔でフェリシティを見た。
あら、格好良い。さすが王女の護衛騎士。でも証拠もないのに令嬢に高圧的に接するなんてきっと嫌な奴だわ。
「レディに乱暴な真似をするものではなくてよ?」
フェリシティは騎士に微笑みかける。
「ら、乱暴など…」
騎士は「心外だ」という表情でフェリシティを見たが、フェリシティは無視してオードリーに話し掛けた。
「オードリー様、ここで騒ぎを大きくするより別室でお話しをされた方が良いかと」
「でも…」
フェリシティを見るオードリーのすがる様な不安そうな瞳。
「大丈夫ですよ。オードリー様にアイリーン王女殿下を害する理由なんてありませんもの。きちんと説明すれば疑いは晴れますわ」
ニッコリと笑って言うフェリシティ。
オードリーはこくんと頷くと、フェリシティのドレスの袖のフリルを摘んだ。
「一緒に…行ってくださいませんか?」
「もちろん。騎士様がお許しくだされば」
フェリシティはちらっと騎士の方を見る。
「構わん。一緒に来ると良い」
騎士はフェリシティから目を逸らすと仏頂面で言った。
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