長身令嬢ですが、王太子妃の選考大会の招待状が届きました。

ねーさん

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「ロッテ?どうしたの?」
 図書室に入ると、すぐにシャーロットに気付いたマリアが椅子から立ち上がって声を掛けた。
「マリア…」
 私ユリウス殿下に嫌われたのかも知れない。
 そう言い掛けたシャーロットは、ユリウスと話した内容は選考の結果が出るまで他言してはならないと言われた事を思い出す。
「ロッテ?」
「……」
 マリアはシャーロットの眉間に寄った皺に手を伸ばすと、人差し指でグリグリと眉間を押した。
 そして、シャーロットにニコリと笑い掛ける。
「マリア…ありがと。帰ろっか」
 シャーロットはマリアの指が離れた自分の眉間を手で押さえながら笑って言う。
「うん」
 マリアは笑ってシャーロットを見上げた。

-----

 四次選考の候補者との面接を終えて、王宮の自分の部屋へと戻ったユリウスは、ソファに座ると大きく息を吐いた。
「やはり自分の部屋が落ち着くか?」
 側に立つメレディスが言うと、ユリウスは「ああ」と頷く。
「メレディスたちも今日は家に帰れるんだろ?さすがに疲れただろう」
「ああ。泊まり込み自体は珍しくないが、こんなに長いのは初めてだったから若干な。そういえば、あの令嬢と何を話したんだ?」
「あの令嬢?」
 メレディスは少し言いにくそうに
「ほら、あの背の高い…」
 と言う。
「ロッテ?」
「そう」
「ロッテがどうかしたのか?」
「ユリウスと話して部屋から出て来た後、扉の前に座り込んだんだ」
「は?」
 ユリウスはメレディスを見る。
「動揺していた様に見えた。俺が『殿下に会って緊張したのか?』と聞くと『緊張が切れて気が抜けた』と言った。騎士が心配していたから俺に合わせたんだと思う」
 動揺…王太子に「部屋から出ろ」と言われたらそれは動揺するよな…
「あのロッテという令嬢は、察しが良いと言うか…まあ、良いだな」
 メレディスが少し頬を赤くして言う。
 は?何だこのメレディスの表情は。
「…葡萄ジュースを掛けられた時、ロッテの事『大女』で『かわいげがない』と言ってなかったか?」
「ああ…まあ、話してみたら、な」
 ポリポリと頬を掻くメレディス。
「あれも俺の気を引きたくてやった事かも知れないしな…」
 小声で呟く。その言葉はユリウスには聞こえなかった。

 メレディスの態度が変わったのは、夜会でロッテとダンスをした時に話しをしたからか?
 まあこれでメレディスがロッテの事を暴言で傷付ける事はないだろうから、それは良かった。
 しかし動揺か…
 ロッテは俺の問い掛けに心当たりを教えてくれただけなのに、いくら一人になりたかったからと言っても「出て行け」と言われたも同然で…ああ、ロッテを傷付けたのはメレディスより俺なのかも知れない。

「ユリウス?」
 メレディスが黙っているユリウスに声を掛けた。
「ああ…いや。そういえばルーカスは?」
 小さく頭を横に振る。
「ユリウスの出した選考結果を持って宰相たちと話してる。通過者への通知の段取りもあるしな」
「そうか」
 最初の考え通り、ロッテを最終選考者五名に残した。名を記した紙を見てもルーカスは表情を変えなかったが、もしかするとロッテの方から王太子妃候補を辞退されるかもな…

-----

「余興ですよ。女装の男子と男装の女子がダンスをする。出番まで時間があったので庭を散歩していたんです」
 就寝前にユリウスの部屋にやって来たルーカスは、昼間に次の候補者が来たので途中になっていた、庭でユリウスと初めて会った時の状況を話し出した。
「余興…」
 ソファに座るユリウスは、向かいのソファの後ろに立つルーカスをじっと見つめた。
 改めてよく見てみると、この顔立ち、確かにだな。
「学園に行く年齢の貴族の子息子女が参加したのですが、男子が少なくて、私はその時十二歳でしたが、背が高く歳より上に見えたので人数合わせに駆り出されたのです」
 確かに十二歳には見えなかったな。俺がを十四、五歳の令嬢だと思ったのはそういう訳か。

「髪が…あの時はもっと髪の色が濃くなかったか?」
「そうですね。子供の頃から比べると少し色は薄くなりました」
 ルーカスは後ろで結わえた自分の髪を触りながら言う。
「それに一人称も『私』だった。成り切っていたのか?」
「いえ。私は幼い頃から『私』でしたね」
「そうなのか」
「それにしても殿下、今まで何も言われなかったので、覚えておられないのかと思っておりました」

 ユリウスは少し赤くなって俯いた。
「……だ」
「はい?」
「…はつ、恋だったんだ!」
 ユリウスはそう言うと、バツが悪そうに手で顔を覆う。
「初恋?」
 ルーカスが瞠目してユリウスを見ている。
「そうだ」
「私が…いえ、あの庭で会った令嬢が、殿下の初恋の相手…なのですか?」
「そうだ」
「…もしや、その令嬢がお好きなので、今までご婚約を拒否されていたのですか?」
「そうだ。いや。もう何も言うな。俺は自分が情けないし、恥ずかしい。もう充分だ」
 顔を覆うユリウスは、真っ赤になりながら手をブンブンと横に振った。



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