長身令嬢ですが、王太子妃の選考大会の招待状が届きました。

ねーさん

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 ユリウスは馬場を賭けるフェリシティの馬を目で追いながら、スラロームを通る時、視線の先に重なるシャーロットの様子を見ていた。

 俯いている?どうしたんだ?

 ああ、楽しそうに話しているな。

 シャーロットに視線を止めない様、気をつけながら眺めていたが、一瞬、視線を止めてしまった。

 …頬が赤い。

 !
 いけない。
 また視線を馬に移す。
 ドクン。と心臓が鳴る。
 ロッテは何の話しをしていたのだろう?…グリフの事か?
 また馬がスラロームに差し掛かって、シャーロットが視界に入ると、シャーロットは赤く染まった頬を押さえてマリアに何か言っていた。
 ただロッテが赤くなっているだけで心を乱されるのか。俺は。
 ユリウスは立ち上がると、自分を見上げているオードリーに言った。
「執務に戻る。オードリーも向こうで話すと良い」

 執務室に入ると、ルーカスが驚いた顔をしてユリウスを見た。
「早いですね」
「ああ」
 ユリウスは執務机の椅子へドサリと座ると、上を向いて両手で顔を覆う。
「何かありましたか?」
「いや何もない」
 何もない。ただロッテが赤くなっていただけだ。

 ユリウスはふぅっと息を吐くと顔を覆っていた手を下ろした。
 考えるな。
「お茶を用意しましょうか?」
 ルーカスが心配そうな表情でユリウスに言う。
「いや、いい」
 考えるな。
 ユリウスはペンを手に取り、書類に向かった。

-----

「ユリウス殿下は執務に戻られたの?」
 シャーロットたちの席にやって来たオードリーに、マリアが尋ねる。
「あ、王太子妃になられる方に砕けた話し方しすぎたかしら?」
 マリアが手で口元を押さえながら言うと、オードリーは手を横に振った。
「いえ、全然。むしろ公の場以外ではずっとそのままでお願いします」
「そう?」
「殿下は執務に戻るって…時間的にはもう少しおられる予定だったんですけど」
 オードリーは首を傾げながら言う。
「何かあったの?」
 シャーロットが言うと、オードリーはかぶりを振った。
「特に何も。急用を思い出されたのかも」
「そう…」

「ねえ、オードリーさん、最近は食堂の中二階でユリウス殿下と食事を摂られてるんでしょう?フェリさんとは食堂でも良く会うんだけど、オードリーさんとは会う機会がなかなかないものね」
 マリアの言葉を聞いて、クラリスが言う。
「学園の食堂って広いんですよね?知り合いがいても気付かなそうですけど…」
「毎日だと大体同じ様な場所に席を取るから」
「あ、なるほど」
 クラリスが頷くとオードリーも頷いた。
「そうですよね。殿下もいつも食堂の出入口が見える席に座られるので、ロッテさんたちが食堂に来られた時には気が付きますよ」
「私が周りの女子生徒より飛び抜けてるから目立つものね」
 シャーロットは苦笑いを浮かべる。
 出入口から中二階を見ても誰がいるのかなんてわからないのに、私の背が高いから、向こうからは気付かれるのかぁ。

「いつも殿下が出入口を見られてて、それで私も気が付……」
 あ、そうか。
 オードリーはふと気付く。
「オードリーさん?」
「どうしたの?」
「?」
 シャーロットとマリアとクラリスが、急に言葉を切ったオードリーを不思議そうに見ていた。

 フェリさんが一緒で三人だったり、マリアさんと二人だったり、たまにロッテさん一人だったりするけど、いつもユリウス殿下が先にロッテさんたちが食堂に入って来られた事に気付かれるんだわ。
 殿下はロッテさんたちに気が付いても何も言われないし、表情も変わらない。見えなくなってから視線をそっと戻される。
 王太子妃候補だからと言う理由で三人を気に掛けていらっしゃるなら、気付けば口にされるんじゃないかしら?
 つまり、ユリウス殿下は、三人の内の誰かを特別に気に掛けていらっしゃるけれど、それは私には言えないという事、よね?
 でも「特別」な方がおられるなら、候補者なんだし、婚約者に指名してしまえば良いのではないの?

 そういえばフェリさんとクラリスからは「王太子妃にはなりたくない」と言われたと仰っていたけど、ロッテさんとマリアさんに関してはどうだったのかしら。

 私はユリウス殿下を「特別」に好きな訳ではないし、王太子なら側妃を持たれる事も充分考えられるから、ユリウス殿下に「特別」な方がおられてもそんなに気にはならないんだけど。
 それでも、まあ…ロッテさんやマリアさんとはせっかくお友達になったんだし、正妃と側妃で王太子の寵愛を競う事になるのはちょっと嫌かなあ。







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