長身令嬢ですが、王太子妃の選考大会の招待状が届きました。

ねーさん

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「ごめんなさい」
「済まない」
 王城の医療棟の病室でシャーロットが目が覚めた途端に、ベッドの傍らの椅子に座っていたマリアとルーカスが揃って立ち上がり、揃って頭を下げた。
「え?何?」
 シャーロットは困惑しながら身体を起こす。
 右の前腕部に包帯が巻いてある。
「だって、私、またロッテに助けられて…」
 マリアの眼に涙が浮かぶ。
「マリアが無事で良かったわ」
「今度こそ私がロッテを助ける筈だったのにぃ」
 ポロポロと涙が溢れる。
「泣くなマリア。謝るべきなのは私なんだから」
 ルーカスがマリアの肩を抱く。
 …ん?今までにない距離感。ってお兄様が謝るべきって、何で?
「ロッテ、済まない。私は絶対にロッテを守ると誓っていたのに、肝心な時に守れなかった」
 頭を下げるルーカス。
「え?何で?誓うなんて大袈裟な…」
「大袈裟ではない」
 ルーカスは真っ直ぐにシャーロットを見た。
「私は…責任者だったんだ」

 …え?「あのビル工事」って…もしかして前世の?
「あの、鉄板の…ビル工事?」
「そうだ」
 ルーカスは厳しい表情で頷く。
 えーと、それって…
「え?責任者?あ、待って!それってお兄様も生まれ変わったって事ですか?」
「そうだ」
「それで、前世はあのビルの工事の責任者だった…?」
「そうだ。責任者…所謂現場監督。聞いた事あるだろう?」
「はい」
 私の前世も今世も高校生ほどの浅い知識では、現場監督って工事現場の事、全ての責任者よね?くらいのものだけど…

 ルーカスは、前世では中堅総合建設業ゼネコンの社員で、現場責任者、施工管理技士などの資格を持ち、工事の工程管理、品質管理、安全管理などをしていたのだと話す。
「あのビルは下請け、孫請け会社が施工していて安全管理が不十分だった。…私の責任だ」
 あの事故の後、前世のルーカスは会社を辞めて田舎に帰り、小さな地元の建設会社で事務方として働いていたそうだ。

「お兄様が小さい頃から自分の事『私』って言うの、前世のせいですか?」
 シャーロットがそう聞くと、ルーカスは苦笑いを浮かべる。
「そこ、気になるか?でもまあそうだな。例え前世でもそこそこの年齢の記憶があると自分を『僕』とか『俺』とは呼び辛い」
「お兄様、前世では何歳まで…?」
「さあ?私の前世の記憶は、あの事故の少し前から、地元の建設会社で働き始めるまでの数年分しかないんだ。事故当時は三十六歳だった」
 三十六…それはしっかり大人だわ。
「そうなんですか…私は前世で子供だった頃の事も思い出しましたけど、結構個人差があるんですね」
「私の場合はあの事故辺りが一番鮮明で、そこから過去へ行く程、未来へ行く程記憶が薄くなっていく様な感じです」
 マリアが人差し指で放物線を顔の前に描く。
「山みたいな?ふもとから盛り上がって、頂上を通って、下りてまたふもと、みたいな」
「そうそう」
「ふむ。本当にこの辺りは人それぞれなんだな」
 ルーカスが感心した様に言った。

「マリアは、お兄様も転生者だって知ってたの?」
「うん。私が前世を思い出した時、ルーカス様へ『今度こそロッテを守るために私はここに生まれ変わったんです。だからロッテとずっと一緒にいられるようにしてください。それとロッテに強くて優しくてカッコいい旦那様を探してください』って直訴したのよ」
 ええ…「強くて優しくて」はわかるけど「カッコいい」は必要かなあ?
「そうしたらルーカス様が『私もロッテを守るためにここにいるんだ』って言われたの」
「えーと、じゃあ私がその事故で死んだ子だって云うのは何でわかったの?」
「『わかった』んじゃなくて…上手く言えないけど、ロッテがその子だって、最初から知ってたって感じ」
「そうなんだ…お兄様も?」
「ああ。私はロッテが生まれた時から『この子を絶対に守らなくては』と強く思っていて、あの事故の事を思い出した時、そうか、だからか、と納得した」

 そう言ったルーカスは、俯くと、自分の手をぐっと握りしめた。
「私は…ロッテを守るために生まれ変わって来たと言うのに…」
「肝心な時にってお兄様言われましたけど、今回の事故は学園で起こったんだから、仕方ないですよね?」
 だってお兄様は学園生じゃないんだから、学園の行事での事故だと助けるのは物理的に無理だよね。
「いや、あの時、私は学園に…ロッテのすぐ近くにいたんだ。ユリウス殿下に火急の知らせがあって」
 ユリウス殿下。
 気を失う寸前に紫色の影が見えた、気がしたけど…
「それなのに、私は」

 バアンッ!

 ルーカスが真剣な面持ちで言い掛けた時、病室の扉が勢い良く開いた。
「ロッテ様!ご無事か!?」
 扉を開けた勢いのまま病室に飛び込んで来たのは、簡易的な鎧を身に付け、大ぶりな剣を腰から下げた…

 女騎士だった。



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