81 / 98
80
しおりを挟む
80
バタンッ!
扉が開いて黒尽くめの男たちが剣を構えて病室へ入って来る。十人はいるだろうか。
「何者だ!?」
グリフが剣を振り先に入って来た二人を薙ぎ払い、ルーカスも男の剣を自分の剣で受け止めた。
「筆頭侍従に護衛隊副隊長、婚約者候補が二人、揃っているとは都合が良いな」
男の一人が無機質な声で言う。
「第二王子派か!?」
剣を振り上げる黒尽くめの男二人に応戦しながらルーカスが言った。
キンッ!キンッ!
シャーロットは剣が交わる音を聞きながらベッドを降りると、目を覚ましたマリアと部屋の窓の方へ逃げる。
「いざとなったら…」
シャーロットが窓の方をチラッと見る。
「ここ三階だけど…仕方ないわね」
窓は外開きの二枚扉。窓の外には大きな木。幹は飛び移れる程近くはないが、窓近くまで枝が伸びて来ている。窓の下には植え込み。怪我はするだろうが、落下しても命は助かる確率が高いだろう。
明るい内にそれを確認していたマリアも頷いた。
「陛下が視察にお連れになったのはスアレス殿下だ!スアレス殿下を跡継ぎにと望まれているのは明白!」
「だからと言って俺たちを害してどうなるって言うんだ!?」
グリフはそう喚く黒尽くめの男を斬りつける。
「こんな事を仕出かせばスアレス殿下のお立場が悪くなるだけだろうに」
ルーカスはそう言うと、向かって来た男の剣を避けると、剣の柄で男の背中を殴った。
ドサッ!
とシャーロットとマリアの足元に男が倒れ込んで来る。
「「きゃあ!」」
シャーロットとマリアが叫び声を上げると、男がムクリと起き上がる。
「マリア!ロッテ!」
ルーカスが男の剣を自らの剣で受けながら叫ぶ。
黒尽くめの男の目出し帽からギラギラとした瞳が見えた。
マリアがシャーロットを庇うように一歩男の方へ踏み出し両手を横に広げる。
マリアを盾にするなんてできない。
シャーロットは窓を勢い良く開けた。
男が大きく剣を振りかざす。
「逃すか!王太子妃に相応しいのは…」
後退るマリアの後ろで前屈みになるシャーロット。
「ト」
マリアの腰の辺りに両手を伸ばす。
「レ」
後ろから抱きつくようにマリアのお腹に腕を回す。
「イ」
振り向こうとするマリア。
「シ」
そうする間もなく、マリアをぐいっと持ち上げた。
「ィ」
シャーロットは窓枠にマリアを乗せるように男に背中を向ける。
「さ」
男の剣が振り下ろされるのがスローモーションのように視界の端に見えた。
「ま」
切られる!
シャーロットがマリアを押しながらギュッと目を閉じると…
「駄目!!」
女性の声がして、シャーロットの背中に何かがぶつかった。
-----
ユリウスが国王の執務室で、王とスアレスへ地震被害の報告をしていると、王の従者が執務室へ入って来た。
「第二王子派が、ユリウスの婚約者候補たちを同時襲撃?」
王が声を上げる。
「な!?」
ユリウスが椅子から立ち上がる。
「はい。そのような計画があると…陛下とスアレス殿下が王都に戻られる前に、と言う事で今夜決行だという情報でして」
「婚約者候補にはそれぞれ護衛騎士をつけているが…」
「それが、護衛騎士や殿下の側近たちも襲撃の対象だそうで、セルザム公爵家が傭兵部隊を雇ったとの情報があります」
「セルザム公爵家?」
ユリウスは訝しみながら言う。
セルザム公爵家はトレイシーの家だが…
「セルザム公爵家は第二王子派ではないだろう?中立だが、どちらかと言えば第一王子派の筈だぞ?」
ユリウスの思った疑問を王がそのまま口にした。
「それが何故か今は手を組んでおり、目的はユリウス殿下を王太子から降ろす事のようです」
「兄上を王太子から降ろす!?そんな事、俺は望んでいません!勝手に第二王子派などと名乗る癖に俺の気持ちは無視するのか…」
スアレスが絶望的な表情で言う。
「……」
俺が王太子を降りるのを望んでいるとしても、ここで第二王子派の思惑通りに事が運んだと思わせるのは良くないな。
スアレスが王太子、延いては王になった時、第二王子派が必要以上に幅を利かせるようでは困る。
「あ…兄上、俺は第二王子派がこんな事を企てているなど知りませんでした。本当です」
黙ってしまったユリウスに裏切りを疑われているかと思ったスアレスは慌てた様子で言う。
「ああ…大丈夫だ。スアレスを疑ってなどいない」
アイリーンの言う通りなら、スアレスもユリウスを神格化する程好きな筈なのだ。
「兄上…」
ウルウルキラキラした瞳でユリウスを見るスアレス。
「なるほど、弟もなかなかかわいいものなんだな」
ユリウスはそう言いながらスアレスの頭を撫でた。
バタンッ!
執務室の扉が勢い良く開く。
「ユリウス!…殿下!」
メレディスが駆け込んで来た。
「ロッテの病室へ賊が!!」
バタンッ!
扉が開いて黒尽くめの男たちが剣を構えて病室へ入って来る。十人はいるだろうか。
「何者だ!?」
グリフが剣を振り先に入って来た二人を薙ぎ払い、ルーカスも男の剣を自分の剣で受け止めた。
「筆頭侍従に護衛隊副隊長、婚約者候補が二人、揃っているとは都合が良いな」
男の一人が無機質な声で言う。
「第二王子派か!?」
剣を振り上げる黒尽くめの男二人に応戦しながらルーカスが言った。
キンッ!キンッ!
シャーロットは剣が交わる音を聞きながらベッドを降りると、目を覚ましたマリアと部屋の窓の方へ逃げる。
「いざとなったら…」
シャーロットが窓の方をチラッと見る。
「ここ三階だけど…仕方ないわね」
窓は外開きの二枚扉。窓の外には大きな木。幹は飛び移れる程近くはないが、窓近くまで枝が伸びて来ている。窓の下には植え込み。怪我はするだろうが、落下しても命は助かる確率が高いだろう。
明るい内にそれを確認していたマリアも頷いた。
「陛下が視察にお連れになったのはスアレス殿下だ!スアレス殿下を跡継ぎにと望まれているのは明白!」
「だからと言って俺たちを害してどうなるって言うんだ!?」
グリフはそう喚く黒尽くめの男を斬りつける。
「こんな事を仕出かせばスアレス殿下のお立場が悪くなるだけだろうに」
ルーカスはそう言うと、向かって来た男の剣を避けると、剣の柄で男の背中を殴った。
ドサッ!
とシャーロットとマリアの足元に男が倒れ込んで来る。
「「きゃあ!」」
シャーロットとマリアが叫び声を上げると、男がムクリと起き上がる。
「マリア!ロッテ!」
ルーカスが男の剣を自らの剣で受けながら叫ぶ。
黒尽くめの男の目出し帽からギラギラとした瞳が見えた。
マリアがシャーロットを庇うように一歩男の方へ踏み出し両手を横に広げる。
マリアを盾にするなんてできない。
シャーロットは窓を勢い良く開けた。
男が大きく剣を振りかざす。
「逃すか!王太子妃に相応しいのは…」
後退るマリアの後ろで前屈みになるシャーロット。
「ト」
マリアの腰の辺りに両手を伸ばす。
「レ」
後ろから抱きつくようにマリアのお腹に腕を回す。
「イ」
振り向こうとするマリア。
「シ」
そうする間もなく、マリアをぐいっと持ち上げた。
「ィ」
シャーロットは窓枠にマリアを乗せるように男に背中を向ける。
「さ」
男の剣が振り下ろされるのがスローモーションのように視界の端に見えた。
「ま」
切られる!
シャーロットがマリアを押しながらギュッと目を閉じると…
「駄目!!」
女性の声がして、シャーロットの背中に何かがぶつかった。
-----
ユリウスが国王の執務室で、王とスアレスへ地震被害の報告をしていると、王の従者が執務室へ入って来た。
「第二王子派が、ユリウスの婚約者候補たちを同時襲撃?」
王が声を上げる。
「な!?」
ユリウスが椅子から立ち上がる。
「はい。そのような計画があると…陛下とスアレス殿下が王都に戻られる前に、と言う事で今夜決行だという情報でして」
「婚約者候補にはそれぞれ護衛騎士をつけているが…」
「それが、護衛騎士や殿下の側近たちも襲撃の対象だそうで、セルザム公爵家が傭兵部隊を雇ったとの情報があります」
「セルザム公爵家?」
ユリウスは訝しみながら言う。
セルザム公爵家はトレイシーの家だが…
「セルザム公爵家は第二王子派ではないだろう?中立だが、どちらかと言えば第一王子派の筈だぞ?」
ユリウスの思った疑問を王がそのまま口にした。
「それが何故か今は手を組んでおり、目的はユリウス殿下を王太子から降ろす事のようです」
「兄上を王太子から降ろす!?そんな事、俺は望んでいません!勝手に第二王子派などと名乗る癖に俺の気持ちは無視するのか…」
スアレスが絶望的な表情で言う。
「……」
俺が王太子を降りるのを望んでいるとしても、ここで第二王子派の思惑通りに事が運んだと思わせるのは良くないな。
スアレスが王太子、延いては王になった時、第二王子派が必要以上に幅を利かせるようでは困る。
「あ…兄上、俺は第二王子派がこんな事を企てているなど知りませんでした。本当です」
黙ってしまったユリウスに裏切りを疑われているかと思ったスアレスは慌てた様子で言う。
「ああ…大丈夫だ。スアレスを疑ってなどいない」
アイリーンの言う通りなら、スアレスもユリウスを神格化する程好きな筈なのだ。
「兄上…」
ウルウルキラキラした瞳でユリウスを見るスアレス。
「なるほど、弟もなかなかかわいいものなんだな」
ユリウスはそう言いながらスアレスの頭を撫でた。
バタンッ!
執務室の扉が勢い良く開く。
「ユリウス!…殿下!」
メレディスが駆け込んで来た。
「ロッテの病室へ賊が!!」
10
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
転生令嬢は腹黒夫から逃げだしたい!
野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
華奢で幼さの残る容姿をした公爵令嬢エルトリーゼは
ある日この国の王子アヴェルスの妻になることになる。
しかし彼女は転生者、しかも前世は事故死。
前世の恋人と花火大会に行こうと約束した日に死んだ彼女は
なんとかして前世の約束を果たしたい
ついでに腹黒で性悪な夫から逃げだしたい
その一心で……?
◇
感想への返信などは行いません。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる