94 / 98
番外編2
しおりを挟む
番外編2
「カーティスと申します。はじめましてアイリーン殿下」
胸に手を当て、会釈をすると、銀の長い髪が肩からサラリと落ちた。
色が白くて、瞳も銀色で、背が高くて、スラッと細くて、随分綺麗な男の人ね。まあお兄様の方が綺麗だけど。
この男性が私の婚約者。
私は王女だから結婚に好きも嫌いもないものね。結婚相手を好きになる必要もないのだろうし…
「はじめましてカーティス様」
アイリーンもにっこり笑って丁寧に礼をする。
今日はアイリーンと公爵家の嫡男カーティスとの婚約を正式な物にする前の顔合わせのため、カーティスが王宮を訪れているのだ。
堅苦しいのは嫌だと、アイリーンもカーティスも主張したため、王宮の庭の東屋にお茶の準備をしての初顔合わせだ。
「……」
お茶の席に着いたアイリーンはニコニコと微笑むカーティスをチラッと見た。
こういう時、何を話せばいいのだろう…
「アイリーン殿下は今学園の四年生でしたか」
「ええ」
その時、王宮から出て来たユリウスが笑顔で手を振りながら東屋に近付いて来た。
「カーティス」
「ユリウス。久しぶりだな」
カーティスは笑顔で立ち上がるとユリウスとハグをする。
「ああ。なかなか会う機会がなくてすまなかった」
そういえば、カーティス様はお兄様と同じ歳だったっけ。
「廃太子から研究所の立ち上げと何かと忙しかったから仕方ないさ。メレディスも元気か?」
「ああ。メレディスも研究所勤めで国内を飛び回って忙しくしているよ。今も北の辺境伯領だ」
会話が盛り上がるユリウスとカーティスを眺めていたアイリーンは、ユリウスの後ろに立っているルーカスに視線を移す。
アイリーンの視線に気付いたルーカスは少し眉を上げた。
ルーカスは今年、マリアが学園を卒業して直ぐに結婚式を挙げた。今は新婚ほやほやだ。
お兄様の廃太子やスアレスの立太子の段取りに、スアレスの侍従たちへの指導、その後は研究所の立ち上げ…ものすごく忙しかった筈なのによく自分の結婚まで準備できたわ。
「…それだけ早く結婚したかったという事ね」
アイリーンが小声で呟くと、カーティスがアイリーンの方へ振り向いた。
聞こえないと思ったのに、聞こえたのかしら?
「ユリウス、アイリーン殿下の卒業パーティーには俺がエスコートしても良いだろうか?」
ユリウスの方を向いて言う。
ううん。カーティス様、お兄様の方じゃなく、ルーカスの方を見てない?
「アイリーンの正式な婚約者ならば当然だろう」
-----
ユリウスとルーカスが去って、また東屋にはアイリーンとカーティスの二人だけになった。
「あのユリウスの従者がアイリーン殿下の想い人ですよね?」
紅茶のカップを持って笑顔でカーティスが言う。
「ルーカスは今は侍従ではなく研究所の副所長……」
え?あれ?
この人、今、何て言ったの?
「……ルーカスが私の何ですって…?」
アイリーンは目を見開いてカーティスを見た。
ニコニコと笑うカーティス。
「想い人」
「なっ!?」
ガタンッ!
アイリーンは思わず立ち上がる。
「な、何で!?」
誰にも言った事ないのに、何故この人が知ってるの!?
「アイリーン殿下、俺は結構前からアイリーン殿下を見ていたんですよ」
テーブルに肘をつき、組んだ手の上に顎を乗せてカーティスは言った。
「え?え?」
困惑してオロオロするアイリーンにカーティスは笑い掛ける。
「実はユリウスに会いに王宮を訪れた時、何度かお見掛けしております。それで密かにかわいいな~好みだな~と思っていまして」
「ええ!?」
「ユリウスとあまり仲が良くなかったようなのでユリウスには言っていませんが。今回、アイリーン殿下の婚約者にと打診があったので即行飛び付きました。とりあえずお座りになりませんか?」
カーティスはアイリーンを見上げて言う。
「ええ」
アイリーンはゆっくりと椅子に座った。
「俺が学園の四年生の時アイリーン殿下は一年生で、学園でも良く見ていましたよ?」
「ええ…?」
笑ってるけど、ちょっと怖いかも。
「偶然お見掛けしただけで、わざわざ探していた訳ではありませんよ?アイリーン殿下がルーカス殿を見ていたのと同じ感じです」
「……」
それじゃあカーティス様が怖いなら私も怖いって事になっちゃうじゃないの。
「婚約にあたっては、俺はアイリーン殿下がルーカス殿をお好きでも気にしません」
気にしない?
私が他の男性を想っていても気にしないの?
「…どうして?」
見た目が好みなだけで、手元に置いておければ「私の気持ち」はいらないの?
それは、さすがに…
「今はそうでも、将来的にはアイリーン殿下に俺を好きになっていただく自信があるから、です」
「それは…自信…過剰じゃないの?」
「いえ。おそらくアイリーン殿下は自分を『お姫様』として遠い存在にしないルーカス殿に惹かれた。俺も、そうですからね」
…確かにそう。
私、この男性を好きに、なれる?
アイリーンが期待を込めてカーティスを見ると、カーティスは今日一番の笑顔をアイリーンに向けた。
「カーティスと申します。はじめましてアイリーン殿下」
胸に手を当て、会釈をすると、銀の長い髪が肩からサラリと落ちた。
色が白くて、瞳も銀色で、背が高くて、スラッと細くて、随分綺麗な男の人ね。まあお兄様の方が綺麗だけど。
この男性が私の婚約者。
私は王女だから結婚に好きも嫌いもないものね。結婚相手を好きになる必要もないのだろうし…
「はじめましてカーティス様」
アイリーンもにっこり笑って丁寧に礼をする。
今日はアイリーンと公爵家の嫡男カーティスとの婚約を正式な物にする前の顔合わせのため、カーティスが王宮を訪れているのだ。
堅苦しいのは嫌だと、アイリーンもカーティスも主張したため、王宮の庭の東屋にお茶の準備をしての初顔合わせだ。
「……」
お茶の席に着いたアイリーンはニコニコと微笑むカーティスをチラッと見た。
こういう時、何を話せばいいのだろう…
「アイリーン殿下は今学園の四年生でしたか」
「ええ」
その時、王宮から出て来たユリウスが笑顔で手を振りながら東屋に近付いて来た。
「カーティス」
「ユリウス。久しぶりだな」
カーティスは笑顔で立ち上がるとユリウスとハグをする。
「ああ。なかなか会う機会がなくてすまなかった」
そういえば、カーティス様はお兄様と同じ歳だったっけ。
「廃太子から研究所の立ち上げと何かと忙しかったから仕方ないさ。メレディスも元気か?」
「ああ。メレディスも研究所勤めで国内を飛び回って忙しくしているよ。今も北の辺境伯領だ」
会話が盛り上がるユリウスとカーティスを眺めていたアイリーンは、ユリウスの後ろに立っているルーカスに視線を移す。
アイリーンの視線に気付いたルーカスは少し眉を上げた。
ルーカスは今年、マリアが学園を卒業して直ぐに結婚式を挙げた。今は新婚ほやほやだ。
お兄様の廃太子やスアレスの立太子の段取りに、スアレスの侍従たちへの指導、その後は研究所の立ち上げ…ものすごく忙しかった筈なのによく自分の結婚まで準備できたわ。
「…それだけ早く結婚したかったという事ね」
アイリーンが小声で呟くと、カーティスがアイリーンの方へ振り向いた。
聞こえないと思ったのに、聞こえたのかしら?
「ユリウス、アイリーン殿下の卒業パーティーには俺がエスコートしても良いだろうか?」
ユリウスの方を向いて言う。
ううん。カーティス様、お兄様の方じゃなく、ルーカスの方を見てない?
「アイリーンの正式な婚約者ならば当然だろう」
-----
ユリウスとルーカスが去って、また東屋にはアイリーンとカーティスの二人だけになった。
「あのユリウスの従者がアイリーン殿下の想い人ですよね?」
紅茶のカップを持って笑顔でカーティスが言う。
「ルーカスは今は侍従ではなく研究所の副所長……」
え?あれ?
この人、今、何て言ったの?
「……ルーカスが私の何ですって…?」
アイリーンは目を見開いてカーティスを見た。
ニコニコと笑うカーティス。
「想い人」
「なっ!?」
ガタンッ!
アイリーンは思わず立ち上がる。
「な、何で!?」
誰にも言った事ないのに、何故この人が知ってるの!?
「アイリーン殿下、俺は結構前からアイリーン殿下を見ていたんですよ」
テーブルに肘をつき、組んだ手の上に顎を乗せてカーティスは言った。
「え?え?」
困惑してオロオロするアイリーンにカーティスは笑い掛ける。
「実はユリウスに会いに王宮を訪れた時、何度かお見掛けしております。それで密かにかわいいな~好みだな~と思っていまして」
「ええ!?」
「ユリウスとあまり仲が良くなかったようなのでユリウスには言っていませんが。今回、アイリーン殿下の婚約者にと打診があったので即行飛び付きました。とりあえずお座りになりませんか?」
カーティスはアイリーンを見上げて言う。
「ええ」
アイリーンはゆっくりと椅子に座った。
「俺が学園の四年生の時アイリーン殿下は一年生で、学園でも良く見ていましたよ?」
「ええ…?」
笑ってるけど、ちょっと怖いかも。
「偶然お見掛けしただけで、わざわざ探していた訳ではありませんよ?アイリーン殿下がルーカス殿を見ていたのと同じ感じです」
「……」
それじゃあカーティス様が怖いなら私も怖いって事になっちゃうじゃないの。
「婚約にあたっては、俺はアイリーン殿下がルーカス殿をお好きでも気にしません」
気にしない?
私が他の男性を想っていても気にしないの?
「…どうして?」
見た目が好みなだけで、手元に置いておければ「私の気持ち」はいらないの?
それは、さすがに…
「今はそうでも、将来的にはアイリーン殿下に俺を好きになっていただく自信があるから、です」
「それは…自信…過剰じゃないの?」
「いえ。おそらくアイリーン殿下は自分を『お姫様』として遠い存在にしないルーカス殿に惹かれた。俺も、そうですからね」
…確かにそう。
私、この男性を好きに、なれる?
アイリーンが期待を込めてカーティスを見ると、カーティスは今日一番の笑顔をアイリーンに向けた。
10
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい
瑞原唯子
恋愛
だから、きっと、恋を知らないままでよかった。
伯爵令嬢のシャーロットはもうすぐ顔も知らないおじさまと結婚する。だから最後にひとつだけわがままを叶えようと屋敷をこっそり抜け出した。そこで知り合ったのは王都の騎士団に所属するという青年で——。
---
本編完結しました。番外編も書きたかったエピソードはひとまず書き終わりましたが、気が向いたらまた何か書くかもしれません。リクエストなどありましたらお聞かせください。参考にさせていただきます。
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる