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番外編2
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ルナの憂鬱
ルナ・プレスコットは憤っていた。
「何よう、デイジーったら、自分だけ幸せになるつもり?」
学園の1年生の頃から仲良しのデイジーから届いた手紙を、ルナはもう一度読み直す。
街で手を繋いで歩くジーンとアリシアを見掛けたと、ジーンが優しい笑顔でアリシアを見ていて、とても幸せそうだったと書いてある。
更には【薬局のマックスと結婚します】と締め括ってあった。
「この間の手紙には『薬剤師になる勉強が忙しくて恋愛どころじゃない』って書いてた癖に。それにアリシア様を見掛けたって…羨ましい」
「ルナ様、また『アリシア様』ですかあ?」
間の抜けた声でルナの侍女クララが声を掛ける。ルナより二つ歳下のこの侍女は、男爵家の次女であり、学園でアリシアと同級生でもあった。
「だって、アリシア様が学園を卒業してから噂もなかなか入って来ないし、姿も見られないし…」
「アリシア様と言えば、王太子殿下と婚約してた頃は隙のない完璧令嬢って感じでしたけど、婚約解消してからは自然体な感じで良い雰囲気でしたね」
お茶を淹れながら言うクララをルナは軽く睨む。
「クララは同級生で自然体のアリシア様が見られて羨ましいわ。私は完璧令嬢のアリシア様しか見た事ないもの」
「夏には結婚されるんでしょう?」
「そうよ…ジーン様が結婚に伴って『親衛隊を解散する』っておっしゃるの!!」
ルナは先日届いた「アリシア様親衛隊」の影の代表者ジーンからの「隊報」という名の密書を思い出していた。
「まあ、実際、解散するには良いタイミングですよね」
「それは分かってるんだけど…アリシア様が足りない…」
項垂れるルナを見て、クララは「お手上げ」のポーズをした。
ルナは恋愛対象が女の子な訳ではない。ただ、初めてアリシアを見た時、その美しさに魅了されたのだ。容姿にも立居振る舞いにも。
ルナの父はプレスコット伯爵で王宮の議会で議長をしている。ルナは父から聞き出した情報をジーンへと報告していた。アリシアの婚約破棄からセルダの立太子まではルナの情報がアリシアの役に立つ場面もあり、とてもやりがいがあったが、状況が落ち着いた今、特にやる事もない。
「そんなルナ様にお手紙です」
クララはお仕着せのポケットから手紙を取り出してルナに差し出した。
「え?」
ルナは手紙を受け取って差し出し人を見る。
「ア…アリシア様!?」
「はい」
「何でアリシア様からの手紙がクララのポケットから出てくるの!?普通執事がトレイに乗せて持ってくる物じゃない!?」
「キレないでくださいよー。同級生のよしみで預かったんですもん」
「はあ!?同級生羨ましいわ!!」
数日後、プレスコット伯爵家のルナの私室にアリシアが訪れていた。
「初めまして、ルナ様」
アリシアがニッコリ笑うと、ルナは両手を組み神に祈るポーズを取る。
「はわわわ。本物、本物のアリシア様!綺麗!かわいい!」
「ルナ様、全部口からダダ漏れですけど大丈夫ですか?」
クララが呆れたように言うと、ルナは自分の口を手で塞ぐ。
「ふふ。ありがとうございます」
「こちらこそありがとうございます!」
「…ルナ様、意味不明です」
お茶を淹れながら、クララが突っ込みを入れる。「うるさい」とルナが返す。
「アリシア様から私に会いたいとお手紙もらって、本当に驚きました」
「私、ずっとルナ様にお礼を言いたいと思っていたのです。それでクララさんにお手紙預けちゃいました」
「お礼?」
ルナはきょとんとしてアリシアを見る。
「親衛隊で…議会の情報を頂けて、とっても助かったから」
「…アリシア様」
「あの…結構な機密情報もあったみたいだったけど、ルナ様もお父様も大丈夫でした?叱られたりとかは?」
アリシアが窺うように言うと、ルナはきっぱり言い切った。
「確かに父が『何故知っているんだ』って呻いてた事はありますけど、私が…まして自分が情報漏洩したとは思っていないみたいでしたから、大丈夫です」
「旦那様、残念なお方ですね…」
クララが呟く。
三人は顔を見合わせて、一斉に吹き出した。
-----
デイジーへ
お手紙ありがとう。
結婚するの!?私を置いて酷いわ!と言いたいけど、今私のお父様も新しい王太子妃の選定とか色々忙しいらしくて、私の縁談どころじゃないって放ったらかしなのよ…。
デイジーのお相手はどんな人なのかしら。いつかデイジーのお休みに合わせて街へ行くから紹介してね!
そうそう、この間、アリシアが我が家へ来てくれたの!
何で呼び捨て?って思うでしょ?実はアリシアと友達になりました~!!
私が親衛隊へ議会の情報を流したおかげでジーン様と結婚できる事になったからお礼を言いたかったんだって。いや~私、我ながらいい仕事したわ。
アリシアが婚約破棄された時は「あのバカ王太子、どうしてくれようか…」と怒り心頭だったけど、アリシアと会って、こうなって良かったんだって心から納得したわ。今なら元バカ王太子の幸せも祈ってあげられそうよ。
では、またね!
ルナより
ルナ・プレスコットは憤っていた。
「何よう、デイジーったら、自分だけ幸せになるつもり?」
学園の1年生の頃から仲良しのデイジーから届いた手紙を、ルナはもう一度読み直す。
街で手を繋いで歩くジーンとアリシアを見掛けたと、ジーンが優しい笑顔でアリシアを見ていて、とても幸せそうだったと書いてある。
更には【薬局のマックスと結婚します】と締め括ってあった。
「この間の手紙には『薬剤師になる勉強が忙しくて恋愛どころじゃない』って書いてた癖に。それにアリシア様を見掛けたって…羨ましい」
「ルナ様、また『アリシア様』ですかあ?」
間の抜けた声でルナの侍女クララが声を掛ける。ルナより二つ歳下のこの侍女は、男爵家の次女であり、学園でアリシアと同級生でもあった。
「だって、アリシア様が学園を卒業してから噂もなかなか入って来ないし、姿も見られないし…」
「アリシア様と言えば、王太子殿下と婚約してた頃は隙のない完璧令嬢って感じでしたけど、婚約解消してからは自然体な感じで良い雰囲気でしたね」
お茶を淹れながら言うクララをルナは軽く睨む。
「クララは同級生で自然体のアリシア様が見られて羨ましいわ。私は完璧令嬢のアリシア様しか見た事ないもの」
「夏には結婚されるんでしょう?」
「そうよ…ジーン様が結婚に伴って『親衛隊を解散する』っておっしゃるの!!」
ルナは先日届いた「アリシア様親衛隊」の影の代表者ジーンからの「隊報」という名の密書を思い出していた。
「まあ、実際、解散するには良いタイミングですよね」
「それは分かってるんだけど…アリシア様が足りない…」
項垂れるルナを見て、クララは「お手上げ」のポーズをした。
ルナは恋愛対象が女の子な訳ではない。ただ、初めてアリシアを見た時、その美しさに魅了されたのだ。容姿にも立居振る舞いにも。
ルナの父はプレスコット伯爵で王宮の議会で議長をしている。ルナは父から聞き出した情報をジーンへと報告していた。アリシアの婚約破棄からセルダの立太子まではルナの情報がアリシアの役に立つ場面もあり、とてもやりがいがあったが、状況が落ち着いた今、特にやる事もない。
「そんなルナ様にお手紙です」
クララはお仕着せのポケットから手紙を取り出してルナに差し出した。
「え?」
ルナは手紙を受け取って差し出し人を見る。
「ア…アリシア様!?」
「はい」
「何でアリシア様からの手紙がクララのポケットから出てくるの!?普通執事がトレイに乗せて持ってくる物じゃない!?」
「キレないでくださいよー。同級生のよしみで預かったんですもん」
「はあ!?同級生羨ましいわ!!」
数日後、プレスコット伯爵家のルナの私室にアリシアが訪れていた。
「初めまして、ルナ様」
アリシアがニッコリ笑うと、ルナは両手を組み神に祈るポーズを取る。
「はわわわ。本物、本物のアリシア様!綺麗!かわいい!」
「ルナ様、全部口からダダ漏れですけど大丈夫ですか?」
クララが呆れたように言うと、ルナは自分の口を手で塞ぐ。
「ふふ。ありがとうございます」
「こちらこそありがとうございます!」
「…ルナ様、意味不明です」
お茶を淹れながら、クララが突っ込みを入れる。「うるさい」とルナが返す。
「アリシア様から私に会いたいとお手紙もらって、本当に驚きました」
「私、ずっとルナ様にお礼を言いたいと思っていたのです。それでクララさんにお手紙預けちゃいました」
「お礼?」
ルナはきょとんとしてアリシアを見る。
「親衛隊で…議会の情報を頂けて、とっても助かったから」
「…アリシア様」
「あの…結構な機密情報もあったみたいだったけど、ルナ様もお父様も大丈夫でした?叱られたりとかは?」
アリシアが窺うように言うと、ルナはきっぱり言い切った。
「確かに父が『何故知っているんだ』って呻いてた事はありますけど、私が…まして自分が情報漏洩したとは思っていないみたいでしたから、大丈夫です」
「旦那様、残念なお方ですね…」
クララが呟く。
三人は顔を見合わせて、一斉に吹き出した。
-----
デイジーへ
お手紙ありがとう。
結婚するの!?私を置いて酷いわ!と言いたいけど、今私のお父様も新しい王太子妃の選定とか色々忙しいらしくて、私の縁談どころじゃないって放ったらかしなのよ…。
デイジーのお相手はどんな人なのかしら。いつかデイジーのお休みに合わせて街へ行くから紹介してね!
そうそう、この間、アリシアが我が家へ来てくれたの!
何で呼び捨て?って思うでしょ?実はアリシアと友達になりました~!!
私が親衛隊へ議会の情報を流したおかげでジーン様と結婚できる事になったからお礼を言いたかったんだって。いや~私、我ながらいい仕事したわ。
アリシアが婚約破棄された時は「あのバカ王太子、どうしてくれようか…」と怒り心頭だったけど、アリシアと会って、こうなって良かったんだって心から納得したわ。今なら元バカ王太子の幸せも祈ってあげられそうよ。
では、またね!
ルナより
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