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番外編6
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ダイアナの杞憂
「まさか私とジーン様が付き合ってると思われていたなんて…」
ダイアナは大きなため息を吐く。
「ダイアナ、またその話?お酒が入ると必ずその話になるのね」
ケイトが呆れた様に言う。
「だってアリシア様、私を伯爵家に連れて行ってくださらなかったんですもの。きっとわだかまりがおありなのよ…」
「アリシア様からは『ダイアナは公爵家に残ってホリー様付きになって欲しい』って直々に頼まれたんでしょ?…泣かないでよもう」
ケイトはしくしくと泣き出したダイアナの頭を乱暴に撫でる。
「ダイアナ、今日は我がウィルフィス公爵家の嫡男、グレッグ様のご結婚の日よ。お祝いのお酒よ。湿っぽいのはやめてよね」
「…すみません」
今日、時間的にはもう昨日だが、グレッグとホリーが結婚式を挙げ、披露の宴も終え、深夜に使用人たちが食堂でささやかなお祝いの宴を開催しているのだ。
「それに、ダイアナは明日の朝早いでしょ。ホリー様付きなんだから。少しでも寝ておいたら?」
ケイトは突っ伏すダイアナの頭を撫でた。
「おはようございます若奥様」
「…ダイアナ、ルーシー、おはよう。若奥様はまだ恥ずかしいから慣れるまでは名前で読んで」
ロビンソン伯爵家からホリーに伴ってウィルフィス公爵家へ来た侍女ルーシーはダイアナより1歳下で、ホリーとアリシアより1歳上だ。
「はい。ホリー様」
ダイアナは挨拶を終えると朝食の指示を出しに部屋を出る。
「…恥ずかしいわね。こういうの」
ドアを閉める前、ホリーが照れながらルーシーに声を掛けるのが聞こえた。夫婦となった次の朝、若奥様のお世話をするのは伴って来た侍女の役目だ。
私も、アリシア様に照れた表情を見せて欲しかったな。
アリシアは結婚式の日からウィルフィス公爵家の離れ、今はクラーク伯爵家となっている屋敷で生活している。公爵家からは何人かの侍女とメイドを連れて行った。後は新たに雇った者だ。
日中はジーンが公爵邸で執務を行うのでアリシアも伴って来る事もあり、ダイアナがアリシアと顔を合わせる貴重な機会だ。
「グレッグがデレデレしすぎで執務が捗らん」
公爵邸の執務室でジーンが言うと、執務机で頬杖をつくグレッグはぼんやりと「うん…」と頷いた。
「聞いてないし。なあケイト、俺がアリシアと結婚した時はここまで呆けてなかったよな?」
ジーンが問うと、部屋の隅に控えていたケイトは大きく頷く。
「ジーン様は執務中はお変わりなかったですわ。ただ執務が終わったら即お帰りになるようになりましたけども」
「…そりゃ帰るだろ」
「そうですわね。何しろアリシア様がお待ちなんですもの。それにしてもグレッグ様にはメリハリがありませんわ」
「はあ…ホリーかわいい…」
グレッグが呟く。ジーンとケイトは顔を見合わせる。
「ホリー様から『仕事のできない男性は嫌いです』とでも言って頂きますか?」
「…いい考えだな、それ」
ホリーが公爵家に嫁いで三カ月が経った。もう暑くなる季節だ。
アリシアは公爵邸のホリーの部屋を訪れる。
「ホリー、どう?この家には慣れた?」
「まだまだだけど、随分ね。アリシアがダイアナを私付きにしてくれて本当に助かったわ」
ホリーが言うと、アリシアは頷く。
紅茶を淹れていたダイアナは思わず一瞬動きを止める。
「そうでしょ。ダイアナは私が一番信頼している侍女だもの。ホリーが公爵家に慣れるためには絶対必要だと思ったのよ」
アリシアは嬉しそうに言う。
ダイアナは手を動かしながらアリシアの言葉を反芻した。
一番信頼している侍女…だから私をホリー様付きに?
「それでね、来週からの新婚旅行の事なんだけど」
アリシアが切り出す。昨年結婚したアリシアとジーンは新婚旅行へ行っていない。来週からのホリーとグレッグの新婚旅行を二組の合同とするためだ。
「うん」
「…あのね、日程と言うか、行程をちょっと…大分変更をしたいって言うか…」
「え?」
アリシアはしどろもどろに言うと、チラッとダイアナを見る。
「あの、それでね、ダイアナにもそろそろ戻って来てもらおうと思ってて」
「…アリシア、あなた、もしかして?」
ホリーがずいっとアリシアへ迫る。アリシアは赤くなりながら言った。
「そうなの。…赤ちゃんができたの」
あか、ちゃん?
ダイアナが紅茶のポットを持ったまま固まる。ホリーはアリシアに抱き着いた。
「おめでとう!アリシア」
「ありがとう。昨日わかって、一番にジーンには話したんだけど、次はホリーとダイアナに報告しなくちゃって。これからお父様とお母様に報告に行くの」
旦那様と奥様より先に私に…?
「ア〝リシアざまあ~お〝めでとうございまず~」
ダイアナの目から涙がボロボロと溢れた。
「泣き虫ね。ダイアナは」
アリシアとホリーは顔を見合わせて笑った。
ーーFin
「まさか私とジーン様が付き合ってると思われていたなんて…」
ダイアナは大きなため息を吐く。
「ダイアナ、またその話?お酒が入ると必ずその話になるのね」
ケイトが呆れた様に言う。
「だってアリシア様、私を伯爵家に連れて行ってくださらなかったんですもの。きっとわだかまりがおありなのよ…」
「アリシア様からは『ダイアナは公爵家に残ってホリー様付きになって欲しい』って直々に頼まれたんでしょ?…泣かないでよもう」
ケイトはしくしくと泣き出したダイアナの頭を乱暴に撫でる。
「ダイアナ、今日は我がウィルフィス公爵家の嫡男、グレッグ様のご結婚の日よ。お祝いのお酒よ。湿っぽいのはやめてよね」
「…すみません」
今日、時間的にはもう昨日だが、グレッグとホリーが結婚式を挙げ、披露の宴も終え、深夜に使用人たちが食堂でささやかなお祝いの宴を開催しているのだ。
「それに、ダイアナは明日の朝早いでしょ。ホリー様付きなんだから。少しでも寝ておいたら?」
ケイトは突っ伏すダイアナの頭を撫でた。
「おはようございます若奥様」
「…ダイアナ、ルーシー、おはよう。若奥様はまだ恥ずかしいから慣れるまでは名前で読んで」
ロビンソン伯爵家からホリーに伴ってウィルフィス公爵家へ来た侍女ルーシーはダイアナより1歳下で、ホリーとアリシアより1歳上だ。
「はい。ホリー様」
ダイアナは挨拶を終えると朝食の指示を出しに部屋を出る。
「…恥ずかしいわね。こういうの」
ドアを閉める前、ホリーが照れながらルーシーに声を掛けるのが聞こえた。夫婦となった次の朝、若奥様のお世話をするのは伴って来た侍女の役目だ。
私も、アリシア様に照れた表情を見せて欲しかったな。
アリシアは結婚式の日からウィルフィス公爵家の離れ、今はクラーク伯爵家となっている屋敷で生活している。公爵家からは何人かの侍女とメイドを連れて行った。後は新たに雇った者だ。
日中はジーンが公爵邸で執務を行うのでアリシアも伴って来る事もあり、ダイアナがアリシアと顔を合わせる貴重な機会だ。
「グレッグがデレデレしすぎで執務が捗らん」
公爵邸の執務室でジーンが言うと、執務机で頬杖をつくグレッグはぼんやりと「うん…」と頷いた。
「聞いてないし。なあケイト、俺がアリシアと結婚した時はここまで呆けてなかったよな?」
ジーンが問うと、部屋の隅に控えていたケイトは大きく頷く。
「ジーン様は執務中はお変わりなかったですわ。ただ執務が終わったら即お帰りになるようになりましたけども」
「…そりゃ帰るだろ」
「そうですわね。何しろアリシア様がお待ちなんですもの。それにしてもグレッグ様にはメリハリがありませんわ」
「はあ…ホリーかわいい…」
グレッグが呟く。ジーンとケイトは顔を見合わせる。
「ホリー様から『仕事のできない男性は嫌いです』とでも言って頂きますか?」
「…いい考えだな、それ」
ホリーが公爵家に嫁いで三カ月が経った。もう暑くなる季節だ。
アリシアは公爵邸のホリーの部屋を訪れる。
「ホリー、どう?この家には慣れた?」
「まだまだだけど、随分ね。アリシアがダイアナを私付きにしてくれて本当に助かったわ」
ホリーが言うと、アリシアは頷く。
紅茶を淹れていたダイアナは思わず一瞬動きを止める。
「そうでしょ。ダイアナは私が一番信頼している侍女だもの。ホリーが公爵家に慣れるためには絶対必要だと思ったのよ」
アリシアは嬉しそうに言う。
ダイアナは手を動かしながらアリシアの言葉を反芻した。
一番信頼している侍女…だから私をホリー様付きに?
「それでね、来週からの新婚旅行の事なんだけど」
アリシアが切り出す。昨年結婚したアリシアとジーンは新婚旅行へ行っていない。来週からのホリーとグレッグの新婚旅行を二組の合同とするためだ。
「うん」
「…あのね、日程と言うか、行程をちょっと…大分変更をしたいって言うか…」
「え?」
アリシアはしどろもどろに言うと、チラッとダイアナを見る。
「あの、それでね、ダイアナにもそろそろ戻って来てもらおうと思ってて」
「…アリシア、あなた、もしかして?」
ホリーがずいっとアリシアへ迫る。アリシアは赤くなりながら言った。
「そうなの。…赤ちゃんができたの」
あか、ちゃん?
ダイアナが紅茶のポットを持ったまま固まる。ホリーはアリシアに抱き着いた。
「おめでとう!アリシア」
「ありがとう。昨日わかって、一番にジーンには話したんだけど、次はホリーとダイアナに報告しなくちゃって。これからお父様とお母様に報告に行くの」
旦那様と奥様より先に私に…?
「ア〝リシアざまあ~お〝めでとうございまず~」
ダイアナの目から涙がボロボロと溢れた。
「泣き虫ね。ダイアナは」
アリシアとホリーは顔を見合わせて笑った。
ーーFin
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