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ミアは不思議なほど自然に、いつの間にか俺の側に居た。
他の者なら馴れ馴れしいと、不敬だと感じる話し方もかわいいと感じる。
ただ「グレイはミア嬢を好きなのか?」と、いつかアレックスに聞かれたが、ミアへの好意が、恋愛と言う意味での「好き」なのかどうかはよくわからない。
女性をかわいいと感じたのは、ミアが二人目だ。
一人目はイライザ。
俺が十歳の頃だったか、一歳下のイライザがお茶を注ごうとし、ポットが重かったのか、溢した紅茶が俺の手に掛かった事がある。
気の強そうな金の瞳を潤ませて謝るイライザ。
それまで他の令嬢と区別して見た事はなかったが、気の強そうな娘が泣きそうになりながらも涙を堪える顔がかわいいな、と思ったんだ。
後日、イライザは父親である侯爵と共に謝罪にやって来たが、そこでも涙を堪えすぎて顰めっ面になっていたイライザをかわいいと感じた。だが、そこから特段親しくなったりはしていない。
ただその他大勢の中の一人、ではなくイライザ・フォスター個人と認識するようになった、という程度だ。
学園でも、たまに顔を合わせれば挨拶と少しの世間話をするくらいの距離感。明るく快活なイライザともう少し話してみたいと感じていたのも確かだ。だから婚約者候補にイライザが上がった時は「それも良いかもな」と思った。
だが、ミアと話すようになった頃からイライザが俺の周りに頻繁に現れるようになった。
俺の行く先々で待ち伏せをし、高飛車に「ミアは男爵令嬢で、礼儀も躾もなっていない。グレイ殿下には相応しくない」と言う。
ミアと話していると必ず邪魔をしに来る。
ミアを呼び出して説教という名の暴言を吐き、水を掛けたり持ち物を壊したりの嫌がらせをする。
舞踏会で俺とミアが踊った後には、ミアのドレスに葡萄ジュースを溢して汚したりもしていた。
ミアはイライザに何をされてもさほど気にしていないようだったが、いい加減うんざりした俺はイライザとの婚約話を拒絶。それまで「イライザ嬢」と名前を呼んでいたが「フォスター嬢」と姓で呼ぶようにし、俺の事も名前で呼ばないように言い渡した。
それでも懲りずに付き纏われていたが…
階段から落ちた後、十日余り学園を休んだ。
それ以来、ピタリと付き纏いが止んだのだ。
それどころか、姿を見掛けることすら稀になり、以前の挨拶を交わす距離よりも、更に遠ざかった。
「そう言えば、来週から留学して来る隣国の王子、ガイド役がイライザ嬢になったらしいな」
昼休憩に食堂へと歩きながらアレックスがグレイに言う。
「は?」
他国からの留学生には学園生活に慣れるための支援として男女一名づつのガイド役が付けられる。通常は同じクラスになる生徒から選ばれるが、今回は留学生が隣国の第三王子なので、男子は生徒会長が付く事になっていて、女子は公爵令嬢が付く予定だった。
と言うのも、この留学は王子の花嫁探しを兼ねており、ガイド役の女生徒は筆頭の花嫁候補であるのが暗黙の取り決めなのだ。
王子の花嫁候補だから公爵家の令嬢で…確かフィラ公爵家の娘が付く筈ではなかったか?
それが何故イライザに?
「女子のガイド役は花嫁候補、だったよな?」
アレックスが言う。
「ああ。その筈だが…」
「まあ王子がイライザ嬢を気に入るかどうかはわからんが、もし上手く行けばイライザ嬢、隣国へ嫁ぐ事になるのか」
「……」
イライザが、隣国へ嫁ぐ。
「グレイさまあ」
食堂に着くと、すぐにミアがグレイとアレックスに駆け寄って来た。
「ミア嬢『グレイ殿下』です」
いつものようにアレックスが言うと、ミアはえへへと笑う。
学園の食堂の一角に中二階になったフロアがあり、高位貴族の子息息女が婚約者などと食事をしたり、生徒会長役員が昼休憩を利用した会議をしたりする際に使用される。
一般生徒から目の届きにくいその席への階段を上がりながらミアがグレイの顔を覗き込んだ。
「グレイ殿下、何か元気ない?ですか?」
「いや?」
「そうですか。なら良かったです」
階段を上がり切ると、中二階フロアの奥の席に座る赤い髪がグレイの目に飛び込んで来た。
イライザ?
「あ!イライザ様!」
同じ人物に気付いたミアが奥の席へと小走りに駆け寄る。
イライザは生徒会の面々と同じテーブルについていた。
「げ。ミア…様」
振り向いてミアを見たイライザが嫌そうな表情を浮かべた。その後、グレイとアレックスに気付き、気不味そうにグレイたちから視線を逸らす。
何故イライザに目を逸らされなくてはならない?
グレイは不快感を覚えた。
ミアは不思議なほど自然に、いつの間にか俺の側に居た。
他の者なら馴れ馴れしいと、不敬だと感じる話し方もかわいいと感じる。
ただ「グレイはミア嬢を好きなのか?」と、いつかアレックスに聞かれたが、ミアへの好意が、恋愛と言う意味での「好き」なのかどうかはよくわからない。
女性をかわいいと感じたのは、ミアが二人目だ。
一人目はイライザ。
俺が十歳の頃だったか、一歳下のイライザがお茶を注ごうとし、ポットが重かったのか、溢した紅茶が俺の手に掛かった事がある。
気の強そうな金の瞳を潤ませて謝るイライザ。
それまで他の令嬢と区別して見た事はなかったが、気の強そうな娘が泣きそうになりながらも涙を堪える顔がかわいいな、と思ったんだ。
後日、イライザは父親である侯爵と共に謝罪にやって来たが、そこでも涙を堪えすぎて顰めっ面になっていたイライザをかわいいと感じた。だが、そこから特段親しくなったりはしていない。
ただその他大勢の中の一人、ではなくイライザ・フォスター個人と認識するようになった、という程度だ。
学園でも、たまに顔を合わせれば挨拶と少しの世間話をするくらいの距離感。明るく快活なイライザともう少し話してみたいと感じていたのも確かだ。だから婚約者候補にイライザが上がった時は「それも良いかもな」と思った。
だが、ミアと話すようになった頃からイライザが俺の周りに頻繁に現れるようになった。
俺の行く先々で待ち伏せをし、高飛車に「ミアは男爵令嬢で、礼儀も躾もなっていない。グレイ殿下には相応しくない」と言う。
ミアと話していると必ず邪魔をしに来る。
ミアを呼び出して説教という名の暴言を吐き、水を掛けたり持ち物を壊したりの嫌がらせをする。
舞踏会で俺とミアが踊った後には、ミアのドレスに葡萄ジュースを溢して汚したりもしていた。
ミアはイライザに何をされてもさほど気にしていないようだったが、いい加減うんざりした俺はイライザとの婚約話を拒絶。それまで「イライザ嬢」と名前を呼んでいたが「フォスター嬢」と姓で呼ぶようにし、俺の事も名前で呼ばないように言い渡した。
それでも懲りずに付き纏われていたが…
階段から落ちた後、十日余り学園を休んだ。
それ以来、ピタリと付き纏いが止んだのだ。
それどころか、姿を見掛けることすら稀になり、以前の挨拶を交わす距離よりも、更に遠ざかった。
「そう言えば、来週から留学して来る隣国の王子、ガイド役がイライザ嬢になったらしいな」
昼休憩に食堂へと歩きながらアレックスがグレイに言う。
「は?」
他国からの留学生には学園生活に慣れるための支援として男女一名づつのガイド役が付けられる。通常は同じクラスになる生徒から選ばれるが、今回は留学生が隣国の第三王子なので、男子は生徒会長が付く事になっていて、女子は公爵令嬢が付く予定だった。
と言うのも、この留学は王子の花嫁探しを兼ねており、ガイド役の女生徒は筆頭の花嫁候補であるのが暗黙の取り決めなのだ。
王子の花嫁候補だから公爵家の令嬢で…確かフィラ公爵家の娘が付く筈ではなかったか?
それが何故イライザに?
「女子のガイド役は花嫁候補、だったよな?」
アレックスが言う。
「ああ。その筈だが…」
「まあ王子がイライザ嬢を気に入るかどうかはわからんが、もし上手く行けばイライザ嬢、隣国へ嫁ぐ事になるのか」
「……」
イライザが、隣国へ嫁ぐ。
「グレイさまあ」
食堂に着くと、すぐにミアがグレイとアレックスに駆け寄って来た。
「ミア嬢『グレイ殿下』です」
いつものようにアレックスが言うと、ミアはえへへと笑う。
学園の食堂の一角に中二階になったフロアがあり、高位貴族の子息息女が婚約者などと食事をしたり、生徒会長役員が昼休憩を利用した会議をしたりする際に使用される。
一般生徒から目の届きにくいその席への階段を上がりながらミアがグレイの顔を覗き込んだ。
「グレイ殿下、何か元気ない?ですか?」
「いや?」
「そうですか。なら良かったです」
階段を上がり切ると、中二階フロアの奥の席に座る赤い髪がグレイの目に飛び込んで来た。
イライザ?
「あ!イライザ様!」
同じ人物に気付いたミアが奥の席へと小走りに駆け寄る。
イライザは生徒会の面々と同じテーブルについていた。
「げ。ミア…様」
振り向いてミアを見たイライザが嫌そうな表情を浮かべた。その後、グレイとアレックスに気付き、気不味そうにグレイたちから視線を逸らす。
何故イライザに目を逸らされなくてはならない?
グレイは不快感を覚えた。
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