悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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「わからない?」
 エドモンドが首を傾げて言う。
 グレイは膝の上で組んだ手に力を入れた。
「…ああ。この間はエドがイライザの頬にキスをするのを見て嫌な気分になって、エドからイライザを引き離したくなったんだ」
「グレイ、それはイライザに特別な気持ちがあるからではないのか?いやしかしその割には…」
 困惑するエドモンド。
「そうなんだ。その割には、今日はミアがかわいそうで、イライザの事は頭になかった」
「矛盾しているな」

 そう。俺は矛盾している。
 イライザが俺に付き纏い、ミアを虐めていた時には間違いなく本気でイライザを厭うていた。憎しみさえ感じる程に。
 イライザが付き纏いを止めて俺に近付かなくなれば清々する筈だったのに、豹変したイライザに安堵するどころか淋しいような腹立たしいような苛立ちを感じた。
 エドのガイド役になると知れば焦燥感を覚え、エドがイライザを娶ると言えばモヤモヤとした感情が胸に渦巻く。
 …俺はイライザを好きなのか?
 それともただ「他の令嬢とは違う」と認識していたイライザを手の内に留めておきたいだけなのか。

 それなのに、ミアをかわいいと思い、泣いていれば慰めてやりたくなる。
 ミアを攻撃するイライザを目の当たりにすれば、イライザを嫌悪する気持ちが湧き上がり、名前を呼ばれることすら許せなくなる。

「自分の事なのにわからない。まるで自分が二人いるみたいだ」
 グレイは俯いて言う。
「二重人格…?」
 ロイが小声で呟く。
「そう。まるで二重人格だ。今もロイにイライザと俺が婚約しないという確証が欲しいと言われて、婚約などしないと思う自分がいるのと同時に、今日あんなにイライザを憎らしいと感じながらも婚約しないと言い切れない俺がいるんだ」
 苦し気に言うグレイ。

「複雑すぎてグレイの心情はよくわからないが、イライザが俺のガイドになったと言うことは、グレイの婚約者候補からは外れたと言う事だろう?それで、グレイはミアを妃にするつもりなのか?」
「妃…?」
 グレイが呟く。
「兄上がミア嬢を好きだとしても、ミア嬢は男爵令嬢なので身分が釣り合いませんよ」
 ロイの言葉にエドモンドは首を横に振った。
「それに関しては、グレイが本気でミア嬢を好きなら、ミア嬢をどこかの公爵家の養女にして婚約するなり何なり、方法はあるだろう?」
「本気で好きなら、か…」
 グレイがポツリと言う。
 俺がミアを本気で好きになり、ミアを妃にする…
 想像としても現実味がないな。
 そもそもミアを本気で好きなのかどうか…ミアはふんわりとした甘くてかわいいイメージだけで、恋愛として好きなのかどうかは、イライザを好きなのかどうかよりも更に現実味がない。
 それでも今日のようにミアが泣いて、かわいそうで、かわいくて、他の人や物事が目に耳に入らなくなるような瞬間がある。
 これが「好き」なのか?
 何かが違う気がするが、何が違うのかわからない。

「イライザはグレイを好きなんだろ?今もそうかはわからないが、少なくともその付き纏いをしていた頃までは。まあ…今日の様子では今も好きそうではあったが」
 エドモンドがそう言うと、ロイが頷いた。
「はい。おそらくだと」
「それじゃあグレイの矛盾した言動に振り回されるイライザはとても苦しい思いをしているだろうな……やはり今日ブリジット嬢に譲らずにつけ込んでおけば良かったか…」
「……」
 イライザに苦しい思いをさせている。
 そう言われると胸が痛む。

 思案するグレイをエドモンドは見つめる。
「でも…殿下が止めに入る前、あの…笑ってなかった?」
 イライザが講堂を出る時、誰かが言った言葉。
 それが本当だとしたら、ミア嬢はイライザを煽ったのか?
 グレイやロイはミア嬢は天真爛漫で良い子だと言うが、本当なんだろうか?
 本気でイライザを気に入っている俺としては、グレイにはミア嬢と結ばれて欲しい。しかし無為にイライザが傷付くのは見たくはないし、ミア嬢の動向はこれから少し注意して見ておかなければならないな。

 エドモンドは場を和ませるようにふっと笑う。
「グレイはこの件に関してだけは随分と優柔不断だなと思っていたが、内心結構悩んでいたんだなぁ」
「本当に。僕も兄上がこんなに苦悩されているとは思っていませんでした」
 ロイも笑いながら言う。
「自分でも本当に優柔不断で嫌になるよ」
 グレイも苦笑いを浮かべた。









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