悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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 湖畔を植物観察をしながら歩くマリアンヌと一緒に歩いているブリジット。
 その前にはロイとワイゼルが歩いている。
「マリアンヌ?どうしたの?」
 ブリジットは隣を歩くマリアンヌの顔を覗き込んだ。
「え?」
「いつもならあっちの花、こっちの草って飛び回って観察するのに、今日は随分静かだから…具合でも悪いの?」
「ちょっと…でも大丈夫よ」
 マリアンヌは笑顔で言う。
「ちょっと座る?」
「ううん。あそこの金鳳花きんぽうげを見て来るわ」
 マリアンヌは水際に咲く白い花を指差した。
「気をつけてね」

 金鳳花の側にしゃがみ込むマリアンヌに気が付いたワイゼルがロイを肘で突いた。
「ロイ殿下、話をしたいなら今です」
 ロイは一人で芝生に腰を下ろそうとしているブリジットを見て頷いた。

「何か敷いた方が良いよ」
 ロイはブリジットに歩み寄るとハンカチを差し出す。
「あ…ありがとうございます」
 ハンカチを敷いてブリジットが芝生に座ると、ロイも少し間を空けて芝生に直に座った。
 ワイゼルがマリアンヌに話し掛けているのを見ながら、ロイが言う。
「ブリジット、この間言っていたブリジットの好きな人は…」
「え?」
「いや、違う」
 ブリジットが首を傾げてロイを見ると、ロイはブンブンと首を横に振った。
「ロイ殿下?」
 ブリジットの好きな人が誰だろうと。
 ロイは意を決してブリジットを真っ直ぐに見る。

「僕はブリジットが好きだ」
「…え…?」
 ブリジットが目を見開いてロイを見た。
「王宮の、僕の花壇を踏み荒らす令嬢を止めてくれた時から、ずっとブリジットが好きなんだ」
 ブリジットを見つめながらロイが言う。
 確かに王宮の庭園の隅にある花壇を踏み荒らす令嬢を止めた事はあるけど…
「…え?あの花壇、ロイ殿下の花壇だったんですか!?」
 面食らいながらブリジットが言うと、ロイは黙って頷いた。

「イライザ嬢が…ブリジットの姉上が僕の兄上の婚約者候補だったから今まで言えなかったし、ブリジットに好きな人がいるのはわかっているけど、僕にはまったく望みはないのかな?」
 真剣な表情のロイ。
 ブリジットはマリアンヌの方をチラッと見る。
 しゃがみ込んで花を見ているマリアンヌの背中と、すぐ側に立っているワイゼルの背中が見えた。
 聞こえてない?わよね?
 
「ない、です。あの…ごめんなさい!」
 ブリジットは立ち上がるとロイに向かって勢いよく頭を下げる。
 ロイはふっと息を吐き出すと、苦笑いを浮かべた。
「そう…わかった。ありがとう」

 バシャーンッ!

 遠くで水音。

「え?何…」
「何だ?」
 ブリジットとロイは湖の方を見るが、見える範囲では何事もない。

「マリアンヌ様!」
 ワイゼルの声がして、ブリジットとロイがそちらを見ると、地面にマリアンヌが倒れていた。
「マリアンヌ!」
 ブリジットとロイがマリアンヌの所へ駆け寄る。
 ワイゼルに抱き起こされたマリアンヌは真っ赤な顔をして目を閉じ、はあはあと荒い息をしていた。
「熱が…かなり高いようです」
 ワイゼルが言う。
「体調が悪そうだったわ。お昼にも殆ど喋らなかったし…あまり食べてなかったかも」
 ブリジットはそう言ってマリアンヌの傍から離れると、自分のハンカチと、先程ロイが敷くように貸してくれたハンカチを湖の水で濡らして絞った。
「直ぐに保養所へ戻ろう」
 ロイはワイゼルに抱き起こされたマリアンヌの脇の下と膝の下へ手を入れると、マリアンヌを抱き上げた。

「殿下、大丈夫ですか?私が…」
 ワイゼルが言うと、ロイは眉を顰めて
「いや、僕の方が鍛えてる」
 と言う。
 確かに趣味が園芸でもロイは王子だ。剣技や柔術の鍛錬は欠かしていないのだ。
「そうでした」
 ワイゼルは肩を竦めると、馬車を呼んで来ると駆け出した。

「マリアンヌ、大丈夫?」
 マリアンヌを抱いたロイと共に歩きながら、ブリジットは濡らしたハンカチをマリアンヌの額に乗せる。
 マリアンヌが薄っすら目を開けた。
「…迷惑かけて…ごめんなさい…」
 ブリジットからロイへと視線を向けるマリアンヌを見て、ブリジットはロイとマリアンヌから少し離れる。
 マリアンヌの視界に入らないようにロイの後ろへとさり気なく移動した。
「迷惑ではないが、体調が悪いなら無理しては駄目だろう?」
 ロイが困ったように笑いながら言う。
「ごめんなさい…」
 マリアンヌの目から涙が溢れた。
「泣く事はないよ。大丈夫。直ぐ戻って医師に診てもらおう」
 マリアンヌは少し首を横に振る。
「ん?」
「…私…ロイ殿下の花壇を…荒らした内の一人なんです…」
 涙を流しながらマリアンヌが言う。
「え?」
 驚くロイ。ブリジットは、ロイの告白がマリアンヌに聞こえていたのだと悟った。

「殿下は寛大に許してくださったのに…私は…そんなロイ殿下を好きになってしまって…ごめんなさい…」



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