悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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 ザワッ。

 グレイにエスコートされたイライザが卒業パーティーの会場である講堂に入ると、生徒たちが一斉に騒めいた。

「ミア嬢が居なくなってから殿下とイライザ嬢の距離が近くなったと思ってはいたが、やっぱりそう言う事なのか」
「舞踏会ではイライザ様からミア様を庇っていたのに、どう言う事!?」
「エドモンド殿下はどうなったの?」
「エドモンド殿下とグレイ殿下が毎週のように連れ立ってフォスター侯爵家を訪れているらしいし…もしや三角関係か?」

 グレイとイライザへエドモンドが近寄り三人で楽しそうに話し始める。

「三角関係にしては友好的だな」
「見えない火花とか散ってない?」
「うーん…そんな雰囲気はなさそうよね」

 更にアレックスとディアナが近付いて、ジェフリーとナタリアもやって来た。
 そしてロイとマリアンヌとブリジット、ワイゼル、ディアナの取り巻きシェリーも加わり、それぞれ笑顔で歓談しているのを生徒たちはポカンとして眺めていた。

「イライザ嬢の周りにあんなに人がいるの…珍しくないか?」
「ミア嬢に絡んでる時は怖い女だと思ってたけど、笑ってるの見ると割とかわいいな」
「元々キツそうだけど美人だもんな。今は雰囲気も柔らかい感じで…」
 数人の男子生徒がそう話していると、グレイが視線だけでそちらを見る。
 男子生徒と目が合うと、グレイは口角を上げた。
「殿下…目が笑ってない…」
「笑顔で睨まれてるぞ」
「この距離で聞こえるのか?」
「王族だから読唇術くらいできるのかも!?」
「ありえる」
 男子生徒たちは小声で呟く。
「ま、まあ、そのかわいさを引き出したのがグレイ殿下って事なんだよな!?」
「そ、そう。そうそう。そう言う事だよ!」
 慌てて少し大きな声で言った。

-----

 エスコートだけじゃなく、ファーストダンスまで…
 舞踏会の時からは考えられなかった展開だわ。
 イライザはステップを踏みながら目の前のグレイの顔をチラッと見る。
「どうした?」
 グレイが微笑みながらイライザを見た。
「何だかちょっと信じられないな、と思いまして」
「ん?」
「グレイ様とこうしてダンスをしているのもですけど、それがファーストダンスなのも。まだ正式に婚約していないのに、良いのですか?」
「父上の許可はもらってある。それに虫が周りを飛ぶだけでも煩わしいからな」
「虫…?」
「イライザは俺のだと示しておかなくては」
 グレイはニッコリと笑うと、イライザの額にキスをする。

 周りの生徒たちが一斉にイライザとグレイに注目した。

「~~~!」
 こっ、公衆の面前で額にキス!!
 それに、俺の!イライザは俺のって…何て破壊力のある台詞なの!!
「あ…悪役令嬢イライザに付く虫などいません!」
 赤くなってステップを間違えるイライザに、グレイは笑いを堪えながら言った。
「悪役令嬢は廃業したのだろう?」

 ダンスを終えて、イライザはグレイに手を引かれて壁際へと移動した。
 軽食や飲み物が置かれたテーブルからグレイが葡萄ジュースが注がれたグラスを二つ持って来て、一つをイライザへと渡す。
「とりあえず、これで俺とイライザが恋人同士であることが全校へ周知され、イライザに近付く男もいなくなるだろう」
 グレイは満足そうに頷いた。
 私に近付く男…って、今までだってエドモンド殿下しかいなかったし、それもミアが赤い糸を結んでたせいだから、これから先にそんな男性が現れるとも思えないけど…
 でも逆に、これでミアみたいにグレイ様に近付く女性もいなくなるかも。そう考えたら額にキスは恥ずかしかったけど、良かったのかも。
 イライザはグラスの中の葡萄ジュースを見てふと思い出す。
 そう言えばミアのドレスへ葡萄ジュース掛けた事もあったっけ。クリーム色のフリルたっぷりのドレスのミアはすごくかわいくて、グレイ様が白の夜会服で、並ぶとまるで新郎新婦みたいで…悔しくて堪らなかった。
 結局ドレスを汚されて泣いてるミアをグレイ様が庇って、自分の上着を脱いでジュースの染みを隠して付き添って退出されて…グレイ様は上着を脱いだ姿も麗しくて、グレイ様に庇ってもらえて、肩を抱かれて退出するミアが羨ましくて、家に戻ってぐちゃぐちゃに泣いてアンリたち侍女やメイドやブリジットに当たり散らしたっけ。
 …あれだけ当たり散らしたのに、よくアンリは私に愛想尽かさなかったわよ。うん。やっぱりアンリは心が広いわ。

 …ん?
 あれ?何だか頭が痛いような…
「イライザ?」
 グレイがイライザの顔を覗き込む。

 グレイと視線が合った途端、イライザの視界がグレイの瞳と髪の色、紫色一色に染まった。

 パリン。
 イライザの手から落ちたグラスが音を立てて割れ、葡萄ジュースが床に広がった。
「イライザ!?どうした!?」
 グレイ様の声…?
 一面の紫。
 何も見えない。
 イライザは自分の目の前、グレイが居た方向へ手を伸ばす。
 が、その手は空を切った。

 ガンッ!
 と頭に殴られたような衝撃。

「いっ…」
 ガンッガンッガンッ。
 頭が痛む。
 何?
 怖い。
 グレイ様、どこ?
 助けて。




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