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エピローグ
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その日、自身の卒業パーティーを迎えたイライザは紫のドレスを身に纏い、寮の部屋の鏡の前に立っていた。
「イライザ様、とっても綺麗です」
イライザの傍で青いドレス姿のアンリが眼を潤ませている。
「アンリ姉様も綺麗よ。エドモンド殿下の瞳の色のドレス、とても似合ってるわ」
「そ、そうですか?私、とっくに卒業したのにまた学園の卒業パーティーに出る事になるとは思ってもなくて…場違いで変に緊張します」
アンリは自分の着ているドレスを見下ろしながら言う。
「アンリはエドモンド殿下の婚約者なんだから、場違いなんて事はないわ。堂々としてれば良いの」
エドモンド殿下が卒業パーティーに出たいからと卒業前にまた短期留学されたのには少し驚いたけど。
隣国の学園では卒業パーティーのパートナーとして婚約者や恋人を校外から呼ぶ事はできない…と言うか、パートナーはクラス内でのくじ引きで決める、完全なる学校行事で社交界デビューの予行演習みたいな感じらしいから、どうしてもアンリと卒業パーティーに出たかったエドモンド殿下の気持ちもわからなくもないし。
コンコンと部屋の扉がノックされ、イライザが返事をすると、扉が開き、グレイが姿を現した。
グレイの紺の夜会服は、もちろんイライザをエスコートするためだ。
「イライザ、とても、とても綺麗だ」
「ありがとうございます。グレイ様も素敵です」
イライザはこの一年間受けた妃教育の成果を見せ、グレイに優雅な礼を見せる。
夏にエドモンドが帰国し、グレイとイライザの婚約話は本格的に前進し始めた。議会や教会に承認され、正式に婚約が整ったのはついこの間だ。
今日の卒業パーティーを終え、明日には第一王子の婚約が全国に公表される事になっている。
「やっとイライザは俺のだと憚らずに言えるようになるから嬉しいよ」
グレイは嬉しそうに笑った。
「アンリ」
扉の外からエドモンドが顔を覗かせて、アンリに手招きをする。
「エドモンド殿下」
アンリがエドモンドの方へ歩み寄ると、エドモンドはアンリの腰に手を回し廊下へと導き出した。
「少し二人きりにしてやろう」
「はい」
エドモンドは扉を閉めると、アンリの全身を眺める。
「ドレスを…贈っていただきありがとうございます」
アンリが恥ずかしそうに首を傾げると、エドモンドはニッコリと笑った。
「うん。似合う。とても綺麗だ。俺もアンリを婚約者だとお披露目できて嬉しいよ」
部屋に残ったグレイはイライザの額に軽くキスをする。
「唇にキスしたいが、口紅が移るから今はお預けか」
「そうですね」
イライザがクスクスと笑いながら言うと、グレイはイライザを緩く抱きしめた。
「婚儀の日が早く決まると良いのにな」
「はい」
「慣例から言うと早くて一年後くらいか。婚礼の儀の後は妃の顔見せと主要な領主への挨拶を兼ねて国内を巡るんだ。公務でもあるが、実質は新婚旅行だな。イライザが、どこか寄りたい所があるなら融通する。考えておいて」
「新婚旅行…でしたら、私、行きたい所があります」
イライザがグレイを見上げながら言うと、グレイはふっと微笑んだ。
「ミアの修道院だろう?」
「はい!」
ミアからは時々手紙が届く。
ミアも去年の卒業パーティーの日に光を感じてゲームの終わりを悟ったそうだ。
「周りが女性ばかりで私の『ヒロイン力』が役立たない場面も多いけど、修道院を仕切るボスになる計画は着々と進行中よ!ただ、最初は余暇にする事もなくて、暇潰しに学園の教科書とかを読んでたら、最近は勉強も面白くなって来ちゃって。どうせなら修道院に併設の診療所で働けるように医師か看護師の資格を取ろうかと思ってるの」
と手紙に書いてあったから、何か役立ちそうな本とかを差し入れしたいし、会って話したいな。
「ミアが俺たちの赤い糸をゲーム内の適切な時期に切っていれば、イライザは今こうして俺の腕の中にはいなかったのだな…」
グレイがイライザの額に自分の額をつけながら言った。
「そうですね」
私はゲームのシナリオ通りだった時の悪役令嬢イライザがどう断罪されて、その後どうなるのかは知らないけど、少なくとも幸せにはならない筈だもん。
「…イライザを思い切り抱きしめたいが、髪も化粧も崩れてしまうから、やはり我慢か」
「ふふふ。そうですね」
笑顔のイライザを少し見つめた後、グレイはイライザの唇に軽く自分のそれで触れる。
「!」
「イライザとミアが転生者であった事が俺にとっての幸運だ。赤い糸を他人に切られ、繋がれて作られた運命ではなく、イライザが俺の運命だからな」
グレイはそう言うと、唇にほんの少し着いた赤い紅をペロリと舐め取った。
うわあ。何と言うか…やらしいわ。この仕草。
「ん?」
頬を赤くしたイライザの顔を覗き込むグレイ。
「やらしい~でもカッコいい~好き~」
「ははは」
思わず言うイライザに、グレイは笑う。
「そろそろ行こうか」
「はい」
グレイが笑顔でイライザに手を差し出すと、イライザも笑顔でその手を取った。
ー 了 ー
その日、自身の卒業パーティーを迎えたイライザは紫のドレスを身に纏い、寮の部屋の鏡の前に立っていた。
「イライザ様、とっても綺麗です」
イライザの傍で青いドレス姿のアンリが眼を潤ませている。
「アンリ姉様も綺麗よ。エドモンド殿下の瞳の色のドレス、とても似合ってるわ」
「そ、そうですか?私、とっくに卒業したのにまた学園の卒業パーティーに出る事になるとは思ってもなくて…場違いで変に緊張します」
アンリは自分の着ているドレスを見下ろしながら言う。
「アンリはエドモンド殿下の婚約者なんだから、場違いなんて事はないわ。堂々としてれば良いの」
エドモンド殿下が卒業パーティーに出たいからと卒業前にまた短期留学されたのには少し驚いたけど。
隣国の学園では卒業パーティーのパートナーとして婚約者や恋人を校外から呼ぶ事はできない…と言うか、パートナーはクラス内でのくじ引きで決める、完全なる学校行事で社交界デビューの予行演習みたいな感じらしいから、どうしてもアンリと卒業パーティーに出たかったエドモンド殿下の気持ちもわからなくもないし。
コンコンと部屋の扉がノックされ、イライザが返事をすると、扉が開き、グレイが姿を現した。
グレイの紺の夜会服は、もちろんイライザをエスコートするためだ。
「イライザ、とても、とても綺麗だ」
「ありがとうございます。グレイ様も素敵です」
イライザはこの一年間受けた妃教育の成果を見せ、グレイに優雅な礼を見せる。
夏にエドモンドが帰国し、グレイとイライザの婚約話は本格的に前進し始めた。議会や教会に承認され、正式に婚約が整ったのはついこの間だ。
今日の卒業パーティーを終え、明日には第一王子の婚約が全国に公表される事になっている。
「やっとイライザは俺のだと憚らずに言えるようになるから嬉しいよ」
グレイは嬉しそうに笑った。
「アンリ」
扉の外からエドモンドが顔を覗かせて、アンリに手招きをする。
「エドモンド殿下」
アンリがエドモンドの方へ歩み寄ると、エドモンドはアンリの腰に手を回し廊下へと導き出した。
「少し二人きりにしてやろう」
「はい」
エドモンドは扉を閉めると、アンリの全身を眺める。
「ドレスを…贈っていただきありがとうございます」
アンリが恥ずかしそうに首を傾げると、エドモンドはニッコリと笑った。
「うん。似合う。とても綺麗だ。俺もアンリを婚約者だとお披露目できて嬉しいよ」
部屋に残ったグレイはイライザの額に軽くキスをする。
「唇にキスしたいが、口紅が移るから今はお預けか」
「そうですね」
イライザがクスクスと笑いながら言うと、グレイはイライザを緩く抱きしめた。
「婚儀の日が早く決まると良いのにな」
「はい」
「慣例から言うと早くて一年後くらいか。婚礼の儀の後は妃の顔見せと主要な領主への挨拶を兼ねて国内を巡るんだ。公務でもあるが、実質は新婚旅行だな。イライザが、どこか寄りたい所があるなら融通する。考えておいて」
「新婚旅行…でしたら、私、行きたい所があります」
イライザがグレイを見上げながら言うと、グレイはふっと微笑んだ。
「ミアの修道院だろう?」
「はい!」
ミアからは時々手紙が届く。
ミアも去年の卒業パーティーの日に光を感じてゲームの終わりを悟ったそうだ。
「周りが女性ばかりで私の『ヒロイン力』が役立たない場面も多いけど、修道院を仕切るボスになる計画は着々と進行中よ!ただ、最初は余暇にする事もなくて、暇潰しに学園の教科書とかを読んでたら、最近は勉強も面白くなって来ちゃって。どうせなら修道院に併設の診療所で働けるように医師か看護師の資格を取ろうかと思ってるの」
と手紙に書いてあったから、何か役立ちそうな本とかを差し入れしたいし、会って話したいな。
「ミアが俺たちの赤い糸をゲーム内の適切な時期に切っていれば、イライザは今こうして俺の腕の中にはいなかったのだな…」
グレイがイライザの額に自分の額をつけながら言った。
「そうですね」
私はゲームのシナリオ通りだった時の悪役令嬢イライザがどう断罪されて、その後どうなるのかは知らないけど、少なくとも幸せにはならない筈だもん。
「…イライザを思い切り抱きしめたいが、髪も化粧も崩れてしまうから、やはり我慢か」
「ふふふ。そうですね」
笑顔のイライザを少し見つめた後、グレイはイライザの唇に軽く自分のそれで触れる。
「!」
「イライザとミアが転生者であった事が俺にとっての幸運だ。赤い糸を他人に切られ、繋がれて作られた運命ではなく、イライザが俺の運命だからな」
グレイはそう言うと、唇にほんの少し着いた赤い紅をペロリと舐め取った。
うわあ。何と言うか…やらしいわ。この仕草。
「ん?」
頬を赤くしたイライザの顔を覗き込むグレイ。
「やらしい~でもカッコいい~好き~」
「ははは」
思わず言うイライザに、グレイは笑う。
「そろそろ行こうか」
「はい」
グレイが笑顔でイライザに手を差し出すと、イライザも笑顔でその手を取った。
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