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「おやすみなさい」
マジョリカはそう言って夫婦の寝室から自分の寝室へ繋がる扉を閉じる。
「ああ。おやすみ」
アシュトンも自分の寝室への扉の取っ手に手を掛けた。
あの、マジョリカの手を避けた後から、マジョリカはベッドに横にならなくなり、ある程度話したら自分の寝室へ戻るようになった。
…淋しいが、マジョリカを傷付けてしまった私の自業自得だ。それでも毎日夫婦の寝室で並んで座って話す時間があるだけでもまだマシだろう。
扉を後手で閉める。
マジョリカは生まれ育った国へ帰って、家族や、友人や……好きな男に会えば、そこに残りたいと思うかも知れない。
「マジョリカ様は旦那様が嫌悪感を覚えない稀少な女性です。使用人たちはマジョリカ様を正式に『奥様』とお呼びする許可を旦那様が出してくださるのを待っているんですから、何がどうあってもここに連れて帰って来てくださいね」
執事はそう言っていたが、マジョリカを正式な「奥様」にするには、好きだという気持ちだけでは…
自分の寝室のベッドに腰掛けたアシュトンは、寝衣の下穿き越しに自分のモノに手をやった。
朝立ちはする。つまり機能的には問題はない。それは私の「不能」は精神的な問題だという事だ。
夢精をするのは虚しいので、たまには自慰をする。触ってもあまり硬くはならないが射精をする事はできる。
下穿きをずらし、陰茎を露出すると、ベッドサイドテーブルの引き出しを開け、手の平に収まる大きさの瓶と手布を取り出した。
瓶に入っているのは香油。
コインほどの大きさを手の平に出すと、香油の乗った手で陰茎を握る。
いつものように、気持ちいいのか、気持ち悪いのか、複雑な気持ちになりながら手を動かした。
「……ふっ…」
少しそこが芯を持ち始め、小さく吐息が漏れる。
そのまま動かし続けると、少しずつ硬く、太く、長くなり、頭をもたげて──そこまでだ。
どうにか半勃ちという状態。いつもと同じ。
普段は敢えて性的な想像はしない。と、言うか、性的な想像をすると気分が悪くなり、萎えてしまう。
だが、今日は…
マジョリカの黒髪、青い瞳、気の強そうな顔。
細い手足。寝衣越しに見る胸のふくらみ、まろい腰からお尻の線、柔らかそうな身体。
それらを意識的に思い出し……意外とよく見ていて、よく覚えているな、とアシュトンはふっと苦笑いした。
そして、想像の中でマジョリカを抱きしめる。
腕の中のマジョリカがアシュトンを見上げた。
かわいい。
柔らかそうな頬、すべすべの額、ふっくら桃色の唇。
ゆっくりと唇を重ねる。
アシュトンに挨拶以外のキスの経験はない。それも「事件」以前の母親の頬などへのもの。
マジョリカの柔らかな唇は、あくまでも想像だ。
…本当のマジョリカと、キスをしたい。
アシュトンは初めて明確にそう思った。
抱きしめて、深く口付けたい。私とのキスで蕩けたマジョリカの表情が見たい。
あの胸のふくらみはどんなに柔らかいのか、触ってみたい。先端に触れるとマジョリカはどんな反応をするだろう?
アシュトンの手の中のモノが少し大きさを増す。
───その瞬間、凄まじい嫌悪感と、忌避感が湧き上がり、吐気が込み上げた。
「うっ」
迫り上がって来る感覚に、片手で口元を覆う。
…ああ、駄目だ。
やはり、私はマジョリカに触れられない。
絶望的な気持ちになるも、アシュトンのモノは完全には萎えてはいなかった。仕方なく頭の中からマジョリカを追い出し、いつものように何も考えずに手だけを動かす。
いつも通り、そこから射精できるまでが長い。手が疲れる頃になり、ようやく射精感が湧いて来て、その感覚にだけ集中した。
「…っ」
ビュクビュクと吐き出される精を手布で受け止める。
乱れた息を整えて、後始末をすると、アシュトンはベッドにゴロリと横になった。
「…はあ」
両手で顔を覆う。
マジョリカが好きで、キスをしたい、触れたいという欲望があっても、やはり…無理だ。
もし、マジョリカが隣国に残りたいと言えばそうしてやろう。こっちに戻って来てくれても、予定通り離縁しよう。
アシュトンは深く深く、どこまでも沈んで行くような気持ちでそう思った。
「おやすみなさい」
マジョリカはそう言って夫婦の寝室から自分の寝室へ繋がる扉を閉じる。
「ああ。おやすみ」
アシュトンも自分の寝室への扉の取っ手に手を掛けた。
あの、マジョリカの手を避けた後から、マジョリカはベッドに横にならなくなり、ある程度話したら自分の寝室へ戻るようになった。
…淋しいが、マジョリカを傷付けてしまった私の自業自得だ。それでも毎日夫婦の寝室で並んで座って話す時間があるだけでもまだマシだろう。
扉を後手で閉める。
マジョリカは生まれ育った国へ帰って、家族や、友人や……好きな男に会えば、そこに残りたいと思うかも知れない。
「マジョリカ様は旦那様が嫌悪感を覚えない稀少な女性です。使用人たちはマジョリカ様を正式に『奥様』とお呼びする許可を旦那様が出してくださるのを待っているんですから、何がどうあってもここに連れて帰って来てくださいね」
執事はそう言っていたが、マジョリカを正式な「奥様」にするには、好きだという気持ちだけでは…
自分の寝室のベッドに腰掛けたアシュトンは、寝衣の下穿き越しに自分のモノに手をやった。
朝立ちはする。つまり機能的には問題はない。それは私の「不能」は精神的な問題だという事だ。
夢精をするのは虚しいので、たまには自慰をする。触ってもあまり硬くはならないが射精をする事はできる。
下穿きをずらし、陰茎を露出すると、ベッドサイドテーブルの引き出しを開け、手の平に収まる大きさの瓶と手布を取り出した。
瓶に入っているのは香油。
コインほどの大きさを手の平に出すと、香油の乗った手で陰茎を握る。
いつものように、気持ちいいのか、気持ち悪いのか、複雑な気持ちになりながら手を動かした。
「……ふっ…」
少しそこが芯を持ち始め、小さく吐息が漏れる。
そのまま動かし続けると、少しずつ硬く、太く、長くなり、頭をもたげて──そこまでだ。
どうにか半勃ちという状態。いつもと同じ。
普段は敢えて性的な想像はしない。と、言うか、性的な想像をすると気分が悪くなり、萎えてしまう。
だが、今日は…
マジョリカの黒髪、青い瞳、気の強そうな顔。
細い手足。寝衣越しに見る胸のふくらみ、まろい腰からお尻の線、柔らかそうな身体。
それらを意識的に思い出し……意外とよく見ていて、よく覚えているな、とアシュトンはふっと苦笑いした。
そして、想像の中でマジョリカを抱きしめる。
腕の中のマジョリカがアシュトンを見上げた。
かわいい。
柔らかそうな頬、すべすべの額、ふっくら桃色の唇。
ゆっくりと唇を重ねる。
アシュトンに挨拶以外のキスの経験はない。それも「事件」以前の母親の頬などへのもの。
マジョリカの柔らかな唇は、あくまでも想像だ。
…本当のマジョリカと、キスをしたい。
アシュトンは初めて明確にそう思った。
抱きしめて、深く口付けたい。私とのキスで蕩けたマジョリカの表情が見たい。
あの胸のふくらみはどんなに柔らかいのか、触ってみたい。先端に触れるとマジョリカはどんな反応をするだろう?
アシュトンの手の中のモノが少し大きさを増す。
───その瞬間、凄まじい嫌悪感と、忌避感が湧き上がり、吐気が込み上げた。
「うっ」
迫り上がって来る感覚に、片手で口元を覆う。
…ああ、駄目だ。
やはり、私はマジョリカに触れられない。
絶望的な気持ちになるも、アシュトンのモノは完全には萎えてはいなかった。仕方なく頭の中からマジョリカを追い出し、いつものように何も考えずに手だけを動かす。
いつも通り、そこから射精できるまでが長い。手が疲れる頃になり、ようやく射精感が湧いて来て、その感覚にだけ集中した。
「…っ」
ビュクビュクと吐き出される精を手布で受け止める。
乱れた息を整えて、後始末をすると、アシュトンはベッドにゴロリと横になった。
「…はあ」
両手で顔を覆う。
マジョリカが好きで、キスをしたい、触れたいという欲望があっても、やはり…無理だ。
もし、マジョリカが隣国に残りたいと言えばそうしてやろう。こっちに戻って来てくれても、予定通り離縁しよう。
アシュトンは深く深く、どこまでも沈んで行くような気持ちでそう思った。
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