元騎士の歳上公爵様がまさかの××でした!?

ねーさん

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「ポーラ?」
 庭に用意されたテーブルで、マジョリカは自分の向かい側に座っているポーラを見る。
 ポーラは紅茶のカップを持ったまま、唇を尖らせて黙り込んでいた。
「……」
「ほら、ポーラの好きな栗のプディングもあるわよ?」
「……食べる」
 プディングの器に手を伸ばすポーラ。
 マジョリカとアシュトンが隣国へ立つのは明日。マジョリカが居なくなるのが寂しくてポーラが拗ねているのだ。
 プディングを一口口に入れると、ポーラの顔が明るくなる。
 あ~私がいないと寂しいなんて、ポーラ本当にかわいい。
「…リカちゃん」
「なあに?」
「これ、お母さまが何とか伯爵夫人のお茶会でもらって来たお茶なんだって」
 スカートのポケットからポーラの手の平に乗るくらいの小さな陶器の瓶を取り出すと、マジョリカの前に置いた。
「お茶?」
「よく寝られるんだって。リカちゃんにあげる」
 安眠…カモミールかラベンダーのお茶かな?
「いいの?お母様に怒られない?」
「うん。旅行の前は楽しみで寝られないってお母さまも言ってた」
「そう。ありがとう」
 陶器の瓶を手に取る。
「リカちゃん、早く帰って来てね!」
 そう言うポーラに、マジョリカは「うん」と頷いて微笑みかけた。

-----

 カモミールの匂い。
 マジョリカはポーラから貰ったお茶の蓋を開けて匂いを嗅ぐ。
「エディス、今日は就寝前のお茶はこれを淹れてくれる?」
 蓋を閉じて控えていた侍女のエディスに瓶を差し出した。
「これは?」
 両手で瓶を受け取るエディス。
「カモミールティーよ」
「はい。畏まりました」

 アシュトンと夕食を摂り、湯浴みをして自分の部屋に戻る。就寝の準備を終える頃、エディスがお茶を淹れてベッドサイドテーブルに置いてくれた。
「ありがとう。エディスも一緒に隣国に行くんだから、今日は早く休んでね」
「ありがとうございます。マジョリカ様」
 エディスが部屋を出る。
 ベッドに座り、カップを手に取った。
 うん。美味しい。
 カモミールの味の他に微かに何か…ラベンダーかな?
 カップの中の黄金色のお茶を覗き込む。
 このお茶のおかげで寝付きが良くなるなら、今日は夫婦の寝室でのお話は早く切り上げなくちゃ。閣下の声は心地良いから…うっかり眠ってしまったらいけないし。
 夫婦の寝室へ行かないって選択も…ああでも閣下とお話はしたいしそれはない。
 明日は王城で壮行式もあって、王太子殿下と妃殿下と初めてお会いするから、そっちの緊張で眠れそうになかったから、安眠効果のあるお茶はありがたいわ。
 閣下との旅行も最初で最後だろうし、少しでもいい思い出が作れるといいな。
 …カリステ様も、旅行の前は楽しみで眠れなかったのかしら。それは…閣下のお兄様との……?
 お茶を飲み終わったマジョリカは、複雑な気持ちでカップを置いた。

-----

 アシュトンが夫婦の寝室に入って来る。
 大抵は先に来ているはずのマジョリカは居なかった。
 …いないのか。
 明日は朝が早いから、こっちには来ずに眠るつもりなのかも。
 そう考えながら、アシュトンはマジョリカの寝室の方の扉へと近付く。
 一日の終わりにマジョリカの顔が見たい。声が聞きたい。…私は何て勝手なんだろう。
「……」
 扉越しにマジョリカの声が聞こえた。
 独り言か?
「…ぅぅ…」
 扉に耳を近付けてよく聞くと、唸り声のようだ。

 コンコン。
 扉をノックする。
「マジョリカ?」
「……い…」
 声を掛けると、弱々しい声が返って来た。
 よく聞こえない。
 どうした?
 体調が悪いのか?
「マジョリカ?どうしたんだ?」
 夕食の時は元気そうだったが…もしかして、何かあたったのか?
「………ない…」
 ん?「何でもない」か?
 いや、何でもなくないだろう。
「入るぞ?」
 扉の取っ手に手を掛ける。
「…駄目…」
 拒否の言葉が聞こえて、アシュトンは取っ手を握りしめた。
「マジョリカ…」
 苦しんでいるんじゃないのか?そんな時に私を頼ってくれないのか。
 額を扉につけて、中の声に耳を澄ませる。
「うぅっ!」
「!」
 マジョリカの切迫詰まった声がして、アシュトンは扉を開けた。



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