元騎士の歳上公爵様がまさかの××でした!?

ねーさん

文字の大きさ
30 / 30

エピローグ

しおりを挟む
エピローグ

「リカお母さま、とってもキレイ!」
 マジョリカの白いウエディングドレス姿に、ポーラが嬉しそうに言う。
「ありがとう。ポーラもとってもかわいいわ」
 ブライズメイドを務めるポーラも薄い黄色のドレスを着て、髪に花を飾っていた。
 えへへと照れて笑いながらポーラはドレスのスカートを摘んでくるりと回る。
「このドレス、今度領地に持って行っていい?お母さまに見せたいの」
「もちろんいいわよ」
「やったー!アッシュお父さまにも見せてくるね!」
 ピョンッと飛び跳ねるとポーラは花嫁の控室を出て行った。

 アシュトンとマジョリカの結婚式が執り行われる今日はマジョリカがこの国に来てから一年後の春。
 準備期間が数か月しかなく、当然色々バタバタしたのだが、王太子夫妻の口添えや手助けもあって無事にこの日を迎えられたのだった。
 マジョリカはレースのオフショルダーが華麗な、ボリュームを抑えたプリンセスラインのドレス姿で大聖堂の入口へと向かう。このドレスも王太子妃が自身ご用達の仕立て屋へ超特急かつ丁寧に仕立てるように依頼してくれた特注品だ。
 大聖堂の入口にはマジョリカの父が待っている。
「綺麗だよ。マジョリカ」
「お父様」
 すでに涙ぐんでいる父は、実は一年前にマジョリカが一人の供も付けず隣国へ嫁いだ時、マジョリカを見送った後、妻と息子──マジョリカの母と兄とおいおいと泣いた、と話した。
「同じ涙でも今日は嬉しいばかりの涙だ」
 マジョリカはそう言って笑う父親と腕を組む。

 身廊に足を踏み出せば、前方に立つアシュトンの姿が目に入った。
 正礼装であるモーニングコートはシルバーで、ベストは黒、マジョリカの髪の色だ。
 赤い髪をバックに流し、背が高く、胸板は厚く、筋肉の付いた足はそれでもスラリと長い。
 あああ、スタイル良い!何て格好良いの!
 ヴェール越しのぼやけた視界じゃなく、早くヴェールを上げたクリアな視界で見たい!!
 ゆっくり進んでアシュトンの側に来ると父がマジョリカの手を取り、アシュトンの方へと差し出した。
「娘をよろしくお願いします」
「必ず幸せにします」
 父とアシュトンの小声での遣り取りに胸がジンと熱くなる。
 アシュトンを見上げると
「すごく綺麗だ」
 と蕩けるような瞳で言われた。
「アシュトン様もとても格好良いです」
 はにかんだ笑顔でマジョリカが言うと、アシュトンが微笑む。

「あのエインズワース公が笑った?」
「鬼の大隊長があんな柔和な顔を!?」
「アシュトン様が女性に笑みを向けるなんて」
「幻か。それとも夢か」
「本当に奥方様は特別なのねぇ」
 参列者たちが極々小声で囁き合ったが主祭壇の前の二人には聞こえていない。
 その声を聞き取った、親族席のセシリアはクスリと笑った。
「私たちの結婚式を思い出しますね」
 シルベストはセシリアが側にいない時には「氷の彫刻」の二つ名通りの鉄面皮なのだ。セシリアは自分との結婚式で柔らかな笑顔を見せたシルベストに、今と同じようなどよめきが起きたのを思い出した。
「そうだな」
 シルベストはその時のような笑顔をセシリアに向ける。

 誓いの言葉が終わり、指輪の交換でアシュトンの親戚の七歳の男の子リングボーイが指輪を置いた入れ物を持って来た。
 マジョリカが手袋を外すと、ブライズメイドとして側に控えていたポーラがそれを恭しく受け取る。
 ポーラの令嬢らしくない物言いと振る舞いはエインズワース家の者の前だけで、外ではこのようにキチンと年相応の公爵令嬢らしく振る舞う事ができるのだ。
 互いの指に指輪を嵌めると、司祭がヴェールアップと誓いのキスを促した。
 マジョリカが身を屈めると、アシュトンがヴェールを持ち上げる。
「本当に綺麗だ。マジョリカ、私の元に来てくれてありがとう」
 眩しそうに目を細めるアシュトン。
「アシュトン様も、本当にものすごーく格好良いです。私…幸せです」
 マジョリカの目に涙が滲む。
 せっかく視界がクリアになったのに、またアシュトン様がボヤけてしまうわ。
 パチパチと瞬きをして涙を散らそうとするマジョリカに、アシュトンは相好を崩した。
「もっと幸せにする」
 赤い瞳が放つ光が柔らかく、マジョリカの目から涙が溢れる。
 ゆっくりと二人の影が重なった。



          ─ 完 ─



しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~

二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。 夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。 気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……? 「こんな本性どこに隠してたんだか」 「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」 さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。 +ムーンライトノベルズにも掲載しております。

側妃としての役割

しゃーりん
恋愛
結婚を前に婚約者を亡くした侯爵令嬢フェリシア。 半年が過ぎる頃、舞い込んだ縁談は国王の側妃であった。 王妃は隣国の元王女。 まだ子供がいないため側妃が必要になったようだ。 フェリシアが心配した王妃との関係はどうなる? 国王に愛され、自分の役割を果たすお話です。

お買い上げありがとうございます旦那様

キマイラ
恋愛
借金のかたに嫁いだ私。だというのに旦那様は「すまないアデライン、君を愛することはない。いや、正確には恐らく私は君を愛することができない。許してくれ」などと言ってきた。 乙女ゲームのヒロインの姉に転生した女の結婚のお話。 「王太子殿下に魅了をかけてしまいました。大至急助けてください」にチラッと出てきたアデラインが主人公です。単体で読めます。

代理で子を産む彼女の願いごと

しゃーりん
恋愛
クロードの婚約者は公爵令嬢セラフィーネである。 この結婚は王命のようなものであったが、なかなかセラフィーネと会う機会がないまま結婚した。 初夜、彼女のことを知りたいと会話を試みるが欲望に負けてしまう。 翌朝知った事実は取り返しがつかず、クロードの頭を悩ませるがもう遅い。 クロードが抱いたのは妻のセラフィーネではなくフィリーナという女性だった。 フィリーナは自分の願いごとを叶えるために代理で子を産むことになったそうだ。 願いごとが叶う時期を待つフィリーナとその願いごとが知りたいクロードのお話です。

鉄壁騎士様は奥様が好きすぎる~彼の素顔は元聖女候補のガチファンでした~

二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
令嬢エミリアは、王太子の花嫁選び━━通称聖女選びに敗れた後、家族の勧めにより王立騎士団長ヴァルタと結婚することとなる。しかし、エミリアは無愛想でどこか冷たい彼のことが苦手であった。結婚後の初夜も呆気なく終わってしまう。 ヴァルタは仕事面では優秀であるものの、縁談を断り続けていたが故、陰で''鉄壁''と呼ばれ女嫌いとすら噂されていた。 しかし彼は、戦争の最中エミリアに助けられており、再会すべく彼女を探していた不器用なただの追っかけだったのだ。内心気にかけていた存在である''彼''がヴァルタだと知り、エミリアは彼との再会を喜ぶ。 そして互いに想いが通じ合った二人は、''三度目''の夜を共にするのだった……。

敵将を捕虜にしたら夫になって、気づけば家族までできていました

蜂蜜あやね
恋愛
戦場で幾度も刃を交えてきた二人―― “赤い鷲”の女将軍イサナと、 “青狼”と恐れられたザンザの将軍ソウガ。 最後の戦いで、ソウガはイサナの軍に捕らえられる。 死を覚悟したその瞬間―― イサナは思わず、矢面に立っていた。 「その者は殺させない。命は……私が引き受けます」 理由などなかった。 ただ、目の前の男を失いたくなかった。 その報告を受けた皇帝エンジュは、 静かに、しかし飄々とした口調で告げる。 「庇いたいというのなら――夫として下げ渡そう」 「ただし、子を成すこと。それが条件だ」 敵国の将を“夫”として迎えるという前代未聞の処置。 拒否権はない。 こうしてソウガは、捕虜でありながら 《イサナの夫》としてアマツキ邸に下げ渡される。 武でも策でも互角に戦ってきた男が、 今は同じ屋根の下にいる。 捕虜として――そして夫として。 反発から始まった奇妙な同居生活。 だが、戦場では知り得なかった互いの素顔と静かな温度が、 じわじわと二人の距離を変えていく

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

処理中です...