6 / 57
5
しおりを挟む
5
入学式から一週間、レイラの元にカイルからの連絡はない。婚約してから三年、一週間も連絡が空いたなどなかったのだが。
「ヒロインと出会ったからよね…きっと」
レイラは寮の部屋でため息を吐いた。
学園は十五歳で入学し、四年間学び十八歳で卒業する。貴族の令息令嬢は十五歳までは家庭教師に学び学園へ入学するが、貴族でない者は家の都合により五歳から十歳には初等教育校へ入学し、数年間字や計算などを学び、成績優秀者やお金のある商家の子供などが十五歳で学園へと入学する。
全寮制で、いかに高位の貴族でも侍女や侍女、メイドなどを伴う事はできない決まりだ。もちろん王族でも。
学園は一学年が春期、秋期、冬期の三月期制で、春期と秋期の間に約二ヶ月の夏季休暇、秋期と冬期の間、冬期と春期の間にそれぞれ約二週間の休暇がある。
出会ってから、夏季休暇の前の舞踏会までにどんなイベントがあったかしら。
アリスは誰のルートへ進むんだろう。
学園では、春期の終わりには夏季休暇に入る前の舞踏会があり、冬期の終わりには卒業パーティーがあるので、貴族の令息令嬢は社交を学び、貴族でない者も貴族社会との繋がりを作ろうと励む場となるのだ。
レイラが学園に入った時から舞踏会や卒業パーティーの度にドレスを贈るとカイルは言ったが、レイラはずっとそれを拒んでいた。
いざゲームが始まってから急にドレスを贈られなくなり、自分で仕立てたドレスで舞踏会や卒業パーティーに出なくてはいけなくなるなんて惨めすぎる。
「ドレスを頂くのはカイル殿下が卒業する時のパーティーだけで」
と毎回レイラが言う度に不満気な表情を見せたカイルだが、レイラはそうして来て良かったと思っていた。
「レイラ…あれ…」
食堂で、ミシェルが遠くに見える集団を指差した。
…カイルとアリスだわ。
生徒会の役員が揃ってアリスの座る席の周りを取り囲んでいるのが見えた。
アリスは背も小さくてフワフワのピンクの髪の毛に青い瞳、そしてすごく目が大きくてかわいい。とにかくかわいい。
悪役令嬢たちもアリスがかわいいと言う事には異論はないだろう。
アリスの正面に副会長のアンソニー・フォスター。侯爵家の次男で将来は宰相かと言われている四年生。笑顔で毒を吐くタイプ。
アンソニーの右隣にはサミュエル・セイモア。会計の二年生。宝飾品販売店の息子。貴族ではないが大金持ちだ。弟キャラだがデリカシーに欠けるタイプ。
左隣には書記のイアン・マクラウド。ミシェルの家モーリス公爵家の執事で三年生。アンソニーとは逆に真顔で毒を吐くキャラだ。
アリスの左隣にはフレディ・ダスティン。副会長で三年生。子爵家の嫡男。将来の近衛騎士候補。真面目で堅物。
そして、アリスの右隣にはカイル。
座り位置から見れば、今アリスに一番近いのはカイルね。
一番遠いのはイアンかな。
「レイラ…」
ミシェルが心配そうにレイラを見ている。
それにしても、カイルの視線、アリスに釘付けね。私がここにいるのに気付きもしない…か。
「生徒会役員が一年生の女子生徒一人を囲んでるなんてちょっと異様な光景ね…」
レイラは苦笑いして言うと、カイルたちの集団に背を向けた。
「レイラ?」
「外で食べるわ」
「私も行くわ」
ミシェルがレイラの後に付いて歩く。
「イアンにどう言う事か聞いてみるわ」
イアンはミシェルの家の執事だから…でも聞かなくても判ってるから良いの。
…カイルがあんなに人目も憚らず女生徒を見つめ続けるなんて。
やっぱりヒロインって、ゲームって凄いわ。
「でも見たくなかったな…」
そう、小さく呟いた。
-----
「レイラ様!私許せません!」
「モニカ様?」
レイラが寮の部屋でミシェルと話していると、二年生のモニカ・ガーランド子爵令嬢が飛び込んで来た。
モニカは副会長フレディ・ダスティンの婚約者だ。
「まあモニカ様、ノックもせずに…」
「ミシェル様も!許せなくないですか!?」
「私?」
「一体どうしたの?」
レイラが問うと、モニカはソファに座るレイラの前にへたり込むように座った。
「アリス・ヴィーナスです!あの女フレディ様にちょっかい出して!」
モニカは悔しそうに顔を顰めて言った。
入学式から一週間、レイラの元にカイルからの連絡はない。婚約してから三年、一週間も連絡が空いたなどなかったのだが。
「ヒロインと出会ったからよね…きっと」
レイラは寮の部屋でため息を吐いた。
学園は十五歳で入学し、四年間学び十八歳で卒業する。貴族の令息令嬢は十五歳までは家庭教師に学び学園へ入学するが、貴族でない者は家の都合により五歳から十歳には初等教育校へ入学し、数年間字や計算などを学び、成績優秀者やお金のある商家の子供などが十五歳で学園へと入学する。
全寮制で、いかに高位の貴族でも侍女や侍女、メイドなどを伴う事はできない決まりだ。もちろん王族でも。
学園は一学年が春期、秋期、冬期の三月期制で、春期と秋期の間に約二ヶ月の夏季休暇、秋期と冬期の間、冬期と春期の間にそれぞれ約二週間の休暇がある。
出会ってから、夏季休暇の前の舞踏会までにどんなイベントがあったかしら。
アリスは誰のルートへ進むんだろう。
学園では、春期の終わりには夏季休暇に入る前の舞踏会があり、冬期の終わりには卒業パーティーがあるので、貴族の令息令嬢は社交を学び、貴族でない者も貴族社会との繋がりを作ろうと励む場となるのだ。
レイラが学園に入った時から舞踏会や卒業パーティーの度にドレスを贈るとカイルは言ったが、レイラはずっとそれを拒んでいた。
いざゲームが始まってから急にドレスを贈られなくなり、自分で仕立てたドレスで舞踏会や卒業パーティーに出なくてはいけなくなるなんて惨めすぎる。
「ドレスを頂くのはカイル殿下が卒業する時のパーティーだけで」
と毎回レイラが言う度に不満気な表情を見せたカイルだが、レイラはそうして来て良かったと思っていた。
「レイラ…あれ…」
食堂で、ミシェルが遠くに見える集団を指差した。
…カイルとアリスだわ。
生徒会の役員が揃ってアリスの座る席の周りを取り囲んでいるのが見えた。
アリスは背も小さくてフワフワのピンクの髪の毛に青い瞳、そしてすごく目が大きくてかわいい。とにかくかわいい。
悪役令嬢たちもアリスがかわいいと言う事には異論はないだろう。
アリスの正面に副会長のアンソニー・フォスター。侯爵家の次男で将来は宰相かと言われている四年生。笑顔で毒を吐くタイプ。
アンソニーの右隣にはサミュエル・セイモア。会計の二年生。宝飾品販売店の息子。貴族ではないが大金持ちだ。弟キャラだがデリカシーに欠けるタイプ。
左隣には書記のイアン・マクラウド。ミシェルの家モーリス公爵家の執事で三年生。アンソニーとは逆に真顔で毒を吐くキャラだ。
アリスの左隣にはフレディ・ダスティン。副会長で三年生。子爵家の嫡男。将来の近衛騎士候補。真面目で堅物。
そして、アリスの右隣にはカイル。
座り位置から見れば、今アリスに一番近いのはカイルね。
一番遠いのはイアンかな。
「レイラ…」
ミシェルが心配そうにレイラを見ている。
それにしても、カイルの視線、アリスに釘付けね。私がここにいるのに気付きもしない…か。
「生徒会役員が一年生の女子生徒一人を囲んでるなんてちょっと異様な光景ね…」
レイラは苦笑いして言うと、カイルたちの集団に背を向けた。
「レイラ?」
「外で食べるわ」
「私も行くわ」
ミシェルがレイラの後に付いて歩く。
「イアンにどう言う事か聞いてみるわ」
イアンはミシェルの家の執事だから…でも聞かなくても判ってるから良いの。
…カイルがあんなに人目も憚らず女生徒を見つめ続けるなんて。
やっぱりヒロインって、ゲームって凄いわ。
「でも見たくなかったな…」
そう、小さく呟いた。
-----
「レイラ様!私許せません!」
「モニカ様?」
レイラが寮の部屋でミシェルと話していると、二年生のモニカ・ガーランド子爵令嬢が飛び込んで来た。
モニカは副会長フレディ・ダスティンの婚約者だ。
「まあモニカ様、ノックもせずに…」
「ミシェル様も!許せなくないですか!?」
「私?」
「一体どうしたの?」
レイラが問うと、モニカはソファに座るレイラの前にへたり込むように座った。
「アリス・ヴィーナスです!あの女フレディ様にちょっかい出して!」
モニカは悔しそうに顔を顰めて言った。
7
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです
鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。
理由は――
「王太子妃には華が必要だから」。
新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。
誰もが思った。
傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。
けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。
「戻りません」
彼女は怒らない。
争わない。
復讐もしない。
ただ――王家を支えるのをやめただけ。
流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。
さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。
強いざまあとは、叫ぶことではない。
自らの選択で、自らの立場を削らせること。
そして彼女は最後まで戻らない。
支えない。
奪わない。
――選ばれなかったのではない。
彼女が、選ばなかったのだ。
これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。
私の存在
戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。
何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。
しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。
しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約破棄された幼い公爵令嬢、目覚めたら絶世の美女でした
鍛高譚
恋愛
『幼すぎる』と婚約破棄された公爵令嬢ですが、意識不明から目覚めたら絶世の美女になっていました
幼すぎる、頼りない――そんな理由で婚約者に見限られた公爵令嬢シルフィーネ。
心ない言葉に傷ついた彼女は、事故に遭い意識不明となってしまう。
しかし一年後、彼女は奇跡的に目を覚ます。
そして目覚めた彼女は――かつての面影を残しつつも、見る者すべてを惹きつける絶世の美女へと変貌を遂げていた!
周囲の反応は一変。婚約破棄を後悔する元婚約者、熱視線を送る他家の令息たち、さらには王太子からの突然の縁談まで舞い込み――?
「もう、誰にも傷つけられたくない。私は私の幸せを手に入れるの」
これは、冷たく突き放された少女が美しく咲き誇り、誇りと自由を手に入れる、ざまぁ&逆転恋愛劇。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵令息から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる