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「私が様々な文献や伝承などを調べた結果ですが、どの世代、年代にも一定数の前世の記憶を持つ者は存在します。前世の記憶を隠す者も居たでしょうから、実態は文献に残っているより多いのかも知れません」
キャロラインがそう言うと、サイラスは「そうなのか…」と言う。
サイラスはキャロラインの言う通り、イアンが前世の記憶を持つ者だという事を知っている。それにサイラス自身にもその記憶がある。
「ただその『生まれ変わり』『転生者』の周りで必ずしも強制力が働くような状況が発生している訳ではありません。私が調べた限り、侯爵令嬢殺害未遂事件が起こった当時と、今だけです」
キャロラインは眼鏡の弦に触りながら言う。
「つまり、私はイアンが転生者であり、故にイアンには強制力が働いていない、と考えています。本人に確認できるまではあくまで仮説ですが」
「…そうだな。早急に本人に確認をしてみよう」
サイラスは頷く。ミシェルから聞いた話だけで、この場でイアンが転生者と明かす事はサイラスには出来なかった。
「それに、もう一つ」
キャロラインは自身の右手の人差し指を立てる。
「侯爵令嬢殺害未遂事件の後の、関係者が残している記録には白い部分があるんです」
「白い、とは?」
サイラスが問う。
「文字通り、白紙のページがあるんです」
「白紙?」
「そう。不自然に。消した形跡もなく、記述のない部分が現れる。この白紙の期間も全ての記録が、侯爵令嬢殺害未遂事件で副会長と顧問教師が捕縛された翌日から、卒業パーティーの前日までなんです」
「卒業パーティー?何か意味があるのか?」
「この年の卒業パーティーで何か変わった事があったのかと言えば…今の所そのような記録は見つけられておりませんので、卒業パーティー自体に意味があるのかどうかは分かりません。ただ、この期間に何かがあったのは確かだと思いますので、引き続き調べてみます」
「分かった。調査に権限が必要な時は私に言ってくれ」
サイラスがそう言うと、キャロラインは「ありがとうございます」と深々と頭を下げた。
「カイル殿下」
キャロラインはカイルの前で跪いたまま、カイルを見上げる。
「私が先程カイル殿下のせいではありませんと申し上げたのは、殿下が彼女に惹かれたのは強制力のせいだからです」
「……」
「でも、それでレイラちゃんを蔑ろにした事、例え強制力が排除されて、殿下がやっぱりレイラちゃんを好きだと言っても、レイラちゃんが許してくれるかどうかは判りません」
「…ああ」
カイルは目を伏せる。
「強制力だと言われても、蔑ろにされ、敵意を向けられれば傷付きますから。ね、ライアン」
「は?」
キャロラインはすっと立ち上がると、ライアンの正面に立つ。ライアンは鼻白んで一歩後ろに下がった。
「ライアンはまだ強制力が働いてるから、私が傷付こうとどうしようとどうでも良いでしょうけど、一つ言っておくわ」
「…何を」
「例え強制力が排除されても、私は絶対許さないから」
「なっ」
「では、サイラス殿下、カイル殿下、ライナス様、私は王城の図書室へおりますので。レイラちゃんの容態が落ち着いたらまた参ります」
何か言いたげなライアンを横目に、キャロラインは礼を取ると、廊下を奥へと進んで行く。
空が白み始めていた。
-----
「レイラ…」
レイラは長かった金髪を肩よりも短く切られ、顔と頭とを半分覆う程のガーゼと包帯を巻かれ、眼を閉じていた。
血の気のない顔。
本当に息をしているのか…?
カイルはベッドの傍らに膝をつく。
ガーゼが当てられていない方の頬へ指でそっと触れた。
暖かい。
どうか、目を覚まして。俺を見て。その瞳に俺を映して欲しい。その唇で俺を呼んで。「大嫌い」でも、レイラが俺に向けて発する声が聞きたい。
ああ、でも、生きていてくれるなら、本当はそれだけで良いんだ。俺を見なくても、俺を呼ばなくても。
「もう少し状態が落ち着いたら上階の病室へ移します」
「わかりました」
ライナスは言うと、膝をついたカイルの頭をくしゃりと撫でた。
「私が様々な文献や伝承などを調べた結果ですが、どの世代、年代にも一定数の前世の記憶を持つ者は存在します。前世の記憶を隠す者も居たでしょうから、実態は文献に残っているより多いのかも知れません」
キャロラインがそう言うと、サイラスは「そうなのか…」と言う。
サイラスはキャロラインの言う通り、イアンが前世の記憶を持つ者だという事を知っている。それにサイラス自身にもその記憶がある。
「ただその『生まれ変わり』『転生者』の周りで必ずしも強制力が働くような状況が発生している訳ではありません。私が調べた限り、侯爵令嬢殺害未遂事件が起こった当時と、今だけです」
キャロラインは眼鏡の弦に触りながら言う。
「つまり、私はイアンが転生者であり、故にイアンには強制力が働いていない、と考えています。本人に確認できるまではあくまで仮説ですが」
「…そうだな。早急に本人に確認をしてみよう」
サイラスは頷く。ミシェルから聞いた話だけで、この場でイアンが転生者と明かす事はサイラスには出来なかった。
「それに、もう一つ」
キャロラインは自身の右手の人差し指を立てる。
「侯爵令嬢殺害未遂事件の後の、関係者が残している記録には白い部分があるんです」
「白い、とは?」
サイラスが問う。
「文字通り、白紙のページがあるんです」
「白紙?」
「そう。不自然に。消した形跡もなく、記述のない部分が現れる。この白紙の期間も全ての記録が、侯爵令嬢殺害未遂事件で副会長と顧問教師が捕縛された翌日から、卒業パーティーの前日までなんです」
「卒業パーティー?何か意味があるのか?」
「この年の卒業パーティーで何か変わった事があったのかと言えば…今の所そのような記録は見つけられておりませんので、卒業パーティー自体に意味があるのかどうかは分かりません。ただ、この期間に何かがあったのは確かだと思いますので、引き続き調べてみます」
「分かった。調査に権限が必要な時は私に言ってくれ」
サイラスがそう言うと、キャロラインは「ありがとうございます」と深々と頭を下げた。
「カイル殿下」
キャロラインはカイルの前で跪いたまま、カイルを見上げる。
「私が先程カイル殿下のせいではありませんと申し上げたのは、殿下が彼女に惹かれたのは強制力のせいだからです」
「……」
「でも、それでレイラちゃんを蔑ろにした事、例え強制力が排除されて、殿下がやっぱりレイラちゃんを好きだと言っても、レイラちゃんが許してくれるかどうかは判りません」
「…ああ」
カイルは目を伏せる。
「強制力だと言われても、蔑ろにされ、敵意を向けられれば傷付きますから。ね、ライアン」
「は?」
キャロラインはすっと立ち上がると、ライアンの正面に立つ。ライアンは鼻白んで一歩後ろに下がった。
「ライアンはまだ強制力が働いてるから、私が傷付こうとどうしようとどうでも良いでしょうけど、一つ言っておくわ」
「…何を」
「例え強制力が排除されても、私は絶対許さないから」
「なっ」
「では、サイラス殿下、カイル殿下、ライナス様、私は王城の図書室へおりますので。レイラちゃんの容態が落ち着いたらまた参ります」
何か言いたげなライアンを横目に、キャロラインは礼を取ると、廊下を奥へと進んで行く。
空が白み始めていた。
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「レイラ…」
レイラは長かった金髪を肩よりも短く切られ、顔と頭とを半分覆う程のガーゼと包帯を巻かれ、眼を閉じていた。
血の気のない顔。
本当に息をしているのか…?
カイルはベッドの傍らに膝をつく。
ガーゼが当てられていない方の頬へ指でそっと触れた。
暖かい。
どうか、目を覚まして。俺を見て。その瞳に俺を映して欲しい。その唇で俺を呼んで。「大嫌い」でも、レイラが俺に向けて発する声が聞きたい。
ああ、でも、生きていてくれるなら、本当はそれだけで良いんだ。俺を見なくても、俺を呼ばなくても。
「もう少し状態が落ち着いたら上階の病室へ移します」
「わかりました」
ライナスは言うと、膝をついたカイルの頭をくしゃりと撫でた。
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