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「あの男!使えないわね!」
スーザンは自室で親指の爪を噛みながら言う。
…マルティナかフィオナを攫って殺せ、殺せなければ純潔を奪えと暗に示唆したのに、失敗して捕まるなんて…
ヘンリー・トンプソンは学園で同じクラスになった時からスーザンに好意を寄せていた。
最初は「気の強い所が好き」「顔が好み」などと、普通の恋愛感情と変わらない事を言っていたが、スーザンが常に「未来の王太子妃」しとて振る舞い、上から押さえ付けた結果、ヘンリーはスーザンを神格化し、信奉するに至ったのだ。
「まあ、捕まっても私に頼まれたとは自白していないみたいだからまだ良いけど…」
どうして、ブライアン殿下は「自分が王太子になる」と宣言してくださらないの?
私は、王太子妃になるために努力をしたわ。勉強だってしたし、礼儀作法だって。お父様が推薦してくれてようやく第一王子と婚約できたのに。
ブライアン殿下よりレオン殿下の方が好みだし、レオン殿下が王太子になるなら、私はレオン殿下と婚約したかった!
なのにフィオナ!あの女、レオン殿下に望まれて婚約するなんて!どんなに嫌味や皮肉を言っても堪えないし、本当に嫌いだわ!
「お嬢様、ブライアン殿下より書簡が届いております」
執事がトレイに乗せた封筒を持って来る。
「ブライアン殿下から?」
スーザンは封筒を手に取り、中を見る。
「…やっとその気になってくれたのかしら」
スーザンはニヤリと微笑んだ。
-----
翌日、スーザンが王城に着くと、謁見の間の扉の前に案内された。
「謁見…?どなたと?」
ブライアンとも正式な場面ではここで謁見する形になるが、婚約者なのでほとんどは応接室などで会う。
扉が開くと、絨毯の先の壇上にブライアンとレオン、マルティナの父である王太子デリックが座っている。そしてデリックの右後にブライアン、左後にレオンが立っていた。
「な…何…?」
スーザンは小さく呟くと、それでも決められた様にデリックの前に進み、跪いた。
「スーザン・キッシンジャー侯爵令嬢」
「は、はい」
デリックに呼ばれて顔を上げるが、ブライアンとは視線が合わない。
「今日其方を呼んだのは他でもない、其方と第一王子との婚約であるが、婚約を解消する旨、キッシンジャー侯爵と合意した」
「え!?」
婚約解消?
「そして、フィオナ・キャストン伯爵令嬢」
デリックの声に、スーザンの後ろから「はい」と返事が聞こえた。
フィオナ?あの女もここに呼ばれたの?
「教会より其方と第二王子の婚約解消が許可された事をここに通告する」
レオンが教会からの書状を開いて示す。文字は見えないが教会からの婚約解消許可の書簡だろう。
「はい。承知いたしました」
フィオナの声が聞こえる。声が落ち着いているので、婚約解消を今始めて聞いたのではない事が判る。
…どういう事なの?
「そして、まだ内々の話しではあるが、其方たちには告げておく。私は次の王太子に第二王子レオンを指名する」
「え!?」
スーザンは思わず顔を上げて壇上を見た。
デリックは肘掛けに持たれてスーザンを見ている。レオンはフィオナを見ている。ブライアンは俯いていた。
「何故ですか!?ブライアン殿下は正妃様の御子で第一王子なのに!」
「スーザン・キッシンジャー侯爵令嬢、発言は許していない。控えなさい」
レオンが言う。スーザンはキッとレオンを睨んだ。
デリックが肘掛けにもたれたまま言った。
「レオンが立太子したら、スーザン・キッシンジャー侯爵令嬢、其方とレオンを婚約させようと考えているが、如何か?」
「え…?」
今、王太子殿下は何と言われた?
其方と、レオンを、婚約させようと?
…ここは何と答えるのが正解かしら。すぐに承諾するのは違うわよね。ブライアン殿下に情がないみたいだし。
でも私にとっては願ったり叶ったりだわ。
「…王太子殿下がそうお考えならば、謹んでお受けいたします」
スーザンが恭しく頭を下げる。するとレオンがため息混じりに言う。
「お受けいたします、か…」
「え?」
「つまり、スーザン・キッシンジャー侯爵令嬢にとっては、王太子妃にさえなれれば相手は誰でも良くて、兄上の事は王太子にならないならどうでも良い、と言う事だろう?」
「そんな」
「いや、そうなんだろう」
ここに来て始めてブライアンが口を開く。
「ブライアン殿下!あの、そういう訳ではないのです」
必死に言い募るスーザンに、ブライアンは悲しそうな表情を向ける。
「少なくとも私に興味がないのは間違いない」
「何を言われるんですか!殿下!」
「…スーザンは、私の目がほとんど見えていない事、気付いてはいないだろう?」
「あの男!使えないわね!」
スーザンは自室で親指の爪を噛みながら言う。
…マルティナかフィオナを攫って殺せ、殺せなければ純潔を奪えと暗に示唆したのに、失敗して捕まるなんて…
ヘンリー・トンプソンは学園で同じクラスになった時からスーザンに好意を寄せていた。
最初は「気の強い所が好き」「顔が好み」などと、普通の恋愛感情と変わらない事を言っていたが、スーザンが常に「未来の王太子妃」しとて振る舞い、上から押さえ付けた結果、ヘンリーはスーザンを神格化し、信奉するに至ったのだ。
「まあ、捕まっても私に頼まれたとは自白していないみたいだからまだ良いけど…」
どうして、ブライアン殿下は「自分が王太子になる」と宣言してくださらないの?
私は、王太子妃になるために努力をしたわ。勉強だってしたし、礼儀作法だって。お父様が推薦してくれてようやく第一王子と婚約できたのに。
ブライアン殿下よりレオン殿下の方が好みだし、レオン殿下が王太子になるなら、私はレオン殿下と婚約したかった!
なのにフィオナ!あの女、レオン殿下に望まれて婚約するなんて!どんなに嫌味や皮肉を言っても堪えないし、本当に嫌いだわ!
「お嬢様、ブライアン殿下より書簡が届いております」
執事がトレイに乗せた封筒を持って来る。
「ブライアン殿下から?」
スーザンは封筒を手に取り、中を見る。
「…やっとその気になってくれたのかしら」
スーザンはニヤリと微笑んだ。
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翌日、スーザンが王城に着くと、謁見の間の扉の前に案内された。
「謁見…?どなたと?」
ブライアンとも正式な場面ではここで謁見する形になるが、婚約者なのでほとんどは応接室などで会う。
扉が開くと、絨毯の先の壇上にブライアンとレオン、マルティナの父である王太子デリックが座っている。そしてデリックの右後にブライアン、左後にレオンが立っていた。
「な…何…?」
スーザンは小さく呟くと、それでも決められた様にデリックの前に進み、跪いた。
「スーザン・キッシンジャー侯爵令嬢」
「は、はい」
デリックに呼ばれて顔を上げるが、ブライアンとは視線が合わない。
「今日其方を呼んだのは他でもない、其方と第一王子との婚約であるが、婚約を解消する旨、キッシンジャー侯爵と合意した」
「え!?」
婚約解消?
「そして、フィオナ・キャストン伯爵令嬢」
デリックの声に、スーザンの後ろから「はい」と返事が聞こえた。
フィオナ?あの女もここに呼ばれたの?
「教会より其方と第二王子の婚約解消が許可された事をここに通告する」
レオンが教会からの書状を開いて示す。文字は見えないが教会からの婚約解消許可の書簡だろう。
「はい。承知いたしました」
フィオナの声が聞こえる。声が落ち着いているので、婚約解消を今始めて聞いたのではない事が判る。
…どういう事なの?
「そして、まだ内々の話しではあるが、其方たちには告げておく。私は次の王太子に第二王子レオンを指名する」
「え!?」
スーザンは思わず顔を上げて壇上を見た。
デリックは肘掛けに持たれてスーザンを見ている。レオンはフィオナを見ている。ブライアンは俯いていた。
「何故ですか!?ブライアン殿下は正妃様の御子で第一王子なのに!」
「スーザン・キッシンジャー侯爵令嬢、発言は許していない。控えなさい」
レオンが言う。スーザンはキッとレオンを睨んだ。
デリックが肘掛けにもたれたまま言った。
「レオンが立太子したら、スーザン・キッシンジャー侯爵令嬢、其方とレオンを婚約させようと考えているが、如何か?」
「え…?」
今、王太子殿下は何と言われた?
其方と、レオンを、婚約させようと?
…ここは何と答えるのが正解かしら。すぐに承諾するのは違うわよね。ブライアン殿下に情がないみたいだし。
でも私にとっては願ったり叶ったりだわ。
「…王太子殿下がそうお考えならば、謹んでお受けいたします」
スーザンが恭しく頭を下げる。するとレオンがため息混じりに言う。
「お受けいたします、か…」
「え?」
「つまり、スーザン・キッシンジャー侯爵令嬢にとっては、王太子妃にさえなれれば相手は誰でも良くて、兄上の事は王太子にならないならどうでも良い、と言う事だろう?」
「そんな」
「いや、そうなんだろう」
ここに来て始めてブライアンが口を開く。
「ブライアン殿下!あの、そういう訳ではないのです」
必死に言い募るスーザンに、ブライアンは悲しそうな表情を向ける。
「少なくとも私に興味がないのは間違いない」
「何を言われるんですか!殿下!」
「…スーザンは、私の目がほとんど見えていない事、気付いてはいないだろう?」
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