推しがシンデレラの王子様になっていた件。

ねーさん

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 夜中にニーナはふと目を覚ます。
 見慣れない天井…あ、そうか王家の別荘だったわ。
 横を見るとエラがスヤスヤと眠っていた。
 ガーゼが貼られた頬を見つめる。
「舞踏会までには治らない…かなぁ」
 舞踏会まであと一カ月半?
 ドレスや宝飾品はどうしよう。エラのお父様が帰って来られたら私がそんな心配しなくてもいい状況になるだろうけど…
 しかしエラは寝顔もかわいいなあ。
 ニーナはまた眠ろうと目を閉じる。が、眠気はどこかへ行ってしまったようだった。
 私が横でモゾモゾしてたらエラを起こしちゃうかな。せっかく家から逃げて今は安全安心なんだから、ゆっくり眠らせてあげたい。
 ニーナはゆっくり身体を起こすと、そろりとベッドから降りる。
 履き物をはくとサイドテーブルに置いてあったストールを持って寝室を出た。
 さすが避暑地だけあって夜は涼しいというよりちょっと肌寒いかも。
 ストールを肩に掛けて廊下を歩く。
 薄いカーテン越しに窓から差し込む月の光で灯りがなくても歩けるほど廊下は明るかった。
 庭に出て月でも眺めようかな。
 ニーナは窓に近付きカーテンの隙間から外を見る。
「…ニーナ?」
 え?この声…
 小声で呼ばれて、振り向くと、リオンが立っていた。

 ドキンッ。
 心臓が鳴る。
 ふ、不意打ち!
「どうした?眠れないのか?」
「目が冴えちゃいまして」
 近付いて来るリオンは、膝下まである丈の長いゆったりとしたシャツに、同素材の下衣。薄手のガウンを羽織っている。
 わわ。リオン殿下、寝間着パジャマだ。
 あ、私もだ。ストールがあって良かったあ!
「俺もだ…少し話すか」
 リオンが微笑みながら言う。

-----

 庭に出ると、湖の見えるベンチにニーナとリオンは並んで座った。
「寒くないか?」
「平気です」
 ニーナはブンブンと首を横に振る。
 夜中に、リオン殿下と、二人きり。こんな状況…むしろ暑いくらいだわ。
「あの、リオン殿下がこちらに来られるの、もう少し先だって聞いてたんですけど、随分早く来られたんですね?」
 ニーナが言うと、リオンは苦笑いを浮かべた。
「…そうだな」
「?」
 何か言いたそう?逆に言いたくなさそう?
 そういえばリオン殿下が到着された時、テオバルト様が「余程気になったのかな?」って言われてたっけ。何が気になったんだろ?
 …もしかして、怪我をして家から逃げて来たエラの事なの…かな?
「テオが…ニーナと一緒に先に行くと言うから…」
 テオバルト様が、私と一緒に………え?私?
 リオン殿下が「気にしてる」のは、私?
別荘ここは敷地自体に立ち入り制限があるから、王城などとは違って人目が少ないだろう?」
「そっ、そういえばそうですね」
 王城では王族のいる部屋は外に騎士が立っているし、廊下などにも要所要所に騎士がいる。人払いをしたとしても少し離れた所には護衛騎士だけでなく侍従や侍女も控えている。
 対してこの別荘は塀に囲まれ、関係者以外は立ち入りできないので、騎士は主に塀の外と別荘の建物の周りに配置され、護衛騎士も常にリオンに張り付く形ではなく離れた所から警備に当たる。だからリオンが夜中に一人で廊下を歩く事ができるのだ。
「しかも王族が来るまでは騎士や使用人の数はもっと少ない。テオがニーナを『恋人にしたい』と言って、そんな人目の少ない場所へ連れて行くと言うから…」
「…でもレジスやエラも一緒ですし、早く来たのはエラを避難させるためで」
「そうなんだが、テオがニーナを口説くにはここは絶好の場所だろ?」
 リオンが眉を顰めて言う。
「そう…ですね」
 私がテオバルト様に口説かれるのが嫌、なの?
 …何で?
 トクトクと鼓動が早くなる胸を押さえるように手を置くニーナ。
「俺が余程そわそわしていたんだろうな。ジェラルドが『そんなに気になるなら行けば良いではないですか』と言ったんだ。だから早く来た。仕事も持って来る事になったけどな」
「オウエン様が?」
「ジェラルドは…俺がニーナを『友人』と言ってから、少し俺に対する態度が変わったように思う」
 リオンは柔らかい微笑みを浮かべた。
 リオン殿下はジェラルド様の変化を好意的に受け止めてるのね。
「少し身近に感じるようになった。まあジェラルドの方は俺を見捨てたのかも知れないが」
 ふっと笑いを漏らす。
「そんな事…」
「俺はそれでも構わないんだ。…ニーナ」
 リオンがニーナの方を見た。
「はい」
「俺は、ジェラルドの変化をもたらしたニーナに感謝している。同じ転生者として、特別な感情もあるが…」
 柔らかい表情でも、真剣な瞳。
 ニーナの心臓が大きく波打つ。
「特別」
「ただ…」
 ニーナから目を逸らして、リオンはベンチから立ち上がった。
「ただ?」
 特別な感情?転生者としてって、どういう意味?
「そろそろ戻ろうか」
 リオンを見上げるニーナの方を見ずにリオンは言った。



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