推しがシンデレラの王子様になっていた件。

ねーさん

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「そろそろ話してくれてもいいのでは?」
 テオバルトの言葉に、ニーナとリオンは顔を見合わせる。
「……」
「……」
 リオンの眼鏡越しの紫の瞳。
 ここが莉音とリオンが別人だと強く感じる部分だ、とニーナは思った。

 先に目を逸らしたのはリオンだ。
 ほんの、ほんの少しだけ頬を赤くしてテオバルトの方を向く。
「話すとは何をだ?テオ」
「リオンとニーナの『二人だけの秘密』を、だよ」
 テオバルトは苦笑いしながら言った。
「秘密?」
「そう。どうしてリオンはニーナを特別扱いするのか。ニーナはどうしてエラ嬢をどうしても舞踏会に出席させたいのか。リオンとニーナは何故エラ嬢の義母を知っているのか」
 指を折りながら言うテオバルト。
「それにニーナ、前に変な事を言ってたよな?『魔法使い』とか『硝子の靴』とか」
 レジスが言うと、ジェラルドは「魔法使い?」と呟きながら首を傾げる。
「…覚えてたの?」
「まあな」
 目を見開いたニーナに、当然だと言わんばかりにレジスは頷いた。
 あーそうだ。レジスは学年主席だし、記憶力もいいんだったわ。ついポロッと口から出た程度の言葉でもちょっとでも何か引っ掛かったら忘れないよね。
「そうそう。それ、これだよね?」
 テオバルトが自分の横に置いていた箱をテーブルに置く。そして両手で箱の上蓋を取る。
 そこには、洋装店で見た、硝子の靴が入っていた。
「すごく気に入っていたみたいだからプレゼント」
 ニコリと笑うと、テオバルトは箱の蓋を伏せてテーブルに置き、その上に取り出した硝子の靴を置く。
「硝子の靴…」
 リオンがテーブルの上の靴を見た。

「とりあえず、二人とも座ったらどうかな?」
 テオバルトに促され、テオバルトの隣りにリオン、ジェラルドがレジスの隣に移動し、ニーナはレジスの反対隣りに座る。
「リオンの態度から見ても、この靴も『二人だけの秘密』に関係する品物なんだね?」
 視線で硝子の靴を示しながらテオバルトが言った。
「……」
 どうしよう。
 もう誤魔化しきれないよね?
 信じてもらえるかどうかはわからないけど、私個人としては転生の事も「シンデレラ」の事も話しても構わない。でもリオン殿下はどうなんだろう?
 信じてもらえなくて、また「乱心」したと思われたら…
 ニーナはチラリとリオンを窺い見ると、リオンは少し眉を顰めて俯いている。やはりリオンも話すかどうか逡巡しているようだ。

 少しの間沈黙が流れ、それを破ったのはジェラルドだった。
「…私は六歳の時、父からリオン殿下の側で仕えるように言い付けられました」
「ジェラルド?」
 リオンが顔を上げて向かいに座るジェラルドを見る。
 ジェラルドはテーブルの上の硝子の靴へ視線を向け、淡々と話を続けた。
「父は『リオン殿下が少し精神的に不安定なようだから、同じ歳のお前が殿下と友人として話しを聞いて差し上げなさい』と言いました。しかし、私もまだ六歳で理解が追いつかなかった。王宮で初めてリオン殿下に目通りした際、殿下は自分が何を言っても相手が怪訝な顔をしたり、嗜められたり、あるいは叱責されたり、呆れられたりの状況にすっかり心を閉じておられました」
「…そうだったな」
 リオンはふっと息を吐く。
「私は私で、ひとつ歳上の兄と次男の自分への父からの期待の差を六歳なりに感じており、父からリオン殿下の側付きになれと言われた時、『リオン殿下をにしろ』と命じられたと、父は私にそれを期待しているのだと思ってしまった。ですから、リオン殿下が所謂『普通』ではない言動をする度に私は勝手に苛立ち、態度を硬化させていきました」
 少し眉を寄せてそう話すジェラルド。
「俺がジェラルドに初めて会ったのは十歳?九歳の頃だったかな?確かにリオンに対しては慇懃ではあるが随分と冷淡な態度だった」
「それまでテオバルト様はオウエン様と会った事がなかったんですか?」
 ニーナが言うと、ジェラルドがレジス越しにニーナをチラッと見た。
 あ、これ、私が口を挟んじゃいけなかった感じ?
「…名前で良い」
 ジェラルドが小声で言う。
「え?」
 名前?
「ジェラルドで良い。ニーナ嬢も、レジスも」
 そう言ったジェラルドは俯いていて無表情だ。
 ええ!?「ギブソンさんに名前で呼ばれる筋合いはありません」なんて言ってたジェラルド様が、名前を呼ぶ許可をくださった!?
「ありがとうございます。ジェラルド様」
 すかさず言って少し頭を下げたレジス。
 あ、レジスってば、人が驚いてる間に先にお礼言って名前を呼ぶなんて、ホント如才ないわ。
「ありがとうございます。ジェラルド様」
 ニーナはにっこりと笑ってレジスよりも深く頭を下げた。



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