幼なじみに契約結婚を持ちかけられました。

ねーさん

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「リンジー、ヒューイ・グラフトン公爵令息との婚約が決まったから」
 父が言い、リンジーは目を見開く。
「私とヒューイが婚約…ですか?」
「リンジーとヒューイ君は幼なじみだし、何の問題もないだろう?」
 父は顎髭を撫でながら言う。

 グラフトン公爵家と言えば、王家に近い血筋の名門貴族。反して我がオルディス家は緊迫財政のしがない伯爵家。王都の屋敷が近いのと、母親同士が同じ歳で仲が良かった故の幼なじみだけど…一言で言えば、家の格が違いすぎる。
 ヒューイは名門公爵家の嫡男。公爵家、侯爵家からの縁談は引きも切らない筈だし、その気になれば王女だって娶れるのに。まあ今の王家には王子はいても王女はいないのだけども。
「お父様、もしやグラフトン閣下の弱味でも握ってらっしゃるんですか?」
「…父親に向かって何て事を言うんだリンジー」
 目が泳いでる。怪しいわ。
 お父様、お人好しで嘘が吐けない人だもの、弱味を握って脅すような事はしないだろうし、そもそも弱味なんて握ってはいないだろうけど。

「娘との婚約を盾に財政支援を取り付けたとか?…あれ?でも公爵家にはわたしとの婚約で財政支援をするメリットがないわね…」
 首を傾げるリンジーに、父はオロオロとしながら言った。
「ざ…財政支援を持ち掛けて来たのも、リンジーを嫁に欲しいと言い出したのも、ヒューイ君だよ!」

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「ヒューイがどんな縁談にも興味を示さなくって。そうしたら急に『リンジーとなら結婚する』って言い出したのよ。私も旦那様もリンジーちゃんなら大歓迎だし。だから直ぐに婚約の申し入れをしたのよ」
 グラフトン公爵家の王都屋敷を訪れたリンジーに、ヒューイの母が嬉しそうに言う。
「…ありがとうございます」
 リンジーは紅茶のカップを置くと、にっこりと笑った。
「でも、ヒューイなら伯爵家の娘ではなく、もっと良い家のお嬢様が選り取り見取りだったのではないですか?」
「まあ…でも本人が興味を示さないのに無理強いする訳にはいかないしね」
 ヒューイの母は首を傾げて笑う。

 まあ、グラフトン公爵家なら、より良い家と縁を繋ぎ、貴族社会での立ち位置を良くしよう、なんて事はないものね。立ち位置的には既に王家に次ぐ位置だし。
 それにしても、おば様の「まあ…」の言い方だと、本当に選り取り見取りだったんだわ。それなのに何で私?
「あの…私などに公爵家の女主人が務まるとは思えないのですが…」
 不安そうに口元に手を当ててリンジーは言った。
 できれば、ヒューイと結婚なんてしたくない。
 何故ならそれは…
「そんな事はないわ。リンジーちゃんは聡明ですもの。それにまだ十七歳、ヒューイが公爵位を継ぐのはまだまだ先なのだからこれから身に付けて行けば良いのよ」
 私がついているわ。と胸を叩く。
 おじ様もおば様も大好きで、おば様がそう言ってくださるのはありがたいし頼もしいけれども。

「リンジー!」
 応接室に男性が入って来る。
「ヒューイ。出掛けていたんじゃ…」
 今日はヒューイは居ないって聞いたから来たのに!そりゃわざとらしく「居ないとは思わなくて」って言ったけど!
「ヒューイ、ご挨拶もせずにお客様に失礼でしょ?」
「母上、リンジーはもう客じゃない。俺の婚約者、身内ですよ」
 ヒューイは母へそう言うと、リンジーの方を向いた。
「リンジーが来ていると知らせを貰って急いで戻って来たんだ」
 笑顔で言うヒューイ。
「…そうなのね」
 引き攣った笑顔でリンジーは言った。

「今日はザインと一緒だったんだ」
 ヒューイが応接室の扉の方を示すと、扉の向こうにもう一人の幼なじみ、ザイン・ハウザント伯爵令息が立っている。
「やあリンジー。久しぶりだね」
 ザインは笑顔でリンジーに小さく手を振った。
「ザイン。久しぶりね」
 ザインと一緒なのは知ってたけど、一緒に帰って来たのね…

「リンジー、俺の部屋へ行こう」
 ヒューイがリンジーに手を差し出す。
「…はい」
 リンジーは引き攣った笑顔のまま、ヒューイの手を取った。



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