幼なじみに契約結婚を持ちかけられました。

ねーさん

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 口角を上げたケントは、ベンチに座ったまま足を組んで、前に立つヒューイを悠然と見上げた。
「今日はどうした?婚約者のリンジーに用があるのか?」
 中庭のベンチでも王子の威厳って出せるのね…やっぱり本物は違うわ。
 リンジーはケントを見ながら思う。
 それにわざわざリンジーって言う処が、学園の中庭でないと婚約者と話す事もできないって感じで、私とヒューイの不仲を強調してて良い。
「ああ。に用があってな」
 にっこり笑うヒューイ。
 黒の貴公子に相応しく、黒いオーラを纏ってるみたい。
 でもケントとは実の兄弟みたいな関係なのに、何でこんな急にバチバチした空気になってるの?

「リンジー」
 ヒューイが視線をケントの隣りに座るリンジーに移す。
「何?」
「俺の誕生日に、内輪でパーティーを開くから来い」
「やだ」
 反射的に言うと、ヒューイはリンジーをジロッと睨んだ。
 だって誕生日のパーティーにはもう何年も行ってないのに…
「リンジーは俺の婚約者なんだから、来るのが当たり前だろ?」
 ニッコリと笑う。
 これ。人前だから笑顔だけど、周りの他の生徒が居なければ憮然としてるわね。きっと。
「内輪なら、余計に行かなくても良いじゃない」
 リンジーが小声で言うと、ヒューイはリンジーの手を掴んで、リンジーを立たせる。
「な、何?」
「駄目だ」
「駄目なのはヒューイの方だろ?」
 ケントがリンジーの、ヒューイの掴んでいる手の反対の手首を掴んだ。
「リンジーと話したいならここで。女の子に乱暴な真似は駄目だろう?」
 優美に笑うケント。
「乱暴な真似などしていない」
 口角を上げているが、眼は笑っていないヒューイ。
「手を引いて無理に立たせるのは充分乱暴だ」
「リンジーは俺の婚約者だ」
 苛立ったように言う。
「だからと言って粗雑に扱って良いものではない。だよね?リンジー」
 片手をヒューイ、片手をケントに握られ、二人を交互に見ていたリンジーはケントの言葉にこくこくと頷いた。

「チッ」
 小さく舌打ちして、ヒューイはリンジーの手を離す。
 それを見て、ケントも手を離した。
 …まるで貴公子と王子に取り合いされてるみたいだったわ。私。
 おおよそ場違いな思考だと思いながらも、リンジーは自由になった両手で自分の頬を押さえる。
 惜しむらくは私が麗しのお姫様じゃないって事ね。
 側から見れば、貴公子と王子に押し付け合われる平凡令嬢がせいぜいだわ。

「リンジー、父も母もリンジーが来るのを楽しみにしてるんだ。少しで良いから顔を出してくれないか」
 うわあ。不本意そうな表情。
 これは、本当は私を引っ張って人気のない所へ行って「来い」って命令するつもりだったんだわ。
 でもおじ様おば様を出されると弱い。おじ様おば様はこんな平凡令嬢な私を本当に歓迎してくれているから。
「……」
「ケントも来てくれるだろう?父も母も楽しみにしてる」
 ヒューイはケントの方を見て言う。
 一時期ヒューイの家で暮らしていたケントは、ヒューイの父母にとって実の子同然なのだ。
「ああ。もちろん」
 ケントは笑って頷いた。
「ザインも、ユーニス嬢にも来て欲しい」
「もちろん行くよ」
「え?私?」
 ユーニスが慌てて立ち上がる。
「ザインと婚約する前に人となりを知りたいだろう?お互いに」
 ヒューイが微笑みながら言うと、ザインも頷いてユーニスに笑顔を向けた。
「そうだね。お互いにね」
 ユーニスはチラッとザインを見てから、ヒューイを見る。
「まあ…そうですね。でも私、公爵家のパーティーとか行った事なくて…」
「内輪の物だから堅苦しく考えなくて良いんだ。そうだ。リンジーと一緒に来れば良い」
 あ、ユーニスと一緒なら、ヒューイの言ったように「少しだけ顔を出す」って訳にはいかないじゃない。
 それを狙ってたのね。狡いわヒューイ。
「な、リンジー」
 笑ってリンジーの方を見るヒューイを上目遣いで睨む。
「…わかったわ」
 渋々言うリンジーに、ヒューイは満足そうに頷いた。



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