幼なじみに契約結婚を持ちかけられました。

ねーさん

文字の大きさ
14 / 84

13

しおりを挟む
13

「そういえば俺の十二歳の誕生日からだよな?リンジーが来なくなったのは」
 ダンスをしながら、ヒューイは思い出したように言った。
「そうだった?」
 とぼけて言う。
「そうだ。あれからリンジーが冷たくなったから良く覚えている」
「冷たくなんて…男の子と女の子だからちょうど離れる時期だっただけよ」
 笑いながら言うと、ヒューイはリンジーの腰に回した手に力を入れた。
「ちょっ。ヒューイ」
 ますます密着して、リンジーは顔を逸らす。
 ヒューイは目の前にあるリンジーの耳にわざと息が掛かるようにしながら言った。
「リンジー来週の俺の誕生日、久しぶりに何か贈ってくれないか?」
 耳元で言うなー!
 リンジーは心の中で叫ぶ。
「ザインやケントには毎年贈り物をしているんだろう?」
「…何で知ってるの」
「二人が色違いの万年筆を持っていたから、どうしたのか聞いたら『リンジーから貰った』と」
 まあ、別に口止めとかしてなかったから…仕方ないわ。
「そうね。不本意でも婚約者に誕生日の贈り物もなしって訳にはいかないわよね」
 リンジーが嫌そうに言い、ヒューイが眉を上げて笑った処で曲が終わった。

-----

 ザインは三人の女生徒とダンスをした後、ようやくユーニスを見つけ、ダンスに誘う事ができた。
「ユーニス嬢、俺と踊るのは嫌でしたか?」
「そう言う訳では…」
 正直に言えば嫌です。とも言えず、ユーニスは言葉を濁す。
「なら良かったです」
「はい」
「……」
「……」

 そう言えば、リンジーがザイン様は人見知りだって言ってたわね。他の女子と踊る時もあんまり喋らないのかしら?
 上目遣いでザインを見ると、ユーニスの視線に気付いたザインがニコッと笑い掛けた。
「!」
 うわあ。麗しい。なるほど、女の子たちはこの顔を至近距離で眺めてるだけでも満足なのかも。

「あの、ザイン様」
「はい」
「同じ歳なんですし、これからお互い人となりを知ろうと思うなら、丁寧な言葉じゃなくても良いですし、ユーニスと呼び捨ててもらっても良いですよ?」
 ユーニスがそう言うと、ザインは微笑みながら言った。
「そう?じゃあそうさせてもらうね。ユーニスもそうして」
「ええ」

 ポツポツと短い会話を交わして、曲が終わると、ユーニスは壁際で葡萄ジュースを飲んでいるリンジーの所へと行く。

「見てあの子、ほら黒の貴公子様の婚約者の友人よ。ちょっと黒の貴公子様の婚約者と親しいからって白の貴公子様にダンスをねだるだなんて…」
「ザイン様がお優しくて笑顔を向けたりされるから勘違いしてるのよ。きっと」
「ヒューイ様も『婚約者以外とは踊らない』って。断られた、泣いてたわ」
「あの婚約者が私以外の女と踊らないでって言ったに決まってるわ。もともと幼なじみだか何だか知らないけど、ヒューイ様にもザイン様にもこれ見よがしに馴れ馴れしくしてたじゃない」
「そうそう。それにケント殿下も。幼なじみだからって敬称なしで呼び捨てにしてるの聞いた事あるもの」
「ええ~不敬だわ」
「そもそも黒の貴公子様との婚約だって、あの女の方からのごり押しに決まってるわ」
「ヒューイ様かわいそう」

 同じような会話が、ヒソヒソと、でもちゃんとリンジーとユーニスの耳に届く音量で、あちこちで繰り広げられている。

 本当に理不尽だわ。
「…はあ」
 リンジーはため息を吐く。
「噂の的ね。私たち」
 ユーニスも小さく苦笑いしながら言った。

 四年生の男子がユーニスをダンスに誘いに来て、ユーニスがフロアへ出た処で、リンジーは外の空気を吸うために舞踏会の会場である講堂を出る。
 
「もう退出しようかな…」
 でもユーニスに黙って帰る訳にはいかないか。
 リンジーはプラプラと中庭を歩く。
 ふと、校舎の影で何かが動くのが視界に入った。
 ん?人影?
 何となく、校舎の影に近付く。足元が芝生なのでハイヒールでも足音はしなかった。
「ずい……たな」
 男性の声が聞こえる。
 …この声。
「そんな……よ」
 もう一人の男性の声。

 ヒューイとザインの声だわ。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

貴方だけが私に優しくしてくれた

バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。 そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。 いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。 しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。

【完結】お嬢様だけがそれを知らない

春風由実
恋愛
公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者でもあるお嬢様には秘密があった。 しかしそれはあっという間に公然の秘密となっていて? それを知らないお嬢様は、日々あれこれと悩んでいる模様。 「この子たちと離れるくらいなら。いっそこの子たちを連れて国外に逃げ──」 王太子殿下、サプライズとか言っている場合ではなくなりました! 今すぐ、対応してください!今すぐです! ※ゆるゆると不定期更新予定です。 ※2022.2.22のスペシャルな猫の日にどうしても投稿したかっただけ。 ※カクヨムにも投稿しています。 世界中の猫が幸せでありますように。 にゃん。にゃんにゃん。にゃん。にゃんにゃん。にゃ~。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

処理中です...