幼なじみに契約結婚を持ちかけられました。

ねーさん

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「お久しぶりです。ルイス様」
 リンジーは目の前の金髪の男性に会釈をした。
「リンジー、久しぶり」
 ルイスと呼ばれた男は金髪を掻き上げながら言う。

 街の噴水のある広場で挨拶を交わす二人を、少し離れたベンチに座って窺い見る男二人がいた。
「声は聞こえないな」
 帽子を深く被ったヒューイが言うと、茶髪の鬘のザインは肩を竦める。
「仕方ないよ。これ以上近付くと気付かれる。それにしてもリンジーかわいい格好しているね」
「…ああ」
 リンジーは薄ピンク色のブラウスに、紺地に白い水玉模様のフレアスカートと云う出立ちだが、ブラウスは前空きのボタンの両側にタックがあり、レースのフリルがあしらわれている。衿も大きく袖口にもフリルがあり、スカートの裾からもフリルが見える。
 あんな格好、俺の前ではした事ない。
 いつもシンプルな服しか着ていないのに。
「変装の一環かな。確かに普段のリンジーとは違うから気付きにくいし、会っても他人の空似かと思うかもね」
「……」
 確かに今のリンジーは貴族令嬢と言うよりちょっと羽振りの良い商家のお嬢さんと言う感じだ。
 ヒューイもオルディス家から尾行つけて来ていなければ街で会っても本人だとは思えなかったかも知れないな、と思う。

「ヒューイ、リンジーたち移動するみたいだよ」
 ザインに耳打ちされてヒューイは改めてリンジーを見る。
 笑顔でルイスと話しながら歩いているリンジー。
 かわいい服を着て他の男に笑い掛けるリンジー。
 …苛々する。
 話しながら歩く二人の後ろを少し離れて着いて行く。
「カフェに入るみたいだね」
 カフェに入ると、奥の席に向かいあって座るリンジーとルイス。
 ヒューイとザインは、二人の近くで観葉植物の影になりリンジーからは見えない席に座った。
「お洋服ありがとうございました」
 リンジーの声が聞こえる。
「どういたしまして。とても似合ってるよ」
 あの服はあの男の趣味か。
 変装要素を含んでいるとは言え、道理でリンジーの好みとはかけ離れてる筈だ。
「本当に頂いて良いんですか?」
 「もちろん」
 観葉植物の葉の間からほんの少しリンジーの表情が見えた。
 はにかむような、嬉しそうな笑顔。
 俺が舞踏会に贈ったドレスと宝飾品は侍女を通じて返して来たのに、その洋服はありがたく頂くのか。
 きっとそう言えば「値段が全然違うじゃないの!」と言われるんだろうが…

 目の前に運ばれて来た紅茶にも気付かず、じっとリンジーを見つめるヒューイを、紅茶のカップを持って眺めるザイン。
「やっぱり手強いな…」
 小声で呟くが、ヒューイには聞こえていないようだ。

 暫くたわいのない話しをした後、ルイスが
「そろそろ時間だ。行こうか」
 と懐中時計を見ながら言った。
「え?」
「仕立屋に予約してるんだ。リンジーに夜会服を見立てて欲しくて」
「私に?」
「陛下の誕生パーティーが冬だろう?それ用に」
 国王の誕生日には王城でパーティーが開催され、国中の貴族が集まる。通常はその家の当主夫妻での参加だが、爵位を譲る前などにはお披露目を兼ねて子息も一緒に参加する場合もあるのだ。
「ルイス様が、陛下の誕生パーティーに出られるんですか?」
 三男だから子爵位を継ぐ訳じゃないのに?
「今年はちょうどその頃長男あに夫婦に子供が生まれるんだ。それで母と長男は不参加。次男はパーティーなどが好きじゃないから俺が母の代わりに参加する事になったんだ」
「ああ…なるほど」
 そう言いながらルイスは立ち上がり、リンジーもルイスに着いて立ち上がる。

 カフェを出ると、ルイスはリンジーと並んで商店街を歩いて行った。
 馬車の通る道路を挟んだ反対側の歩道を歩くヒューイとザイン。
「ヒューイ、あの男はリンジーの相手としてどう?」
 ザインが聞くと、ヒューイは眉を顰めた。
「……」
「少なくとも、ヒューイの方が『良い男』なのは間違いないね」
「ああ」
「そこ即答する処がヒューイらしい」
 ザインはクスクスと笑う。
「だからこそ、俺を見慣れたリンジーがあんな男を好きになるとは思えないんだが」
 至極真顔でヒューイが言った時、リンジーとルイスは商店街の横道に入って行った。
「あんな所に仕立屋があったかな?」
 ザインが首を傾げると、ヒューイは顎に手を当てて考える。
「あるにはあるが…」
 確か、あの店は…



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