幼なじみに契約結婚を持ちかけられました。

ねーさん

文字の大きさ
69 / 84

68

しおりを挟む
68

「ドレスの色をピンクにしたから試着もなしで当日いきなりだったのね?」
 ステップを踏みながらリンジーが言う。
 リンジーはヒューイに言いたい事があったので、話がしやすいようにフロアの端で二人はダンスをしていた。
「早目にわかっていたら着るのを拒否しただろ?」
 リンジーをリードしながらヒューイは言った。
「もちろんよ」
「だから秘密にしてたんだ。それに試着しなくてもオルディス家の侍女長からリンのサイズは逐一聞いて調整していたから。大丈夫だったろう?」
「え?サイズ聞いてたの?」
 リンジーが驚いて言うと、ヒューイはクスクスと笑う。
「俺が直接聞いた訳ではなく、両家の侍女同士の遣り取りだ」
「あ…そう」
 良かった。ヒューイに私の全身のサイズを知られてたらどうしようかと思ったわ。

「それで、どうしてよりによってピンクなの?」
「リン、ピンク好きだろ?」
「好きじゃないわ。知ってるでしょ?それに私がピンクを好きなんだと思ってるなら今日までドレスの色を隠す必要なかったじゃない」
 リンジーがそうヒューイに言う。
「そうだな。実は俺がリンにピンクのドレスを着せたかっただけなんだ。対抗心だな」
「何に対抗するの?」
「リン、あの男と会う時、ピンクのブラウスを着ていただろ?それに紺の水玉のスカート」
「え?」
 それって…ルイス様とデートした時?
「あの男がリンを着飾らせたんだと思うと、無性に腹立たしくて…絶対にもっとかわいいドレスを着せてやろうと思っていたんだ。要するに、俺はあの男に嫉妬していたんだな」
 嫉妬。
 ヒューイが、ルイス様に。
 え?だからあの時のヒューイはあんなに怒ってたの?
「あれはルイス様の趣味よ?私が選んだんじゃないんだけど…」
「…だが、似合っていてかわいかった。リンのかわいい面をあの男が引き出したと思えば余計に腹立たしい」
 眉間に皺を寄せてヒューイは言った。
「似合ってた?」
 キョトンとしてリンジーが聞くと、ヒューイは不本意そうに
「似合ってた」
 と言う。

「…似合わない服着て、軽率な行動して、婚約者ヒューイの顔を潰すような真似をしたから、呆れて怒ったんだと思ってたんだけど…」
「いや。リンがあの男を庇うから、リンがあの男を本気で好きなのかと思って…しかし、その時には俺は自分が嫉妬していると気付いていなかった。だから怒りと嫉みの感情をそのままリンにぶつけてしまって…怖い思いをさせただろう?」
 ヒューイは慈しむような瞳でリンジーを見つめた。
「……」
 無言で少し頷くリンジー。
「そうだよな。本当にすまなかった」
「ううん」
 首を横に振る。

 今、言わなくちゃ。
 今日絶対言うって決めたんだもの。
「…あのね、ヒューイ」
「うん?」
「私も…嫉妬したの」
「ん?」
 リンジーは顔を上げてヒューイの顔を見た。

「私も、あの侍女と、ザインに嫉妬してた」
「リン。それは…」
 ヒューイが目を見開いてリンジーを見た時、ダンスの曲が終わる。
 互いに礼を取ると、ヒューイはリンジーの手を掴む。
「出よう」
 短く言うと、リンジーの手を引いて、フロアの周りでヒューイがリンジーと踊り終わるのを待っていた女生徒たちの間をすり抜けた。
「ヒューイ様」
「次は私と」
「ダンスを」
「ヒューイ様」
「踊って」
 口々に言う女生徒を無視し、ヒューイはリンジーと手を繋いだまま講堂の入口へ向かう。

「ヒューイ、いいの?」
 リンジーが少し振り向いて取り残された女生徒たちの方を見ながら言うと
「元々全て断るつもりだった」
 ヒューイはそう言いながらリンジーの手を引いた。

 講堂を出ると、講堂と校舎の間の庭にあるベンチに座るようリンジーを促す。
 リンジーがベンチに座ると、ヒューイもその隣に座った。
「リン。嫉妬とは…」
 座るなり言うヒューイ。よほどそれについて聞きたかったらしい。
「…さっき言った通りよ」
 間が空いて何だか恥ずかしくなったリンジーは唇を少し尖らせて言う。
「あの女とザインに嫉妬していたと言ったな?それは本当なのか?」
 ヒューイはじっとリンジーを見た。
「ホントよ」
 唇を尖らせて言うリンジーに、ヒューイはますます目を見開いた。
「…待ってくれ。あの侍女とザインに嫉妬したという事は…もしや、リンは俺を…?」
「……」
 こくん。と頷くと、ヒューイはリンジーの両腕を掴んだ。

「リン。言葉で言ってくれないか?」
 言葉?
 …口に出そうとするとものすごく恥ずかしいんだけど。
「…ええと」
 言いにくそうに俯くリンジー。
「リン」
 ヒューイがリンジーの顔を覗き込む。
「あの…そんなに見られると言い辛いんだけど…」
 顔を背けるリンジーの頬が赤くなっている。
「そうか。じゃあこれでどうだ?」
 腕を掴んだ手を離すと、ヒューイはリンジーを抱きしめた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

先生

藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。 町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。 ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。 だけど薫は恋愛初心者。 どうすればいいのかわからなくて…… ※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

貴方だけが私に優しくしてくれた

バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。 そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。 いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。 しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

処理中です...