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「ドレスの色をピンクにしたから試着もなしで当日いきなりだったのね?」
ステップを踏みながらリンジーが言う。
リンジーはヒューイに言いたい事があったので、話がしやすいようにフロアの端で二人はダンスをしていた。
「早目にわかっていたら着るのを拒否しただろ?」
リンジーをリードしながらヒューイは言った。
「もちろんよ」
「だから秘密にしてたんだ。それに試着しなくてもオルディス家の侍女長からリンのサイズは逐一聞いて調整していたから。大丈夫だったろう?」
「え?サイズ聞いてたの?」
リンジーが驚いて言うと、ヒューイはクスクスと笑う。
「俺が直接聞いた訳ではなく、両家の侍女同士の遣り取りだ」
「あ…そう」
良かった。ヒューイに私の全身のサイズを知られてたらどうしようかと思ったわ。
「それで、どうしてよりによってピンクなの?」
「リン、ピンク好きだろ?」
「好きじゃないわ。知ってるでしょ?それに私がピンクを好きなんだと思ってるなら今日までドレスの色を隠す必要なかったじゃない」
リンジーがそうヒューイに言う。
「そうだな。実は俺がリンにピンクのドレスを着せたかっただけなんだ。対抗心だな」
「何に対抗するの?」
「リン、あの男と会う時、ピンクのブラウスを着ていただろ?それに紺の水玉のスカート」
「え?」
それって…ルイス様とデートした時?
「あの男がリンを着飾らせたんだと思うと、無性に腹立たしくて…絶対にもっとかわいいドレスを着せてやろうと思っていたんだ。要するに、俺はあの男に嫉妬していたんだな」
嫉妬。
ヒューイが、ルイス様に。
え?だからあの時のヒューイはあんなに怒ってたの?
「あれはルイス様の趣味よ?私が選んだんじゃないんだけど…」
「…だが、似合っていてかわいかった。リンのかわいい面をあの男が引き出したと思えば余計に腹立たしい」
眉間に皺を寄せてヒューイは言った。
「似合ってた?」
キョトンとしてリンジーが聞くと、ヒューイは不本意そうに
「似合ってた」
と言う。
「…似合わない服着て、軽率な行動して、婚約者の顔を潰すような真似をしたから、呆れて怒ったんだと思ってたんだけど…」
「いや。リンがあの男を庇うから、リンがあの男を本気で好きなのかと思って…しかし、その時には俺は自分が嫉妬していると気付いていなかった。だから怒りと嫉みの感情をそのままリンにぶつけてしまって…怖い思いをさせただろう?」
ヒューイは慈しむような瞳でリンジーを見つめた。
「……」
無言で少し頷くリンジー。
「そうだよな。本当にすまなかった」
「ううん」
首を横に振る。
今、言わなくちゃ。
今日絶対言うって決めたんだもの。
「…あのね、ヒューイ」
「うん?」
「私も…嫉妬したの」
「ん?」
リンジーは顔を上げてヒューイの顔を見た。
「私も、あの侍女と、ザインに嫉妬してた」
「リン。それは…」
ヒューイが目を見開いてリンジーを見た時、ダンスの曲が終わる。
互いに礼を取ると、ヒューイはリンジーの手を掴む。
「出よう」
短く言うと、リンジーの手を引いて、フロアの周りでヒューイがリンジーと踊り終わるのを待っていた女生徒たちの間をすり抜けた。
「ヒューイ様」
「次は私と」
「ダンスを」
「ヒューイ様」
「踊って」
口々に言う女生徒を無視し、ヒューイはリンジーと手を繋いだまま講堂の入口へ向かう。
「ヒューイ、いいの?」
リンジーが少し振り向いて取り残された女生徒たちの方を見ながら言うと
「元々全て断るつもりだった」
ヒューイはそう言いながらリンジーの手を引いた。
講堂を出ると、講堂と校舎の間の庭にあるベンチに座るようリンジーを促す。
リンジーがベンチに座ると、ヒューイもその隣に座った。
「リン。嫉妬とは…」
座るなり言うヒューイ。よほどそれについて聞きたかったらしい。
「…さっき言った通りよ」
間が空いて何だか恥ずかしくなったリンジーは唇を少し尖らせて言う。
「あの女とザインに嫉妬していたと言ったな?それは本当なのか?」
ヒューイはじっとリンジーを見た。
「ホントよ」
唇を尖らせて言うリンジーに、ヒューイはますます目を見開いた。
「…待ってくれ。あの侍女とザインに嫉妬したという事は…もしや、リンは俺を…?」
「……」
こくん。と頷くと、ヒューイはリンジーの両腕を掴んだ。
「リン。言葉で言ってくれないか?」
言葉?
…口に出そうとするとものすごく恥ずかしいんだけど。
「…ええと」
言いにくそうに俯くリンジー。
「リン」
ヒューイがリンジーの顔を覗き込む。
「あの…そんなに見られると言い辛いんだけど…」
顔を背けるリンジーの頬が赤くなっている。
「そうか。じゃあこれでどうだ?」
腕を掴んだ手を離すと、ヒューイはリンジーを抱きしめた。
「ドレスの色をピンクにしたから試着もなしで当日いきなりだったのね?」
ステップを踏みながらリンジーが言う。
リンジーはヒューイに言いたい事があったので、話がしやすいようにフロアの端で二人はダンスをしていた。
「早目にわかっていたら着るのを拒否しただろ?」
リンジーをリードしながらヒューイは言った。
「もちろんよ」
「だから秘密にしてたんだ。それに試着しなくてもオルディス家の侍女長からリンのサイズは逐一聞いて調整していたから。大丈夫だったろう?」
「え?サイズ聞いてたの?」
リンジーが驚いて言うと、ヒューイはクスクスと笑う。
「俺が直接聞いた訳ではなく、両家の侍女同士の遣り取りだ」
「あ…そう」
良かった。ヒューイに私の全身のサイズを知られてたらどうしようかと思ったわ。
「それで、どうしてよりによってピンクなの?」
「リン、ピンク好きだろ?」
「好きじゃないわ。知ってるでしょ?それに私がピンクを好きなんだと思ってるなら今日までドレスの色を隠す必要なかったじゃない」
リンジーがそうヒューイに言う。
「そうだな。実は俺がリンにピンクのドレスを着せたかっただけなんだ。対抗心だな」
「何に対抗するの?」
「リン、あの男と会う時、ピンクのブラウスを着ていただろ?それに紺の水玉のスカート」
「え?」
それって…ルイス様とデートした時?
「あの男がリンを着飾らせたんだと思うと、無性に腹立たしくて…絶対にもっとかわいいドレスを着せてやろうと思っていたんだ。要するに、俺はあの男に嫉妬していたんだな」
嫉妬。
ヒューイが、ルイス様に。
え?だからあの時のヒューイはあんなに怒ってたの?
「あれはルイス様の趣味よ?私が選んだんじゃないんだけど…」
「…だが、似合っていてかわいかった。リンのかわいい面をあの男が引き出したと思えば余計に腹立たしい」
眉間に皺を寄せてヒューイは言った。
「似合ってた?」
キョトンとしてリンジーが聞くと、ヒューイは不本意そうに
「似合ってた」
と言う。
「…似合わない服着て、軽率な行動して、婚約者の顔を潰すような真似をしたから、呆れて怒ったんだと思ってたんだけど…」
「いや。リンがあの男を庇うから、リンがあの男を本気で好きなのかと思って…しかし、その時には俺は自分が嫉妬していると気付いていなかった。だから怒りと嫉みの感情をそのままリンにぶつけてしまって…怖い思いをさせただろう?」
ヒューイは慈しむような瞳でリンジーを見つめた。
「……」
無言で少し頷くリンジー。
「そうだよな。本当にすまなかった」
「ううん」
首を横に振る。
今、言わなくちゃ。
今日絶対言うって決めたんだもの。
「…あのね、ヒューイ」
「うん?」
「私も…嫉妬したの」
「ん?」
リンジーは顔を上げてヒューイの顔を見た。
「私も、あの侍女と、ザインに嫉妬してた」
「リン。それは…」
ヒューイが目を見開いてリンジーを見た時、ダンスの曲が終わる。
互いに礼を取ると、ヒューイはリンジーの手を掴む。
「出よう」
短く言うと、リンジーの手を引いて、フロアの周りでヒューイがリンジーと踊り終わるのを待っていた女生徒たちの間をすり抜けた。
「ヒューイ様」
「次は私と」
「ダンスを」
「ヒューイ様」
「踊って」
口々に言う女生徒を無視し、ヒューイはリンジーと手を繋いだまま講堂の入口へ向かう。
「ヒューイ、いいの?」
リンジーが少し振り向いて取り残された女生徒たちの方を見ながら言うと
「元々全て断るつもりだった」
ヒューイはそう言いながらリンジーの手を引いた。
講堂を出ると、講堂と校舎の間の庭にあるベンチに座るようリンジーを促す。
リンジーがベンチに座ると、ヒューイもその隣に座った。
「リン。嫉妬とは…」
座るなり言うヒューイ。よほどそれについて聞きたかったらしい。
「…さっき言った通りよ」
間が空いて何だか恥ずかしくなったリンジーは唇を少し尖らせて言う。
「あの女とザインに嫉妬していたと言ったな?それは本当なのか?」
ヒューイはじっとリンジーを見た。
「ホントよ」
唇を尖らせて言うリンジーに、ヒューイはますます目を見開いた。
「…待ってくれ。あの侍女とザインに嫉妬したという事は…もしや、リンは俺を…?」
「……」
こくん。と頷くと、ヒューイはリンジーの両腕を掴んだ。
「リン。言葉で言ってくれないか?」
言葉?
…口に出そうとするとものすごく恥ずかしいんだけど。
「…ええと」
言いにくそうに俯くリンジー。
「リン」
ヒューイがリンジーの顔を覗き込む。
「あの…そんなに見られると言い辛いんだけど…」
顔を背けるリンジーの頬が赤くなっている。
「そうか。じゃあこれでどうだ?」
腕を掴んだ手を離すと、ヒューイはリンジーを抱きしめた。
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