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「そうだリンジー、これを返しておく」
ケントが机の引き出しから白い封筒を取り出して来てリンジーの前に差し出した。
「これ…」
王家の封筒に蝋封にはケントの印璽。
封筒には蝋封を剥がした跡がある。
「そう。あの男が差し替えたリンジーの『婚約解消の条件』だ。あの男が開封してしまったが、中身はそのまま入っている」
「もう無効なんだから捨てても良かったのに」
「しかし、仮にもリンジーの人生が掛かっていた物だからな」
「そうね。ありがとうケント」
「見てもいいか?」
ヒューイがリンジーが持つ封筒を指差す。
「いいけど…何書いてたか、知ってるわよね?」
封筒をヒューイの方に差出す。
「ああ」
ヒューイは封筒を少しの間見た後、中から便箋を取り出して開いた。
【私のために何もかもを捨てる覚悟】
そう書かれた便箋をヒューイはじっと見つめる。
「リン、これを俺にくれないか?」
「え?いいけど…そんな物どうするの?」
ヒューイは便箋を封筒に入れると、胸ポケットにそれを収めた。
「戒めに持っておく」
微笑んで言う。
「戒め?」
「ああ。俺がリンの気持ちを蔑ろにした事を忘れないように」
「ヒューイ…」
「コホン」
見つめ合うリンジーとヒューイ。向かいに座るケントは咳払いをした。
「あ…」
いくら気にするなって言われたからってケントの前で…ダメダメ。
リンジーはヒューイの方に向けていた顔を正面に戻し、居住いを正す。
「リンジーは気遣わなくて良いが、ヒューイはもう少し俺に気を遣え」
呆れた口調でケントが言うと、ヒューイは「ははは」と笑った。
-----
春期が始まった学園の中庭で、リンジーとユーニスがベンチで昼食を摂っていると、ケントがやって来る。
「ヒューイとザインは?」
「後で来るわ」
「そうか」
ケントはリンジーの隣に座った。
「ユーニスは春期休暇中にザインとデートをしたのか?」
ケントに話し掛けられると思っていなかったユーニスは、少し驚いた様子でケントを見る。
「え、あ、はい。でもデートと言っても、カフェでお茶を飲んで、少し街を歩いたくらいですけど」
「そうか」
ケントはそれ以上何も言わずに昼食を食べ始めた。
リンジーはケントとユーニスを視線だけで交互に見る。
ユーニスはケントと踊った時にどんな話しをしたのか、私には言わないけど、この間ユーニスがザインにキスされた事を話した時の感じとか、今とか…恋愛なのかはわからないけど、ケントの方はユーニスを少し気にしてるのかしら?
少しすると、ヒューイとザインがやって来て、それきりケントとユーニスが会話を交わす事はなかった。
「ねえ、ヒューイ」
ケントとザイン、ユーニスが中庭から去り、ヒューイと二人でベンチに並んで座ったリンジーが言う。
「うん?」
「ザインはユーニスを好きになれそうなの?」
「さあどうだろうな。今はまだわからないんじゃないか?」
「そう…」
「何か気になるのか?」
「……」
リンジーは周りに視線を巡らせた。
いつものように生徒たちが何組か、遠巻きにリンジーとヒューイを見ている。
多分話の内容までは聞こえてないと思うけど…ユーニスとザインの事だけでも聞かれたくはないけど、ケントは王子だから余計に周りに聞かれたら不味い気がするわ。
ジロリ。
ヒューイが周りを睨むように見回すと、遠巻きにしている生徒たちが数歩後ずさった。
ひええ。黒の貴公子の眼力は無駄に迫力があり過ぎるわ。
「これで聞こえないだろう?」
リンジーにニッコリと微笑みかけるヒューイ。
「うん。あ、でも念のため」
リンジーはヒューイに向かって小さく手招きをすると、口の横に内緒話をするよう手を当てた。
ヒューイは嬉しそうに笑うと、リンジーの口元に自分の耳を近付ける。
「あのね、ケントが……」
小声で、ケントがユーニスを気にかけているんじゃないかと言うと、ヒューイは少し考える。
「どう思う?」
「気にはなっているのかもな。しかし、おそらくザインとユーニスが婚約する事になれば、ケントは何も言わずに自分に蓋をするだろう」
「そう…ね」
私とヒューイの婚約の時も、私がすんなり婚約を受け入れてたらケントは何も言わなかった筈だもの。
だからと言ってケント自身が何も言わないなら、周りがどうにかできるものじゃないし…ユーニスを気にしてても、それが恋愛感情なのかどうかもわからないものね。
「俺としてはケントの味方をしたい気持ちも強いが、ザインも…異性と普通に結婚できる、そんな相手に出会えたなら、それも応援してやりたいとも思う」
「そうよね…」
ヒューイにとっては兄弟と元恋人の友人だもの。どっちにも幸せになって欲しいわよね。
「あの三人に関しては、俺たちは見守っている事しかできないんじゃないか?」
「そうね」
リンジーは大きく頷いた。
「そうだリンジー、これを返しておく」
ケントが机の引き出しから白い封筒を取り出して来てリンジーの前に差し出した。
「これ…」
王家の封筒に蝋封にはケントの印璽。
封筒には蝋封を剥がした跡がある。
「そう。あの男が差し替えたリンジーの『婚約解消の条件』だ。あの男が開封してしまったが、中身はそのまま入っている」
「もう無効なんだから捨てても良かったのに」
「しかし、仮にもリンジーの人生が掛かっていた物だからな」
「そうね。ありがとうケント」
「見てもいいか?」
ヒューイがリンジーが持つ封筒を指差す。
「いいけど…何書いてたか、知ってるわよね?」
封筒をヒューイの方に差出す。
「ああ」
ヒューイは封筒を少しの間見た後、中から便箋を取り出して開いた。
【私のために何もかもを捨てる覚悟】
そう書かれた便箋をヒューイはじっと見つめる。
「リン、これを俺にくれないか?」
「え?いいけど…そんな物どうするの?」
ヒューイは便箋を封筒に入れると、胸ポケットにそれを収めた。
「戒めに持っておく」
微笑んで言う。
「戒め?」
「ああ。俺がリンの気持ちを蔑ろにした事を忘れないように」
「ヒューイ…」
「コホン」
見つめ合うリンジーとヒューイ。向かいに座るケントは咳払いをした。
「あ…」
いくら気にするなって言われたからってケントの前で…ダメダメ。
リンジーはヒューイの方に向けていた顔を正面に戻し、居住いを正す。
「リンジーは気遣わなくて良いが、ヒューイはもう少し俺に気を遣え」
呆れた口調でケントが言うと、ヒューイは「ははは」と笑った。
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春期が始まった学園の中庭で、リンジーとユーニスがベンチで昼食を摂っていると、ケントがやって来る。
「ヒューイとザインは?」
「後で来るわ」
「そうか」
ケントはリンジーの隣に座った。
「ユーニスは春期休暇中にザインとデートをしたのか?」
ケントに話し掛けられると思っていなかったユーニスは、少し驚いた様子でケントを見る。
「え、あ、はい。でもデートと言っても、カフェでお茶を飲んで、少し街を歩いたくらいですけど」
「そうか」
ケントはそれ以上何も言わずに昼食を食べ始めた。
リンジーはケントとユーニスを視線だけで交互に見る。
ユーニスはケントと踊った時にどんな話しをしたのか、私には言わないけど、この間ユーニスがザインにキスされた事を話した時の感じとか、今とか…恋愛なのかはわからないけど、ケントの方はユーニスを少し気にしてるのかしら?
少しすると、ヒューイとザインがやって来て、それきりケントとユーニスが会話を交わす事はなかった。
「ねえ、ヒューイ」
ケントとザイン、ユーニスが中庭から去り、ヒューイと二人でベンチに並んで座ったリンジーが言う。
「うん?」
「ザインはユーニスを好きになれそうなの?」
「さあどうだろうな。今はまだわからないんじゃないか?」
「そう…」
「何か気になるのか?」
「……」
リンジーは周りに視線を巡らせた。
いつものように生徒たちが何組か、遠巻きにリンジーとヒューイを見ている。
多分話の内容までは聞こえてないと思うけど…ユーニスとザインの事だけでも聞かれたくはないけど、ケントは王子だから余計に周りに聞かれたら不味い気がするわ。
ジロリ。
ヒューイが周りを睨むように見回すと、遠巻きにしている生徒たちが数歩後ずさった。
ひええ。黒の貴公子の眼力は無駄に迫力があり過ぎるわ。
「これで聞こえないだろう?」
リンジーにニッコリと微笑みかけるヒューイ。
「うん。あ、でも念のため」
リンジーはヒューイに向かって小さく手招きをすると、口の横に内緒話をするよう手を当てた。
ヒューイは嬉しそうに笑うと、リンジーの口元に自分の耳を近付ける。
「あのね、ケントが……」
小声で、ケントがユーニスを気にかけているんじゃないかと言うと、ヒューイは少し考える。
「どう思う?」
「気にはなっているのかもな。しかし、おそらくザインとユーニスが婚約する事になれば、ケントは何も言わずに自分に蓋をするだろう」
「そう…ね」
私とヒューイの婚約の時も、私がすんなり婚約を受け入れてたらケントは何も言わなかった筈だもの。
だからと言ってケント自身が何も言わないなら、周りがどうにかできるものじゃないし…ユーニスを気にしてても、それが恋愛感情なのかどうかもわからないものね。
「俺としてはケントの味方をしたい気持ちも強いが、ザインも…異性と普通に結婚できる、そんな相手に出会えたなら、それも応援してやりたいとも思う」
「そうよね…」
ヒューイにとっては兄弟と元恋人の友人だもの。どっちにも幸せになって欲しいわよね。
「あの三人に関しては、俺たちは見守っている事しかできないんじゃないか?」
「そうね」
リンジーは大きく頷いた。
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