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ローズの手紙に書いてあった「アレクサンドラ」は侯爵令嬢ではなく辺境伯の令嬢だった。
しかし今17歳のアレクサンドラは「身体が弱い」と言う理由で学園には入学しなかったらしく、王都に来る事もなかったので、ロイドとの婚約話が出た事はないらしい。と、ロイドの侍従から聞いた。
夏季休暇中も定例茶会はあるので、王宮に訪れたリザを出迎えてくれたのがロイドの侍従アベルだったのだ。
いつもは出迎えなどされないが、開口一番
「舞踏会で同じ相手と二曲踊る意味を、殿下はご存知ないんです!」
と言ったので、リザがロイドと会う前にどうしても主人をフォローしたかったのだろう。
「舞踏会の時は…体調でも悪くなったのか?」
ロイドからそう言ったので、知らなかったのは本当なのかも知れないとリザは思った。
「ええ。少し…勝手に退出して申し訳ありませんでした」
リザは頭を下げた。
「いや、もう大丈夫なのか?」
「ご心配いただき、ありがとうございます。もう問題ありませんわ」
リザがアルカイックスマイルで答えると、ロイドは眉を寄せる。
あら、殿下の仏頂面がますます不機嫌そうになったわ。私何か失礼だったかしら?
「…今日は何故そんなに表面的な…」
「え?」
声が小さくて聞こえない。そうリザが思った時、廊下の騒めきが耳に入った。
「…困ります」
「待ってください」
廊下から聞こえる声と足音が段々大きくなって、お茶会をしていたテラスに出る扉がバンッと勢いよく開いた。
「ロイド殿下!」
まず入って来たのはローズだ。後ろからアベルと王宮の侍女が二人入って来る。
「エンジェル様、今日は殿下はご婚約者様とお茶会中なので困りますと申し上げましたよね!?」
アベルが声を荒げる。
「だって、私も殿下とお茶をしたかったんですもの。ねえ、殿下良いでしょう?」
ローズは呆気に取られた表情のロイドの肩に触れた。そしてリザの方を見る。
「リザ様、私も一緒にお茶しても良いでしょ?」
ーーーヒロインは私なので。
ローズの声が聞こえた気がして、リザは黙って席を立つ。
ロイドが慌てた様子でリザを見た。
「わたくし今日は帰りますわ。ローズさんどうぞごゆっくり」
リザがそう言うと、ロイドは焦ったように「お…おい」とリザを引き止めようとする。
「殿下はローズさんから『舞踏会で二曲踊る意味』をよくお聞きになると良いと思いますわ」
ニッコリ笑うと、テラスの扉へと向かった。
-----
「舞踏会で同じ相手と二曲踊る事が恋人宣言になる、とは本当なのか?」
ロイドは、リザが退出した後、ローズを追い出しながらリザの言った言葉の意味を聞いてみた。
ローズは頬を染めながら「舞踏会で同じ相手と二曲踊るのは、『私たち恋人同士です』と周りに知らしめる意味がありますわ」と言ったのだ。
「ロイド殿下、意外とその手の噂に疎いですね」
自室のソファで膝に肘を置き頭を抱えるロイドに向かってアベルは呆れたように言った。
「じゃあ、俺がローズと恋人宣言した事に…?」
「そうですね。リザ様には一応『殿下はその意味をご存知ない』と伝えましたが、信じてはおられないでしょうね」
「…ローズは知っていて二曲目に誘ったのか?」
「そりゃそうでしょう」
「それで毎日のように押し掛けて来るのか…」
ローズは夏季休暇になってから二日と置かず王宮へやって来ていた。ロイドに会いたいと言うが、断ると素直に帰って行った。強引に入って来たのは今日が初めてだ。
「…誤解されただろうか?」
「リザ様にですか?誤解されたかどうかは分かりませんが、ローズ嬢がよく王宮を訪れているのは悟られたでしょうね」
「はあ…」
ロイドがため息を吐く。
「そういえば、リザ様に、アレクサンドラ様とロイド殿下に婚約の話が出た事があるのか、と聞かれましたよ」
「アレクサンドラ?」
「辺境伯の令嬢です」
「…何故そんな事を?俺は辺境伯令嬢と個人的に話した事もないぞ」
「何故かは存じませんが…多少は殿下の女性関係にも興味が出て来られたのかも」
「女性関係…何だかそれは人聞きが悪い響きだな…」
ロイドはますます俯き、頭を抱えた。
ローズの手紙に書いてあった「アレクサンドラ」は侯爵令嬢ではなく辺境伯の令嬢だった。
しかし今17歳のアレクサンドラは「身体が弱い」と言う理由で学園には入学しなかったらしく、王都に来る事もなかったので、ロイドとの婚約話が出た事はないらしい。と、ロイドの侍従から聞いた。
夏季休暇中も定例茶会はあるので、王宮に訪れたリザを出迎えてくれたのがロイドの侍従アベルだったのだ。
いつもは出迎えなどされないが、開口一番
「舞踏会で同じ相手と二曲踊る意味を、殿下はご存知ないんです!」
と言ったので、リザがロイドと会う前にどうしても主人をフォローしたかったのだろう。
「舞踏会の時は…体調でも悪くなったのか?」
ロイドからそう言ったので、知らなかったのは本当なのかも知れないとリザは思った。
「ええ。少し…勝手に退出して申し訳ありませんでした」
リザは頭を下げた。
「いや、もう大丈夫なのか?」
「ご心配いただき、ありがとうございます。もう問題ありませんわ」
リザがアルカイックスマイルで答えると、ロイドは眉を寄せる。
あら、殿下の仏頂面がますます不機嫌そうになったわ。私何か失礼だったかしら?
「…今日は何故そんなに表面的な…」
「え?」
声が小さくて聞こえない。そうリザが思った時、廊下の騒めきが耳に入った。
「…困ります」
「待ってください」
廊下から聞こえる声と足音が段々大きくなって、お茶会をしていたテラスに出る扉がバンッと勢いよく開いた。
「ロイド殿下!」
まず入って来たのはローズだ。後ろからアベルと王宮の侍女が二人入って来る。
「エンジェル様、今日は殿下はご婚約者様とお茶会中なので困りますと申し上げましたよね!?」
アベルが声を荒げる。
「だって、私も殿下とお茶をしたかったんですもの。ねえ、殿下良いでしょう?」
ローズは呆気に取られた表情のロイドの肩に触れた。そしてリザの方を見る。
「リザ様、私も一緒にお茶しても良いでしょ?」
ーーーヒロインは私なので。
ローズの声が聞こえた気がして、リザは黙って席を立つ。
ロイドが慌てた様子でリザを見た。
「わたくし今日は帰りますわ。ローズさんどうぞごゆっくり」
リザがそう言うと、ロイドは焦ったように「お…おい」とリザを引き止めようとする。
「殿下はローズさんから『舞踏会で二曲踊る意味』をよくお聞きになると良いと思いますわ」
ニッコリ笑うと、テラスの扉へと向かった。
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「舞踏会で同じ相手と二曲踊る事が恋人宣言になる、とは本当なのか?」
ロイドは、リザが退出した後、ローズを追い出しながらリザの言った言葉の意味を聞いてみた。
ローズは頬を染めながら「舞踏会で同じ相手と二曲踊るのは、『私たち恋人同士です』と周りに知らしめる意味がありますわ」と言ったのだ。
「ロイド殿下、意外とその手の噂に疎いですね」
自室のソファで膝に肘を置き頭を抱えるロイドに向かってアベルは呆れたように言った。
「じゃあ、俺がローズと恋人宣言した事に…?」
「そうですね。リザ様には一応『殿下はその意味をご存知ない』と伝えましたが、信じてはおられないでしょうね」
「…ローズは知っていて二曲目に誘ったのか?」
「そりゃそうでしょう」
「それで毎日のように押し掛けて来るのか…」
ローズは夏季休暇になってから二日と置かず王宮へやって来ていた。ロイドに会いたいと言うが、断ると素直に帰って行った。強引に入って来たのは今日が初めてだ。
「…誤解されただろうか?」
「リザ様にですか?誤解されたかどうかは分かりませんが、ローズ嬢がよく王宮を訪れているのは悟られたでしょうね」
「はあ…」
ロイドがため息を吐く。
「そういえば、リザ様に、アレクサンドラ様とロイド殿下に婚約の話が出た事があるのか、と聞かれましたよ」
「アレクサンドラ?」
「辺境伯の令嬢です」
「…何故そんな事を?俺は辺境伯令嬢と個人的に話した事もないぞ」
「何故かは存じませんが…多少は殿下の女性関係にも興味が出て来られたのかも」
「女性関係…何だかそれは人聞きが悪い響きだな…」
ロイドはますます俯き、頭を抱えた。
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