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「サイモン殿下、この度は誠に申し訳ありませんでした」
サイモンの執務室で、ソファ座るサイモンと、その前にオリーとクリストファーが跪いていた。
「…クリス、お前はリザ嬢に薬を盛られる事は知らなかったと証言したな?」
肘置きにもたれ、頬に手の甲を当ててサイモンが言う。
「畏れながら、その通りです。私はマーク・スペンサーやゴヴァン・ニューマンがリザ・クロフォード侯爵令嬢を『排除』しようとしている事は本当に知りませんでした」
「では何故侍女や使用人たちに手を回した?」
「…リザ嬢がロイド殿下の婚約者で居たくなくなる様に嫌がらせをすると、聞いていて」
「リザ嬢を『排除』しようとしていたのはマーク・スペンサーやゴヴァンではなく、ローズ・エンジェル男爵令嬢だろう?」
サイモンはクリストファーを見下げるように睨む。
「それは…」
クリストファーは俯いて目を泳がせる。
「庇うのか」
「いいえ。本当にローズ…ローズ・エンジェル男爵令嬢から直接は何も聞いていないのです」
「なるほど。ではボーデン侯爵にローズ・エンジェル男爵令嬢を引き会わせたのは?」
「ローズが『ロイド殿下と結婚するために上位貴族の養女になりたい』と言ったので、引き会わせるだけならと…」
「それで第二王子派のボーデン侯爵はロイドの婚約者を『排除』し、養女をロイドと婚姻させようとした訳か」
サイモンはため息混じりに言うと、オリーに視線を向けた。
「オリー」
「はい」
俯いていたオリーが顔を上げる。視線は床に落ちたままだ。
「オリーはローズ・エンジェル男爵令嬢がリザ嬢を陥れようとしていた事、知っていたな?」
「姉上?」
クリストファーがオリーの方へ向く。
「…はい。クリスの動きが不審で、色々調べて…エリック・ドイルがニューマン先生に薬を渡した事を知りました」
「オリーはあの侍女がゴヴァンの恋人だと知っていたな」
「はい。しかしそれが死に至る毒とは思いませんでした。『下剤』と説明して渡していたので…」
ホリーの目から涙が溢れる。
「何かが起こって、それがローズ・エンジェル男爵令嬢の差し金だと、広く皆に知れれば良いと思いました。私は…あの『ヒロイン』を排除したかったんです…」
「…オリーがそう考えたのも、私のせいだな」
サイモンはため息を吐くと、オリーの前に跪く。
「殿下、いけません」
王太子が臣下の前で跪くなど。オリーはそう言うが、サイモンは首を振りオリーの手を取った。
「…私が、憎いか?」
オリーの目から涙がポロポロと落ちる。
「……憎い…です。強制力とは言え、他の女性に御心を傾ける殿下が…憎いのに…好きで…苦しいです…」
「そうだな。オリー…済まない」
サイモンはそっとオリーの指に口付けた。
-----
「距離を置くって、オリー様?」
クロフォード邸にリザの見舞いに来たオリーは「しばらくサイモン殿下と距離を置く事になった」と言った。
オリーは少し笑って言う。
「やっぱり、他の女性が心にいる人と一緒にいるのは辛いじゃない?だから、いつかサイモン殿下の御心から『彼女』が居なくなるまで逃げる事にしたの」
「でも…」
「それがいつになるのか、そんな日が来るのかどうか、分からないのは承知の上よ。王太子妃教育は今までよりゆっくりにしてもらうわ。王宮に行ってもサイモン殿下とは会わない。定例茶会の時だけ会う事に決めたの」
オリーは意外にさっぱりした表情だ。
「いつか、もしも私に他に想う方ができたら、こちらから婚約解消を申し入れる許可ももらったわ」
「ふふ。オリー様はお強いですね」
「リザ様は…ロイド殿下とは?」
リザは俯いて苦笑いする。
「あの時から会っていません。連絡もありません。まあ以前もこんな感じだったんですけどね」
「…ごめんなさいリザ様」
「オリー様?」
オリーはスカートを握りしめる。
「私…リザ様に薬を……知っていたのに…止めなくてごめんなさい」
「オリー様はあれが毒になる物だと知らなかったんですもの。私はこうして元気になりましたし、もう良いんです」
「リザ様…」
「それより私、このままだとシナリオ通り婚約破棄されると思うんですけど、ヒロインを苛めてないのに国外追放されますかね?」
「リザ様!?」
「ああでも一時期殿下と仲良くなり掛けたので、それを嫌がらせと取られたら…」
「待って、リザ様。婚約破棄って…」
リザはオリーに向かって微笑んだ。
「…知ってるんです。殿下が毎日のようにヒロインと会っている事」
「サイモン殿下、この度は誠に申し訳ありませんでした」
サイモンの執務室で、ソファ座るサイモンと、その前にオリーとクリストファーが跪いていた。
「…クリス、お前はリザ嬢に薬を盛られる事は知らなかったと証言したな?」
肘置きにもたれ、頬に手の甲を当ててサイモンが言う。
「畏れながら、その通りです。私はマーク・スペンサーやゴヴァン・ニューマンがリザ・クロフォード侯爵令嬢を『排除』しようとしている事は本当に知りませんでした」
「では何故侍女や使用人たちに手を回した?」
「…リザ嬢がロイド殿下の婚約者で居たくなくなる様に嫌がらせをすると、聞いていて」
「リザ嬢を『排除』しようとしていたのはマーク・スペンサーやゴヴァンではなく、ローズ・エンジェル男爵令嬢だろう?」
サイモンはクリストファーを見下げるように睨む。
「それは…」
クリストファーは俯いて目を泳がせる。
「庇うのか」
「いいえ。本当にローズ…ローズ・エンジェル男爵令嬢から直接は何も聞いていないのです」
「なるほど。ではボーデン侯爵にローズ・エンジェル男爵令嬢を引き会わせたのは?」
「ローズが『ロイド殿下と結婚するために上位貴族の養女になりたい』と言ったので、引き会わせるだけならと…」
「それで第二王子派のボーデン侯爵はロイドの婚約者を『排除』し、養女をロイドと婚姻させようとした訳か」
サイモンはため息混じりに言うと、オリーに視線を向けた。
「オリー」
「はい」
俯いていたオリーが顔を上げる。視線は床に落ちたままだ。
「オリーはローズ・エンジェル男爵令嬢がリザ嬢を陥れようとしていた事、知っていたな?」
「姉上?」
クリストファーがオリーの方へ向く。
「…はい。クリスの動きが不審で、色々調べて…エリック・ドイルがニューマン先生に薬を渡した事を知りました」
「オリーはあの侍女がゴヴァンの恋人だと知っていたな」
「はい。しかしそれが死に至る毒とは思いませんでした。『下剤』と説明して渡していたので…」
ホリーの目から涙が溢れる。
「何かが起こって、それがローズ・エンジェル男爵令嬢の差し金だと、広く皆に知れれば良いと思いました。私は…あの『ヒロイン』を排除したかったんです…」
「…オリーがそう考えたのも、私のせいだな」
サイモンはため息を吐くと、オリーの前に跪く。
「殿下、いけません」
王太子が臣下の前で跪くなど。オリーはそう言うが、サイモンは首を振りオリーの手を取った。
「…私が、憎いか?」
オリーの目から涙がポロポロと落ちる。
「……憎い…です。強制力とは言え、他の女性に御心を傾ける殿下が…憎いのに…好きで…苦しいです…」
「そうだな。オリー…済まない」
サイモンはそっとオリーの指に口付けた。
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「距離を置くって、オリー様?」
クロフォード邸にリザの見舞いに来たオリーは「しばらくサイモン殿下と距離を置く事になった」と言った。
オリーは少し笑って言う。
「やっぱり、他の女性が心にいる人と一緒にいるのは辛いじゃない?だから、いつかサイモン殿下の御心から『彼女』が居なくなるまで逃げる事にしたの」
「でも…」
「それがいつになるのか、そんな日が来るのかどうか、分からないのは承知の上よ。王太子妃教育は今までよりゆっくりにしてもらうわ。王宮に行ってもサイモン殿下とは会わない。定例茶会の時だけ会う事に決めたの」
オリーは意外にさっぱりした表情だ。
「いつか、もしも私に他に想う方ができたら、こちらから婚約解消を申し入れる許可ももらったわ」
「ふふ。オリー様はお強いですね」
「リザ様は…ロイド殿下とは?」
リザは俯いて苦笑いする。
「あの時から会っていません。連絡もありません。まあ以前もこんな感じだったんですけどね」
「…ごめんなさいリザ様」
「オリー様?」
オリーはスカートを握りしめる。
「私…リザ様に薬を……知っていたのに…止めなくてごめんなさい」
「オリー様はあれが毒になる物だと知らなかったんですもの。私はこうして元気になりましたし、もう良いんです」
「リザ様…」
「それより私、このままだとシナリオ通り婚約破棄されると思うんですけど、ヒロインを苛めてないのに国外追放されますかね?」
「リザ様!?」
「ああでも一時期殿下と仲良くなり掛けたので、それを嫌がらせと取られたら…」
「待って、リザ様。婚約破棄って…」
リザはオリーに向かって微笑んだ。
「…知ってるんです。殿下が毎日のようにヒロインと会っている事」
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