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番外編2
2
「サイモン殿下、私との婚約を解消してください」
オリーがそう言った時、サイモンには一瞬オリーの言葉の意味が理解できなかった。
婚約を解消?私とオリーの?
「…何故だ?」
自分でも驚く程低い声が出た。
「……」
押し黙るオリーに重ねて問う。
「噂通り、想う男がいるのか?」
サイモンの問いにオリーは首を横に振った。
「言えないと?」
「…申し訳ありません」
サイモンの胸に黒い塊が生まれた。
「私との婚約を解消して、その男と結婚するつもりか?」
「…いいえ」
「公爵令嬢と結婚できる身分ではない?」
「……」
「そうなのか?」
サイモンはオリーの方へ差し出し掛けた手を押し留める。
俯いているオリーの表情は見えない。
「…いいえ」
小さな声が震えていた。
-----
サイモンは
「理由を言うまで婚約解消はしない」
と言ってテラスを出て行った。
オリーは誰もいないテラスでへなへなと座り込む。
わざとオリーに想い人がいると噂を流した。貴族令息、執事や料理人、庭師、家庭教師の兄弟、出入りの商人と色々な噂にしたのは相手を特定されないためだ。
「…サイモン殿下、お怒りだったわ…」
オリーは自分の両手で顔を覆った。手が震えている。
私に想い人ができたなら、こちらから婚約解消を申し入れる権利をくださいと、約束していたから。
でもすんなり婚約解消とはならなかった。
婚約者の心変わりなど、殿下の自尊心を傷付けたのだろうか?
嫉妬?
「それはないわね…」
オリーは呟く。
ああでも軽く「そうか。分かった」と言われると思っていたのに、殿下は怒ってくださった。婚約者の浮気に怒りが湧いただけであっても、あっさり「そうか」と言われるより百倍嬉しい。
子供ができないからという理由を告げれば、サイモンはオリーを気遣うだろう。場合によってはオリーを正妃にし、側妃を娶ると言うかも知れない。
しかしオリーにとっては、側妃を娶り、側妃へ渡る様子も、その側妃が懐妊し、子を産む処も、自分の産めないサイモンの子供さえ、すぐ側で見続けるのは、辛すぎるのだ。
「いっそ私を嫌いになって…」
サイモンの前では我慢していた涙が落ちた。
数日後、ロイドの執務室にオリーはいた。
王太子妃教育の予定が変更されたとの連絡がなかったので一応王宮を訪れた。そして何事もなかったかのように講師が現れ、いつも通りに勉強を終え廊下を歩いていると定例茶会にやって来たリザと会ったのだ。
リザと共にロイドの執務室の応接セットに座ると、リザが心配そうに言った。
「あれからサイモン殿下は何かおっしゃいました?」
リザにもオリーの噂を流す協力をしてもらっていた。詳しい事情はリザには話したがロイドは知らないだろう。
「何も。教育もいつも通りでしたし…」
サイモン殿下は何をお考えなのだろう?まだお怒りなのだろうか?
私から殿下と話した方が良いの?
でも、理由は言えないもの。
「…兄上は落ち込んでおられた」
ロイドが言う。
「「え?」」
オリーとリザは同時に言うと、ロイドを見た。
「落ち込んで…?」
オリーが首を傾げる。いつも穏やかに微笑むサイモンがオリーに婚約解消と言われて落ち込む、その様子が想像できなかった。
「いつもの微笑みがない」
「「ええ!?」」
「誰だって落ち込む事くらいあるだろう」
「それはそうだけど…想像がつかないわ」
リザが言い、オリーは頷く。
「兄上とて完璧な人間ではないしな」
サイモン殿下は完璧な人間ではない…?
その時、執務室の扉が勢いよく開いた。
「オリー」
サイモンが執務室へ早足で入って来る。見た事のない焦ったような怒っているような表情だ。
「サイモン殿下!?」
「……」
サイモンは無言でオリーの腕を掴むと、ロイドの執務室を出る。
「殿下、どこへ?」
オリーの言葉には応えず、サイモンは無言で歩いて行く、そしてサイモンの私室へ入ると扉へオリーを押し付けた。
「サイモン殿下、私との婚約を解消してください」
オリーがそう言った時、サイモンには一瞬オリーの言葉の意味が理解できなかった。
婚約を解消?私とオリーの?
「…何故だ?」
自分でも驚く程低い声が出た。
「……」
押し黙るオリーに重ねて問う。
「噂通り、想う男がいるのか?」
サイモンの問いにオリーは首を横に振った。
「言えないと?」
「…申し訳ありません」
サイモンの胸に黒い塊が生まれた。
「私との婚約を解消して、その男と結婚するつもりか?」
「…いいえ」
「公爵令嬢と結婚できる身分ではない?」
「……」
「そうなのか?」
サイモンはオリーの方へ差し出し掛けた手を押し留める。
俯いているオリーの表情は見えない。
「…いいえ」
小さな声が震えていた。
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サイモンは
「理由を言うまで婚約解消はしない」
と言ってテラスを出て行った。
オリーは誰もいないテラスでへなへなと座り込む。
わざとオリーに想い人がいると噂を流した。貴族令息、執事や料理人、庭師、家庭教師の兄弟、出入りの商人と色々な噂にしたのは相手を特定されないためだ。
「…サイモン殿下、お怒りだったわ…」
オリーは自分の両手で顔を覆った。手が震えている。
私に想い人ができたなら、こちらから婚約解消を申し入れる権利をくださいと、約束していたから。
でもすんなり婚約解消とはならなかった。
婚約者の心変わりなど、殿下の自尊心を傷付けたのだろうか?
嫉妬?
「それはないわね…」
オリーは呟く。
ああでも軽く「そうか。分かった」と言われると思っていたのに、殿下は怒ってくださった。婚約者の浮気に怒りが湧いただけであっても、あっさり「そうか」と言われるより百倍嬉しい。
子供ができないからという理由を告げれば、サイモンはオリーを気遣うだろう。場合によってはオリーを正妃にし、側妃を娶ると言うかも知れない。
しかしオリーにとっては、側妃を娶り、側妃へ渡る様子も、その側妃が懐妊し、子を産む処も、自分の産めないサイモンの子供さえ、すぐ側で見続けるのは、辛すぎるのだ。
「いっそ私を嫌いになって…」
サイモンの前では我慢していた涙が落ちた。
数日後、ロイドの執務室にオリーはいた。
王太子妃教育の予定が変更されたとの連絡がなかったので一応王宮を訪れた。そして何事もなかったかのように講師が現れ、いつも通りに勉強を終え廊下を歩いていると定例茶会にやって来たリザと会ったのだ。
リザと共にロイドの執務室の応接セットに座ると、リザが心配そうに言った。
「あれからサイモン殿下は何かおっしゃいました?」
リザにもオリーの噂を流す協力をしてもらっていた。詳しい事情はリザには話したがロイドは知らないだろう。
「何も。教育もいつも通りでしたし…」
サイモン殿下は何をお考えなのだろう?まだお怒りなのだろうか?
私から殿下と話した方が良いの?
でも、理由は言えないもの。
「…兄上は落ち込んでおられた」
ロイドが言う。
「「え?」」
オリーとリザは同時に言うと、ロイドを見た。
「落ち込んで…?」
オリーが首を傾げる。いつも穏やかに微笑むサイモンがオリーに婚約解消と言われて落ち込む、その様子が想像できなかった。
「いつもの微笑みがない」
「「ええ!?」」
「誰だって落ち込む事くらいあるだろう」
「それはそうだけど…想像がつかないわ」
リザが言い、オリーは頷く。
「兄上とて完璧な人間ではないしな」
サイモン殿下は完璧な人間ではない…?
その時、執務室の扉が勢いよく開いた。
「オリー」
サイモンが執務室へ早足で入って来る。見た事のない焦ったような怒っているような表情だ。
「サイモン殿下!?」
「……」
サイモンは無言でオリーの腕を掴むと、ロイドの執務室を出る。
「殿下、どこへ?」
オリーの言葉には応えず、サイモンは無言で歩いて行く、そしてサイモンの私室へ入ると扉へオリーを押し付けた。
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