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「やっぱり私を助けてくれたのはアレン…殿下なのね?」
「少なくともパトリシア様を寮の部屋へお連れくださったのはアレン殿下でしたね。お二人が入れ替わる扮装をしておられない限りは」
マールは紅茶を淹れながら頷く。
「パトリシア様はロード様に連れ出されてから寮の部屋で目覚めるまでの記憶があまりないんですか?」
「そうなの…」
ロード様が何か言っていたけど、あまり良く覚えていないのよね。思い出せそうで思い出せないと言うか。
「首に、痕を付けられたのも覚えてないんですか?」
マールの言葉に、パトリシアは首に手をやってキスマークのある所を隠す。
あれから三日、痕はかなり薄くなったがパトリシアは首の詰まった服しか着られていない。
「…何となく。痛かったし」
それに、多分ロードに唇へキスをされた。ものすごく嫌だと思ったから覚えてる。
この痕、きっとアレン殿下には見られた。
アレン殿下に「好き」と告げて、嫌そうな表情をされたのは…現実?夢?
夢なら良いのに。多分現実だろうけど…
「そろそろお支度しますか?」
「…うん」
マールがそう言い、パトリシアは一拍置いてから頷く。
「王宮へ行くのにそんな暗い顔をされるの珍しいですね」
「…まあね」
夏季休暇に入って初めてアランからお茶に誘われた。と、言うより、パトリシアが三年生になってから初めてだ。
今日もアレン殿下とエリザベス様と一緒のお茶会なのかしら?
…アレン殿下に会いたくない。ううん。どんな顔をして会えば良いのかわからない。
「そんな暗い顔をなさるのは、アラン殿下とご婚約された頃以来です」
「え?私その頃暗い顔してた?」
「してましたよ」
そっか。アレン殿下から、私が婚約するのはアランだって聞いた頃かも。
あの時もアレン殿下に会いたくないと思ってたな…
-----
王宮に着いて案内されたテラスには、テーブルに二人分のお茶の準備がされていた。
「二人分…」
テラスに出る扉の前で思わず立ち止まる。
今日はアレン殿下とエリザベス様とは一緒じゃないの?
…もしかして、私が変な事を言ったから、避けられてる?
「お待たせパティ」
後ろから声。
……?
パトリシアが振り向くと、にっこりと笑う、アレンが居た。
髪が短い。鬘?
「ア…レ…」
アレンはパトリシアにしかわからないように自分の唇の前で人差し指を立てる。
あ。アレン殿下がアランの振りをしているんだわ。気付いてない振りをしろと言う事ね。
「アレンは今日は部屋で舞踏会の報告書を書いてるんだ」
「そ…そうで…そうなのね」
ぎこちなく返事をすると、アレンがふっと笑う。
アランと瓜二つ。何も違わないのに、何でアレン殿下が笑うだけで嬉しくなっちゃうんだろう。
侍女がお茶を淹れて下がり、二人だけになる。
「…今日はどうされたんですか?」
パトリシアがおずおずと聞くと、アレンは真剣な表情になる。
「アランに話すように…話してくれないか?」
「え?あ、はい…」
「今日は俺がパティに聞きたい事があってアランに頼んでパティを呼び出したんだ」
「そう」
「舞踏会の日の事、覚えているか?」
…やっぱりその話なのね。アレン殿下は私を連れ出したのがロード様だと知っているのかしら?
「それが…ロード様が何か色々話してたように思うんだけど…私、頭に靄がかかった感じで、あまり覚えてなくて…」
「ロード様?」
アレンの眉がピクリと動く。
「え?」
「…いや、何か覚えている事はあるのか?」
覚えているのは、唇にキスをされて嫌だと思った事。首筋に痕を着けられた時痛かった事。アレン殿下に「好き」と告げて嫌そうな顔をされた事。
どれも、言えない。
「……」
パトリシアは俯いて首を横に振る。
「そうか…パティを舞踏会から連れ出したのはロード・フェアリで間違いないな?」
「間違いないわ」
こくんと頷く。
「そうか」
「ロード様は何であんな事をしたのかしら?」
「わからん…あの男が関わったのはマリアン・ノックス、エドワード・ラングトン、ベアトリス・バーンズ。ジュリアナ・キャメロンもあの男に特別な感情がありそうだし、ライネル・コールウェンと、アランとも親しくしているようだ。兄上にも会いに来たそうだし…エリザベスにも」
「え?エリザベス様?」
「ああ、エリザベスが一人の時に話し掛けられる事があるらしい」
エリザベスはあの男に「殴って欲しい」と言われたと言っていたな。一体どう言う趣味なんだ。
アレンはエリザベスの言葉を思い出し、眉を顰めて言った。
「そうなんだ…」
アレン殿下は、ロード様がエリザベス様に話し掛けるだけで、そんなに不機嫌そうな顔をするのね。
「やっぱり私を助けてくれたのはアレン…殿下なのね?」
「少なくともパトリシア様を寮の部屋へお連れくださったのはアレン殿下でしたね。お二人が入れ替わる扮装をしておられない限りは」
マールは紅茶を淹れながら頷く。
「パトリシア様はロード様に連れ出されてから寮の部屋で目覚めるまでの記憶があまりないんですか?」
「そうなの…」
ロード様が何か言っていたけど、あまり良く覚えていないのよね。思い出せそうで思い出せないと言うか。
「首に、痕を付けられたのも覚えてないんですか?」
マールの言葉に、パトリシアは首に手をやってキスマークのある所を隠す。
あれから三日、痕はかなり薄くなったがパトリシアは首の詰まった服しか着られていない。
「…何となく。痛かったし」
それに、多分ロードに唇へキスをされた。ものすごく嫌だと思ったから覚えてる。
この痕、きっとアレン殿下には見られた。
アレン殿下に「好き」と告げて、嫌そうな表情をされたのは…現実?夢?
夢なら良いのに。多分現実だろうけど…
「そろそろお支度しますか?」
「…うん」
マールがそう言い、パトリシアは一拍置いてから頷く。
「王宮へ行くのにそんな暗い顔をされるの珍しいですね」
「…まあね」
夏季休暇に入って初めてアランからお茶に誘われた。と、言うより、パトリシアが三年生になってから初めてだ。
今日もアレン殿下とエリザベス様と一緒のお茶会なのかしら?
…アレン殿下に会いたくない。ううん。どんな顔をして会えば良いのかわからない。
「そんな暗い顔をなさるのは、アラン殿下とご婚約された頃以来です」
「え?私その頃暗い顔してた?」
「してましたよ」
そっか。アレン殿下から、私が婚約するのはアランだって聞いた頃かも。
あの時もアレン殿下に会いたくないと思ってたな…
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王宮に着いて案内されたテラスには、テーブルに二人分のお茶の準備がされていた。
「二人分…」
テラスに出る扉の前で思わず立ち止まる。
今日はアレン殿下とエリザベス様とは一緒じゃないの?
…もしかして、私が変な事を言ったから、避けられてる?
「お待たせパティ」
後ろから声。
……?
パトリシアが振り向くと、にっこりと笑う、アレンが居た。
髪が短い。鬘?
「ア…レ…」
アレンはパトリシアにしかわからないように自分の唇の前で人差し指を立てる。
あ。アレン殿下がアランの振りをしているんだわ。気付いてない振りをしろと言う事ね。
「アレンは今日は部屋で舞踏会の報告書を書いてるんだ」
「そ…そうで…そうなのね」
ぎこちなく返事をすると、アレンがふっと笑う。
アランと瓜二つ。何も違わないのに、何でアレン殿下が笑うだけで嬉しくなっちゃうんだろう。
侍女がお茶を淹れて下がり、二人だけになる。
「…今日はどうされたんですか?」
パトリシアがおずおずと聞くと、アレンは真剣な表情になる。
「アランに話すように…話してくれないか?」
「え?あ、はい…」
「今日は俺がパティに聞きたい事があってアランに頼んでパティを呼び出したんだ」
「そう」
「舞踏会の日の事、覚えているか?」
…やっぱりその話なのね。アレン殿下は私を連れ出したのがロード様だと知っているのかしら?
「それが…ロード様が何か色々話してたように思うんだけど…私、頭に靄がかかった感じで、あまり覚えてなくて…」
「ロード様?」
アレンの眉がピクリと動く。
「え?」
「…いや、何か覚えている事はあるのか?」
覚えているのは、唇にキスをされて嫌だと思った事。首筋に痕を着けられた時痛かった事。アレン殿下に「好き」と告げて嫌そうな顔をされた事。
どれも、言えない。
「……」
パトリシアは俯いて首を横に振る。
「そうか…パティを舞踏会から連れ出したのはロード・フェアリで間違いないな?」
「間違いないわ」
こくんと頷く。
「そうか」
「ロード様は何であんな事をしたのかしら?」
「わからん…あの男が関わったのはマリアン・ノックス、エドワード・ラングトン、ベアトリス・バーンズ。ジュリアナ・キャメロンもあの男に特別な感情がありそうだし、ライネル・コールウェンと、アランとも親しくしているようだ。兄上にも会いに来たそうだし…エリザベスにも」
「え?エリザベス様?」
「ああ、エリザベスが一人の時に話し掛けられる事があるらしい」
エリザベスはあの男に「殴って欲しい」と言われたと言っていたな。一体どう言う趣味なんだ。
アレンはエリザベスの言葉を思い出し、眉を顰めて言った。
「そうなんだ…」
アレン殿下は、ロード様がエリザベス様に話し掛けるだけで、そんなに不機嫌そうな顔をするのね。
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