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不自然だわ。
パトリシアは複数の部屋を跨ぐ大きなバルコニーから湖を眺めながらため息を吐く。
私は小さい頃からほぼ毎年この保養地を訪れているし、アランと婚約してからエリザベス様と一緒にここを訪れるのは四回目。
それでも、アレン殿下とエリザベス様が常に二人きりで行動してるのは今年が初めてだわ。
夕食の席で四人が顔を合わせるだけで、あとは別行動。
…もちろん婚約者同士だもの、ある程度は当たり前なのよ。私だってわかってるんだけど…
でも去年まではいつも四人で…今年急に、となるとやっぱりアレン殿下が私を避けようとしてるとしか思えない。
「パティ?」
アランが自室からバルコニーに出て来て、パトリシアと並んで湖を眺める。
「ねえアラン」
「ん?」
「…来年はアレン殿下とエリザベス様とは別々の日程の方が良いんじゃない?」
「ああ…まあでもそうなるかもな。俺が薬学研究所に入れたとしたら休みも合わなくなるだろうし」
「そっか」
今年がアレン殿下と一緒に過ごせる最後の休暇になるのね…
なのに避けられてエリザベス様と仲良く行動してるのを遠目に見るだけ。なまじ姿を見掛けるから、余計に気になるし…
「パティ、予定より早いけど一緒に王都に戻るか?こっちに居ても俺が草とか木とか、薬効のありそうな物を探し歩くのに付き合わせてばかりだし、俺も学園の薬草畑をライネルに任せきりで心苦しいし」
珍しい植物は刺繍の図案の参考になるし、嫌いじゃないんだけど…でもここに居るのも辛いし。
アランの言葉に、パトリシアは頷いた。
夕食の席で、アランはアレンに王都に帰ると告げる。
「明日?」
「ああ。俺とパティは先に帰ってるから、アレンとエリザベス嬢は予定通りゆっくりすれば良い」
その日の夜、パトリシアの部屋のバルコニーに通じるガラス扉をコンコンと叩く音が小さく聞こえた。
「…?」
パトリシアは荷物を整理していた手を止めて、カーテンの隙間からそっとバルコニーを覗いて見る。
すると、そこにアレンが立っていた。
パトリシアは急いで、でも静かに扉を開けた。
「…どうしたんですか?」
久しぶりにアレンと正面から見つめ合ったパトリシアは、ドキドキと鳴る自分の心臓を手で押さえた。
アレンは眉を寄せて真剣な表情でパトリシアを見ている。
「…パトリシア、帰らないでくれないか?」
「え?」
「王都にはロードが居る。俺はパトリシアをロードに会わせたくない」
「アレン殿下」
「…あいつが兄上に会いに来て、アランに会いに来たパトリシアと王宮で会うかも知れないし、フレデリック兄さんに会いに行けば家でも…」
嫌そうに眉を顰めるアレン。
「でも休み中ずっとこっちに居る訳じゃないですし、秋期が始まれば嫌でも顔を合わせるし…」
「……」
その通りだ。
でも俺が王都に居ない時に、パトリシアを王都に置きたくない。目が届かない、いざと言う時に手も届かない状況は作りたくないんだ。かと言って、エリザベスも居るから俺も一緒に王都に戻る事はできないし。
「アランも居るし、大丈夫ですよ?」
少し笑って小首を傾げるパトリシア。
そうか。パトリシアはアラン一緒に帰りたいのか…
「…出来るだけロードと顔を合わせないように充分気を付けろよ?」
「はい。ご心配お掛けして申し訳ありません」
「いや…心配するのは当然だ。大事な幼なじみだからな。パトリシアは」
アレンは笑う。それは自嘲気味な笑顔だった。
-----
「まあビビアンさん、それは本当なの?」
「はい。ジュリアナ様、これを見てください」
ジュリアナの家を訪れたビビアンは、ソファの向かいに座るジュリアナに一枚の紙を差し出した。
「絵?」
その紙にはギザギザとした葉を繁らせた植物が描かれていた。
「この植物は外国が原産で…輸入は禁止されています」
「これを…ロード様たちが学園の花壇の一部で栽培しているの?」
「はい。私、実際見て確認して来ました。そして何故これが輸入禁止なのかと言うと、この植物の実から搾り出した液が人体にある作用をもらたすからなんです」
「作用?」
ビビアンはジュリアナをじっと見る。
「惚れ薬に、なるんです」
「……え」
ジュリアナは目を見開いた。
「…それで、ビビアンさんはロード様がこの『惚れ薬』を使っていると言うのね?」
ジュリアナはビビアンを睨む様に見据えた。
「はい。そうでなければ、マリアン先生もベアトリス様も…ジュリアナ様だって、婚約者がおられるのに他の人を…それも同じ人を同時に好きになるなんて普通の状況では考えられません」
「……」
「それに女性だけではなく、エドワード様や…ライネルも…皆が皆、ロード・フェアリに惹かれるなど、明らかにおかしい」
確かに、私は婚約者のフレデリック様をお慕いしていたわ。それなのに一目でロード様に惹かれて…
ロード様がベアトリス様やエドワード様と関係を持ったと知って気が狂いそうなくらい嫉妬もした。もしもこの胸に渦巻く、この感情が「惚れ薬」の作用だとしたら…?
ジュリアナは膝の上に置いた手でスカートをぎゅっと握り締めた。
不自然だわ。
パトリシアは複数の部屋を跨ぐ大きなバルコニーから湖を眺めながらため息を吐く。
私は小さい頃からほぼ毎年この保養地を訪れているし、アランと婚約してからエリザベス様と一緒にここを訪れるのは四回目。
それでも、アレン殿下とエリザベス様が常に二人きりで行動してるのは今年が初めてだわ。
夕食の席で四人が顔を合わせるだけで、あとは別行動。
…もちろん婚約者同士だもの、ある程度は当たり前なのよ。私だってわかってるんだけど…
でも去年まではいつも四人で…今年急に、となるとやっぱりアレン殿下が私を避けようとしてるとしか思えない。
「パティ?」
アランが自室からバルコニーに出て来て、パトリシアと並んで湖を眺める。
「ねえアラン」
「ん?」
「…来年はアレン殿下とエリザベス様とは別々の日程の方が良いんじゃない?」
「ああ…まあでもそうなるかもな。俺が薬学研究所に入れたとしたら休みも合わなくなるだろうし」
「そっか」
今年がアレン殿下と一緒に過ごせる最後の休暇になるのね…
なのに避けられてエリザベス様と仲良く行動してるのを遠目に見るだけ。なまじ姿を見掛けるから、余計に気になるし…
「パティ、予定より早いけど一緒に王都に戻るか?こっちに居ても俺が草とか木とか、薬効のありそうな物を探し歩くのに付き合わせてばかりだし、俺も学園の薬草畑をライネルに任せきりで心苦しいし」
珍しい植物は刺繍の図案の参考になるし、嫌いじゃないんだけど…でもここに居るのも辛いし。
アランの言葉に、パトリシアは頷いた。
夕食の席で、アランはアレンに王都に帰ると告げる。
「明日?」
「ああ。俺とパティは先に帰ってるから、アレンとエリザベス嬢は予定通りゆっくりすれば良い」
その日の夜、パトリシアの部屋のバルコニーに通じるガラス扉をコンコンと叩く音が小さく聞こえた。
「…?」
パトリシアは荷物を整理していた手を止めて、カーテンの隙間からそっとバルコニーを覗いて見る。
すると、そこにアレンが立っていた。
パトリシアは急いで、でも静かに扉を開けた。
「…どうしたんですか?」
久しぶりにアレンと正面から見つめ合ったパトリシアは、ドキドキと鳴る自分の心臓を手で押さえた。
アレンは眉を寄せて真剣な表情でパトリシアを見ている。
「…パトリシア、帰らないでくれないか?」
「え?」
「王都にはロードが居る。俺はパトリシアをロードに会わせたくない」
「アレン殿下」
「…あいつが兄上に会いに来て、アランに会いに来たパトリシアと王宮で会うかも知れないし、フレデリック兄さんに会いに行けば家でも…」
嫌そうに眉を顰めるアレン。
「でも休み中ずっとこっちに居る訳じゃないですし、秋期が始まれば嫌でも顔を合わせるし…」
「……」
その通りだ。
でも俺が王都に居ない時に、パトリシアを王都に置きたくない。目が届かない、いざと言う時に手も届かない状況は作りたくないんだ。かと言って、エリザベスも居るから俺も一緒に王都に戻る事はできないし。
「アランも居るし、大丈夫ですよ?」
少し笑って小首を傾げるパトリシア。
そうか。パトリシアはアラン一緒に帰りたいのか…
「…出来るだけロードと顔を合わせないように充分気を付けろよ?」
「はい。ご心配お掛けして申し訳ありません」
「いや…心配するのは当然だ。大事な幼なじみだからな。パトリシアは」
アレンは笑う。それは自嘲気味な笑顔だった。
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「まあビビアンさん、それは本当なの?」
「はい。ジュリアナ様、これを見てください」
ジュリアナの家を訪れたビビアンは、ソファの向かいに座るジュリアナに一枚の紙を差し出した。
「絵?」
その紙にはギザギザとした葉を繁らせた植物が描かれていた。
「この植物は外国が原産で…輸入は禁止されています」
「これを…ロード様たちが学園の花壇の一部で栽培しているの?」
「はい。私、実際見て確認して来ました。そして何故これが輸入禁止なのかと言うと、この植物の実から搾り出した液が人体にある作用をもらたすからなんです」
「作用?」
ビビアンはジュリアナをじっと見る。
「惚れ薬に、なるんです」
「……え」
ジュリアナは目を見開いた。
「…それで、ビビアンさんはロード様がこの『惚れ薬』を使っていると言うのね?」
ジュリアナはビビアンを睨む様に見据えた。
「はい。そうでなければ、マリアン先生もベアトリス様も…ジュリアナ様だって、婚約者がおられるのに他の人を…それも同じ人を同時に好きになるなんて普通の状況では考えられません」
「……」
「それに女性だけではなく、エドワード様や…ライネルも…皆が皆、ロード・フェアリに惹かれるなど、明らかにおかしい」
確かに、私は婚約者のフレデリック様をお慕いしていたわ。それなのに一目でロード様に惹かれて…
ロード様がベアトリス様やエドワード様と関係を持ったと知って気が狂いそうなくらい嫉妬もした。もしもこの胸に渦巻く、この感情が「惚れ薬」の作用だとしたら…?
ジュリアナは膝の上に置いた手でスカートをぎゅっと握り締めた。
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