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ライネルが学園の正門へと駆け付けると、同じく駆け付けて来たロードと鉢合わせた。
「ロード!お前あの薬を…」
掴み掛からんとするライネルにロードは両手の平を顔の横に上げる。
「待て!今はそれどころじゃないだろ?」
そうだ。今はビビアンだ。
「チッ」
ライネルは舌打ちしてライネルから手を離すと、花壇の隅の薬草畑に向けて走り出した。
校舎の影から薬草畑のある庭へ出ると、薬草畑からもうもうと煙が上がっているのが目に入る。
人垣と煙の向こうにビビアンが立っている後姿が見えた。
「ビビアン!」
ライネルの声に虚な表情のビビアンが振り向く。
「…ライネル」
ビビアンは油を撒いて薬草畑に火を付けたらしい。端から順に着火し、少しずつ油を撒きながら焼ける範囲を広げているようだ。
「やめろ!ビビアン!危ないから早くこっちへ来い!」
近付こうとして、周りを取り巻いている人に止められる。
「離せ!」
「駄目だ!焼かれた植物から有毒な気体が出ているんだ」
「なっ…」
「あの娘も、もう目が虚ろだろう?」
ライネルが改めてビビアンを見ると、目の焦点も合っておらず、口元からは涎も流れていた。
「…ライネル。どうして…?」
「ビビアン!」
尚もビビアンに近付こうとして、周囲の人に羽交い締めにされる。
「ライネル…貴方その男に惚れ薬を飲まされたのよ。だから私に冷たくするんでしょう?」
虚な目でライネルと、その後ろに立つロードを見て、囁く様に言うビビアン。
「ビビアン!こっちへ来い!」
ライネルは叫ぶように言う。
俺の幼なじみの恋人。気が強い所がかわいくて大好きな…
「やあだ。あの草を焼かなきゃ…また惚れ薬作られちゃうもの」
その言葉に、ライネルとロードはハッとする。
ビビアンの視線の先にはシミヒプノが生い茂っていた。
もしや、明細を、引き出しから抜き出したのは、ビビアンなのか?
あの明細には仕入れたのはシミヒプノではなく、ヒプティと書いてあった。
どちらも輸入禁止だが、ヒプティよりシミヒプノの方が悪質な特性があるので、密輸が露見するならまだヒプティの方がマシだと思い、ライネルは明細を改竄していたのだ。
「やめろ!頼む!ビビアン」
必死で叫ぶライネル。
そんなライネルを呆然と眺めていたロードの肩がぐいっと引かれた。
ロードが視線を移すと、アランがロードの肩を掴んでいる。
「ロード、これはどう言う事だ?」
「…アラン殿下」
「あの、ビビアン嬢が焼こうとしているのはヒプティだろう?実から搾り出した液は確かに動悸と発熱を促す作用がある。惚れ薬と思われるのもわかるが…葉や茎を燃しても問題はない筈だ。なのに何故ライネルはあんなに必死で止めようとしてるんだ?」
真剣なアラン。ロードは思わず目を逸らす。
「いえ…あれは…シミヒプノなんです」
呟く様に言う。アランは驚愕の表情を浮かべた。
「シミヒプノは…燃やせば…神経系のガスが発生するんじゃ…」
「……」
「っ!」
俯くロードを突き飛ばすように肩を離し、アランは駆け出した。
ヒプティはヒプノティズムと言う言葉を元に名付けられた植物。ヒプノティズムとは催眠術の事で、実を搾った液を数滴摂取すれば、激しい動悸を覚え身体が熱を持った状態になる。本来は気付け薬として使うのだが、摂取した者が目の前の居る者に「恋」をしている、と錯覚させる、所謂「惚れ薬」の様な使い方もされる薬草だ。
シミヒプノはヒプティに「類似」「相似」という意味のシミラー言う言葉を付けた植物。ヒプティに似た植物と言う意味だ。
実を搾った液は睡眠麻酔薬として使用される。
更に幹を燃焼させると有毒で致死率の高い気体が発生するため、見た目がそっくりで見分けがつかないヒプティと共に輸入禁止となっているのだ。
ビビアンは手に持っていた水筒の様な容器をシミヒプノの上に掲げて、油を垂らした。
「やめろ、やめてくれ!」
ライネルの叫び声に二、三歩ビビアンが後ずさった時、油に炎が引火し、一気に燃え上がる。
スローモーションの様に、ゆっくりと後ろに倒れるビビアン。
地面に着く前にビビアンを抱き留めたのは、人垣をすり抜けて駆け寄ったアランだ。
「アラン殿下!」
「殿下だ!」
周りの人々が口々に叫ぶ。
アランはビビアンを引き摺る様にしてフラフラとライネルの前に来ると、そのまま、崩れ落ちる様に、倒れた。
「アラン!」
「ビビアン」
ライネルがビビアンに取り縋ると、ロードがアランに駆け寄りながら叫ぶ。
「神経ガスだ!離れろ!」
人垣が騒めき、わらわらと人が離れて行く。
ロードとライネルも、周りの人の手を借りながら倒れたビビアンとアランを燃え盛る花壇から離れた位置まで移動させた。
ライネルが学園の正門へと駆け付けると、同じく駆け付けて来たロードと鉢合わせた。
「ロード!お前あの薬を…」
掴み掛からんとするライネルにロードは両手の平を顔の横に上げる。
「待て!今はそれどころじゃないだろ?」
そうだ。今はビビアンだ。
「チッ」
ライネルは舌打ちしてライネルから手を離すと、花壇の隅の薬草畑に向けて走り出した。
校舎の影から薬草畑のある庭へ出ると、薬草畑からもうもうと煙が上がっているのが目に入る。
人垣と煙の向こうにビビアンが立っている後姿が見えた。
「ビビアン!」
ライネルの声に虚な表情のビビアンが振り向く。
「…ライネル」
ビビアンは油を撒いて薬草畑に火を付けたらしい。端から順に着火し、少しずつ油を撒きながら焼ける範囲を広げているようだ。
「やめろ!ビビアン!危ないから早くこっちへ来い!」
近付こうとして、周りを取り巻いている人に止められる。
「離せ!」
「駄目だ!焼かれた植物から有毒な気体が出ているんだ」
「なっ…」
「あの娘も、もう目が虚ろだろう?」
ライネルが改めてビビアンを見ると、目の焦点も合っておらず、口元からは涎も流れていた。
「…ライネル。どうして…?」
「ビビアン!」
尚もビビアンに近付こうとして、周囲の人に羽交い締めにされる。
「ライネル…貴方その男に惚れ薬を飲まされたのよ。だから私に冷たくするんでしょう?」
虚な目でライネルと、その後ろに立つロードを見て、囁く様に言うビビアン。
「ビビアン!こっちへ来い!」
ライネルは叫ぶように言う。
俺の幼なじみの恋人。気が強い所がかわいくて大好きな…
「やあだ。あの草を焼かなきゃ…また惚れ薬作られちゃうもの」
その言葉に、ライネルとロードはハッとする。
ビビアンの視線の先にはシミヒプノが生い茂っていた。
もしや、明細を、引き出しから抜き出したのは、ビビアンなのか?
あの明細には仕入れたのはシミヒプノではなく、ヒプティと書いてあった。
どちらも輸入禁止だが、ヒプティよりシミヒプノの方が悪質な特性があるので、密輸が露見するならまだヒプティの方がマシだと思い、ライネルは明細を改竄していたのだ。
「やめろ!頼む!ビビアン」
必死で叫ぶライネル。
そんなライネルを呆然と眺めていたロードの肩がぐいっと引かれた。
ロードが視線を移すと、アランがロードの肩を掴んでいる。
「ロード、これはどう言う事だ?」
「…アラン殿下」
「あの、ビビアン嬢が焼こうとしているのはヒプティだろう?実から搾り出した液は確かに動悸と発熱を促す作用がある。惚れ薬と思われるのもわかるが…葉や茎を燃しても問題はない筈だ。なのに何故ライネルはあんなに必死で止めようとしてるんだ?」
真剣なアラン。ロードは思わず目を逸らす。
「いえ…あれは…シミヒプノなんです」
呟く様に言う。アランは驚愕の表情を浮かべた。
「シミヒプノは…燃やせば…神経系のガスが発生するんじゃ…」
「……」
「っ!」
俯くロードを突き飛ばすように肩を離し、アランは駆け出した。
ヒプティはヒプノティズムと言う言葉を元に名付けられた植物。ヒプノティズムとは催眠術の事で、実を搾った液を数滴摂取すれば、激しい動悸を覚え身体が熱を持った状態になる。本来は気付け薬として使うのだが、摂取した者が目の前の居る者に「恋」をしている、と錯覚させる、所謂「惚れ薬」の様な使い方もされる薬草だ。
シミヒプノはヒプティに「類似」「相似」という意味のシミラー言う言葉を付けた植物。ヒプティに似た植物と言う意味だ。
実を搾った液は睡眠麻酔薬として使用される。
更に幹を燃焼させると有毒で致死率の高い気体が発生するため、見た目がそっくりで見分けがつかないヒプティと共に輸入禁止となっているのだ。
ビビアンは手に持っていた水筒の様な容器をシミヒプノの上に掲げて、油を垂らした。
「やめろ、やめてくれ!」
ライネルの叫び声に二、三歩ビビアンが後ずさった時、油に炎が引火し、一気に燃え上がる。
スローモーションの様に、ゆっくりと後ろに倒れるビビアン。
地面に着く前にビビアンを抱き留めたのは、人垣をすり抜けて駆け寄ったアランだ。
「アラン殿下!」
「殿下だ!」
周りの人々が口々に叫ぶ。
アランはビビアンを引き摺る様にしてフラフラとライネルの前に来ると、そのまま、崩れ落ちる様に、倒れた。
「アラン!」
「ビビアン」
ライネルがビビアンに取り縋ると、ロードがアランに駆け寄りながら叫ぶ。
「神経ガスだ!離れろ!」
人垣が騒めき、わらわらと人が離れて行く。
ロードとライネルも、周りの人の手を借りながら倒れたビビアンとアランを燃え盛る花壇から離れた位置まで移動させた。
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