双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

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 保養地から戻る途中のアレンは、急に息苦しさを感じ、馬車の座席に倒れ込んだ。
「アレン殿下!?」
 向かいの席に座っていた侍従のジェイが慌ててアレンの前に跪く。
「…はっ」
 胸を押さえて息を小さく吐く。
「胸が苦しいのですか?」
 ジェイの言葉に首を振る。
「…大…丈夫…だ…」
「しかし」
「恐らく…アラン…に…何か…」
 途切れ途切れに言いながら息を整えるアレン。
「双子の共鳴ですか?」
 幼い頃からアレンとアランは互いに相手の怪我などを察知していた。アレンが足に切り傷を負えばアランも同じ箇所が痛み、アランが風邪で熱を出せばアレンも頭痛を覚えた。
 双子の多くが感じた事があると言うシンパシーだ。
「ああ…ただこんなに…大きな共鳴は始めてだ。アランが…大きな怪我をしたか…それとも…」
 息が苦しい。
 アランに一体何が起きたんだ?
「急いで王都に戻りましょう」
 ジェイはアレンに水を差し出しながら言った。

-----

「風がなく、有毒ガスが拡散しなかったのだけが救いだな…」
 執務室で、レスターは大きなため息を吐きながら言った。
「そうだな。風があれば、学園の外にも被害が出たかも知れん」
 フレデリックが執務机の前に立って言う。

 薬草畑が燃やされた事件から今日で五日。
 神経ガスが発生したため、消火のために近付く事もできず、鎮火を確認したのは丸一日経った後、ガスが留まっていない事を確認し、焼け跡に人が近付く事ができたのがようやく昨日だ。
 
「アランは…どうなんだ?」
 フレデリックが言うと、レスターは額に手を当てて俯く。
「…まだ意識が戻らない」
「アレンは?」
「アランの状態に共鳴してるらしく、伏せったままだ」
 アレンは翌日王都に到着し、王城の医療棟に運び込まれたアランと対面した途端、また息苦しさを訴えて倒れてしまったのだ。
 レスターの前で口には出せないが、もしアランがこのまま…亡くなってしまったとしたら、アレンはどうなってしまうのだろう?
 フレデリックはそう考えて、心の中で「縁起でもない事を考えるな」と、自分を叱咤した。
「パトリシアはずっとアランに付いていてくれているらしいな」
 パトリシアは最低限の睡眠や食事などの時以外、ずっとアランの病室に居る。
「…パットの方が参ってしまうからそろそろ付き添いを変わってやらなくてはな」
「ああ。そうしてやってくれ」

 レスターが机に肘をつき、額を押さえて呟く。
「ビビアン・ミルトンの事もあるから、外でアランを心配する姿を見せられないのが…辛いな」

 ビビアンは、王城の医療棟に運び込まれた時にはすでに息をしておらず、蘇生を行なったが…戻る事はなかった。
「ビビアン・ミルトンが亡くなったのはアランのせいではないだろう?」
 フレデリックがそう言うと、レスターは机に突っ伏した。
「それは…ここではそう言えても、外では言えない」
 むしろ、アランは神経ガスが発生しているのを知っていたのに、ビビアン・ミルトンを助けに走ったと言うのに。しかしあの薬草を育てていたのはアランたちで、しかもそれは違法の薬草で…
「……」
 反論しようとしたが、フレデリックも黙り込んだ。

「…ライネル・コーンウェルが痛々しくて見ていられなかったな」
 葬儀の時の事か。
 レスターはアランの代わりに葬儀に参列したのだ。
「茫然自失で『ビビアン』『ごめん』とずっと呟いて…ビビアン・ミルトンの家族も何も言えない位に憔悴していた」
 違法の薬草を輸入し、生育し、かつ人的被害を与えたとして、ライネルとロードは警察から事情聴取をされた。アランも意識が戻れば聴取される。
 ロードは「アランもライネルも自分もあれがヒプティではなくシミヒプノだった事を知らなかった」と主張していると聞いたが…
「ロードは?葬儀に出ていたのか?今はどうしてるんだ?」
「葬儀には出ていなかったな。体調不良と聞いたが、ビビアン・ミルトンの家族に参列を断られたのかも知れん。今は事情聴取に警察へ出向く時以外は家に篭っているらしい」
 机に伏せたままレスターは言う。
「フレデリック…」
「ん?」
「もしも、嫉妬に駆られて火を放ったのがミッチェルだったら?…そう考えると…私は心底怖くなった」
「…ああ、そうだな」
「どんなに惹かれても、もうロードに会うのはやめる」
「そうだな。それが良い」
 フレデリックは机に伏せたレスターの髪をクシャクシャと撫でた。


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