双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

文字の大きさ
33 / 79

32

しおりを挟む
32

「ロード…」
「お前、何乙ゲーのヒロインの名前を呟いてるんだ?」
 大学時代からの友人が、俺の手からリーフレットを取り上げて言う。
「ヒロイン?」
 俺はただ、友人の部屋に置いてあったリーフレットにが載っていたから…
「俺の会社が作った乙女ゲーム…恋愛シュミレーションゲームのチラシだぞ」
「ゲーム?ヒロインって言ったけど、これ男だろ?」
 友人が持つリーフレットの中央に描かれたピンクの髪の人物を指差す。
「お、わかる?でも男だけど結構かわいいだろ?」
 わかるも何も、俺、この男を、知って…

「このゲームアプリ、発売したばっかりなんだよ。何とシリーズ三作目だからこそのR指定アリ!」
「アール…」
「ヒロイン男だから、男がプレイしても結構おもしろいと思うぞ。お前このゲームやる?やるなら一つ教えてやるよ」

 スマホの画面に見慣れたロード
 そして、現れた攻略対象者たち。
「アレン…それに兄上。それから…」
 俺だ。画面に映る紫の髪、紫の瞳の男。これは前世の俺。アランだ。

 俺は前世でこのゲームの世界に居たのか?
 ゲームの登場人物だったから、あんなに強烈にロードに惹かれたのか。設定通りに。
 こんなものので俺はパティを不幸なまま、死なせてしまったのか!?
 理不尽な怒りと虚しさが胸の中に渦巻いた。

「パティ…」
 画面に現れたパトリシアに、目が釘付けになった。
 もっと見たい。パトリシアを。

【あっ…ん…ロード…本当にこれでアランに近付かないでくれるの?】
 パトリシアが、ロードと…
【もちろん。ふふ。目を瞑って、俺をアランだと思っても良いよ?】
 パトリシアの長くて綺麗な脚を掴んでロードが笑う。
【ん…あっ…あ…アラン…ああ、アラン…】
 パトリシアの上気した頬に涙が伝う。
【パティ。かわいいなあ…】
【アラン…好き…】
「っ!」
 思わず電源ボタンを押した。
 黒い画面に「俺」が写る。
 アランとは似ても似つかない今の俺。

 パトリシアを見るにはアランのルートに入らなくてはいけない。でもアランのルートに入れば悪役令嬢のパトリシアがアランと結ばれる事はない。もちろん悪役令嬢である以上、ロードと結ばれる事もない。
 幸せになるパティを見たいのに。

「そう言えば、あいつ、何か言ってたよな…」
 ふとこのゲームの制作会社に勤める友人の言葉を思い出す。
「確か…コンプリートボーナス?だったか?」

「何だ久々に連絡して来たと思ったらコンプリートボーナスって何だっけ?かよ」
「いいだろ。お前んトコのゲームしてやってんだから」
「お買い上げありがとうございます。あのな、ヒロインが、攻略対象者全員、さらに悪役令嬢全員とコンプリートボーナスが発生するんだ。これネットとかにも出回ってない社内秘情報なんだからお前も拡散するなよ」
 本当にコンプリートした奴から口コミで広がるのは構わんけどな。と友人は続ける。
「する?」
「R18ゲームなんだからセックスに決まってるだろ。卒業パーティーまでに全員と、だから結構難易度高いぞ」
「どんなボーナスなんだ?」
「攻略対象者と悪役令嬢が入れ替わる。但し一組だけ」
「…え?」
「例えば、レスターを悪役令嬢にして断罪追放して、ミッチェルを攻略対象者としてヒロインと結婚させる事ができる」

 じゃあコンプリートすれば、アランとパティを入れ替えて、ヒロインとパティが結ばれて、幸せになるのが見れるのか?

 そして、その日の帰り道に事故に遭った。

-----

 何で今度はヒロインに生まれ変わってるんだ?

 フェアリ伯爵家の養子に、と言われた日、俺は前世と、前前世の記憶を取り戻した。

 いや、違う。ヒロインで良かったんだ。
 前前世のアランは薬学には全く興味がなかったし、何もかもが同じではないけど…
 コンプリートすれば、アランとパトリシアを入れ替えて、今度こそパトリシアを幸せにする事ができる。

 なのに。
 悪役令嬢が死ぬなんて展開があって良いのか?

 輸入禁止の薬草を栽培していた事、燃やされたのは想定外とは言え、それが原因で人的被害が出た事。俺もアランもライネルも植えたのはヒプティだと思っていて、実はシミヒプノだったとは知らなかったと警察で言ったが、今は呆然自失状態のライネルが正気に戻ったら「実は知っていた」と本当の事を話してしまうかも知れない。ビビアンを失って俺を恨んでいれば「ロードにシミヒプノを仕入れろと強要された」と、言うかも…
 それに、もしもアランの意識がこのまま戻らなければ…婚約者のパトリシアはどうなる?
 意識が戻ったとしても、王子が法を犯した事に違いはない。そうなればパトリシアは…

「もうコンプリートは百パー無理なのだけは確かだな…」
 だとしたら、俺は、どうする?




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。

芹澤©️
恋愛
王太子の元へ側室として嫁いだ伯爵令嬢は、初夜の晩に宣言した。 「申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。」

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

真実の愛を見つけた王太子殿下、婚約破棄の前に10年分の王家運営費1.5億枚を精算して頂けます?

ぱすた屋さん
恋愛
「エルゼ、婚約を破棄する! 私は真実の愛を見つけたのだ!」 建国記念祭の夜会、王太子アルフォンスに断罪された公爵令嬢エルゼ。 だが彼女は泣き崩れるどころか、事務的に一枚の書類を取り出した。 「承知いたしました。では、我が家が立て替えた10年分の王家運営費――金貨1億5800万枚の精算をお願いします」 宝石代、夜会費、そして城の維持費。 すべてを公爵家の「融資」で賄っていた王家に、返済能力などあるはずもない。 「支払えない? では担保として、王都の魔力供給と水道、食料搬入路の使用を差し止めます。あ、殿下が今履いている靴も我が家の備品ですので、今すぐ脱いでくださいね?」 暗闇に沈む王城で、靴下姿で這いつくばる元婚約者。 下着同然の姿で震える「自称・聖女」。 「ゴミの分別は、淑女の嗜みですわ」 沈みゆく泥舟(王国)を捨て、彼女を「財務卿」として熱望する隣国の帝国へと向かう、爽快な論理的ざまぁ短編!

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

処理中です...