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一番古い記憶の自分は第三王子。
婚約者のパトリシアは幼なじみで、よく笑って、かわいいし、双子の兄はしっかり者で、こちらも婚約者と仲が良く、俺は、将来に対して何の心配もしていなかったんだ。
それが、あの男が現れて、何もかもが変わってしまった。
ロード・フェアリ。
あの男に初めて会った時の気持ちをどう表現したら良いのかわからない。
とにかく視線がその男に固定され、外す事ができない。心臓が全身に響く位に鼓動した。
ロードに微笑まれるとその唇に口付けたくなり、口付ければもっと触れたくなる。
俺は王子で婚約者もいる。同性にこんな気持ちになるなんてあり得ない。そう考えて、衝動に耐えた。
「アラン、ロードを好きなの?」
パトリシアが信じられないと言う表情で言う。
違う。いや、違うのか?
この衝動が「好き」と言う感情なのか?
「そうなのね」
パトリシアが淋しそうに笑った。
俺が好きなのはパティだ。幼い頃からずっと。
パトリシアへの気持ちに変わりはないのに、ロードに対する感情がその気持ちの上から塗り込められ、塗り潰される感覚。
「アランにこれ以上近付かないで」
男子寮に忍び込んでロードと対峙したパトリシアは言う。
「…俺はアランの従者になり、第三王子の側で一生安泰な暮らしをしたいんだ。アランとパトリシアが予定通り結婚しても、俺を愛人として従者にしてくれると言うなら、それでも構わないよ」
そう言って不遜に笑うロード。
「…アランを共有するなんて、嫌よ」
「じゃあアランの従者を諦めるとして、パトリシアはその見返りに俺に何をくれる?」
「デンゼル侯爵家で貴方を雇うわ」
「雇われるだけでは弱いなあ。俺は、パトリシアの愛人としてパトリシアの従者になるのでも、良いよ?」
パトリシアの前でニッコリと笑うロード。
「私、の…」
「アランに近付かなければ良いんだろ?」
パトリシアはこくんと頷く。
「じゃあ、約束した証拠をくれる?」
パトリシアの顎を掴むと上を向かせて顔を近付ける。
「…キス?」
「キスじゃあ証拠にはならないな。…パトリシアの純潔を、頂戴?」
「い、今ここで?」
「もちろん」
唇が触れるかと言う距離で微笑んで言うロードに、パトリシアはウロウロと視線を泳がせて…やがて真っ直ぐにロードを見据えた。
「…いいわ」
二つの影が重なり、ベッドへと倒れ込んだ。
俺のパティ。
どうして。
「一生アランが他の人に心を奪われているのを見続けるより、汚れた者として切り捨てられる方がまだ良いと思ったの…」
パトリシアは涙を流しながら言った。
ロードは「アランが俺を側に置いてくれるなら、もうパトリシアとは寝ないよ」と言う。
それじゃあ何のためにパティは…
自分の都合だけの酷い男と、酷い女だ。
ああ、それでも俺はロードとパトリシアが好きで好きで堪らない。
一番酷い男なのは、俺だ。
結果として、俺はパトリシアとの婚約を解消しなかった。
予定通りパトリシアと結婚し、ロードを侍従として側に置いた。
ただ、俺は一度もパトリシアとは…できなかった。
パトリシアが言った通り、パトリシアが汚れて見えたからだ。
その代わりにロードの部屋へ毎晩のように通った。
パトリシアが影で泣いているのも知っていた。パトリシアのためを思えば、婚約は解消するべきだった。そうわかっていても、そうしたらパトリシアは他の男と結婚してしまうと思えば、それもやはりできなかったと思う。
弱くて、酷い、俺。
後悔を抱えたまま数年を過ごす内、パトリシアが病に倒れた。
パトリシアに懇願されて、遠い土地への転地療養を許す。
元気になって戻って来たら、今度こそパトリシアと良い夫婦になりたい。
そう思っていた俺に届いたのは、訃報だった。
一人、遠い地で、親兄弟にも友人にも、夫にも看取られず、淋しく旅立たせてしまった。
襲って来たのは、ただただ、深い深い喪失感だった。
一番古い記憶の自分は第三王子。
婚約者のパトリシアは幼なじみで、よく笑って、かわいいし、双子の兄はしっかり者で、こちらも婚約者と仲が良く、俺は、将来に対して何の心配もしていなかったんだ。
それが、あの男が現れて、何もかもが変わってしまった。
ロード・フェアリ。
あの男に初めて会った時の気持ちをどう表現したら良いのかわからない。
とにかく視線がその男に固定され、外す事ができない。心臓が全身に響く位に鼓動した。
ロードに微笑まれるとその唇に口付けたくなり、口付ければもっと触れたくなる。
俺は王子で婚約者もいる。同性にこんな気持ちになるなんてあり得ない。そう考えて、衝動に耐えた。
「アラン、ロードを好きなの?」
パトリシアが信じられないと言う表情で言う。
違う。いや、違うのか?
この衝動が「好き」と言う感情なのか?
「そうなのね」
パトリシアが淋しそうに笑った。
俺が好きなのはパティだ。幼い頃からずっと。
パトリシアへの気持ちに変わりはないのに、ロードに対する感情がその気持ちの上から塗り込められ、塗り潰される感覚。
「アランにこれ以上近付かないで」
男子寮に忍び込んでロードと対峙したパトリシアは言う。
「…俺はアランの従者になり、第三王子の側で一生安泰な暮らしをしたいんだ。アランとパトリシアが予定通り結婚しても、俺を愛人として従者にしてくれると言うなら、それでも構わないよ」
そう言って不遜に笑うロード。
「…アランを共有するなんて、嫌よ」
「じゃあアランの従者を諦めるとして、パトリシアはその見返りに俺に何をくれる?」
「デンゼル侯爵家で貴方を雇うわ」
「雇われるだけでは弱いなあ。俺は、パトリシアの愛人としてパトリシアの従者になるのでも、良いよ?」
パトリシアの前でニッコリと笑うロード。
「私、の…」
「アランに近付かなければ良いんだろ?」
パトリシアはこくんと頷く。
「じゃあ、約束した証拠をくれる?」
パトリシアの顎を掴むと上を向かせて顔を近付ける。
「…キス?」
「キスじゃあ証拠にはならないな。…パトリシアの純潔を、頂戴?」
「い、今ここで?」
「もちろん」
唇が触れるかと言う距離で微笑んで言うロードに、パトリシアはウロウロと視線を泳がせて…やがて真っ直ぐにロードを見据えた。
「…いいわ」
二つの影が重なり、ベッドへと倒れ込んだ。
俺のパティ。
どうして。
「一生アランが他の人に心を奪われているのを見続けるより、汚れた者として切り捨てられる方がまだ良いと思ったの…」
パトリシアは涙を流しながら言った。
ロードは「アランが俺を側に置いてくれるなら、もうパトリシアとは寝ないよ」と言う。
それじゃあ何のためにパティは…
自分の都合だけの酷い男と、酷い女だ。
ああ、それでも俺はロードとパトリシアが好きで好きで堪らない。
一番酷い男なのは、俺だ。
結果として、俺はパトリシアとの婚約を解消しなかった。
予定通りパトリシアと結婚し、ロードを侍従として側に置いた。
ただ、俺は一度もパトリシアとは…できなかった。
パトリシアが言った通り、パトリシアが汚れて見えたからだ。
その代わりにロードの部屋へ毎晩のように通った。
パトリシアが影で泣いているのも知っていた。パトリシアのためを思えば、婚約は解消するべきだった。そうわかっていても、そうしたらパトリシアは他の男と結婚してしまうと思えば、それもやはりできなかったと思う。
弱くて、酷い、俺。
後悔を抱えたまま数年を過ごす内、パトリシアが病に倒れた。
パトリシアに懇願されて、遠い土地への転地療養を許す。
元気になって戻って来たら、今度こそパトリシアと良い夫婦になりたい。
そう思っていた俺に届いたのは、訃報だった。
一人、遠い地で、親兄弟にも友人にも、夫にも看取られず、淋しく旅立たせてしまった。
襲って来たのは、ただただ、深い深い喪失感だった。
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