双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

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 溶ける。
 心も身体もぐずぐずに溶けて…いっそ失くなってしまえば良いのに。

「はっ。パティ…はあ…大丈夫か?」
「…ん」
 頷いたけど、引き攣れるような痛みと圧迫感…でも…
 アレンが私の中にいる。
 それだけで、このまま死んでも良いくらいに、幸せ。
「はあ…パティ…パティ…」
 ぎゅうっと強く抱きしめられる。
 何度も、何度も、名前を呼ばれた。たくさん、たくさん、痕をつけられた。アレンが私を独占したがってるみたいに。
「アレン…好き」
 素肌の背中に腕を伸ばしてぎゅっと抱きついた。
「ああ…パティ…俺も」

 ゆるゆると揺さぶられるように動きだす。
「ん…は…あ…」
 引き攣れる痛みが強くなる。痛い方が良い。これが現実だってわかるから。
「あ…あ…」
「パティ…かわいい…」
 息を弾ませるアレン。ああ、愛しい。
 眉を寄せる切ない顔…今は私だけの…
「あっ…ああ…」
 動きが早くなって、痛みとは違う熱さを覚えた。
「あ…あ…あ…」
 動きに合わせて声が出る。
「はっ…パティ…はあ…パティ…俺の…」
「…あっ…ああ…好き…アレン…」
 蕩ける。
 理性も、思考も、どろどろに溶けてしまう。

「…ふ……」
 涙の粒が次々と頬を流れた。
「パティ?泣いてるのか?」
 アレンが心配そうに見ている。
 首を横に振るけど、涙が止まらない。
「…後悔しているのか?」
 違うの。
 強く首を振ると、アレンに抱きつく。
「…ありがと…アレン」
「パティ?」
「思い出をくれてありがとう。…私の事好きな振りしてくれてありがとう」
「…振り?」
 アレンが驚いた表情でパトリシアを見る。
「うん」
 パトリシアが頷くと、アレンは目を見開いた。
 …?
「まさか、俺が『パティが好きだ』と言うのが『振り』だと思ってるのか?」
「…え?」
「思ってるんだな」
 アレンが憮然とした表情になり、パトリシアは慌てる。
「…私が余りにもしつこくてかわいそうだから…せめて私を好きな振りをしてくれてた…ん…じゃない…の?」
 憮然とした表情から、怒りの表情に変わった。
「…俺はそんなに慈悲深い人間じゃない」
 低い声で言うとアレンは身体を起こす。
「あ、嫌…」
 離れてしまう。
 もう二度と繋がる事はできないのに。

-----

 怒らせた。
 淡々と服装を整えていくアレンを視線の端に捉えながらパトリシアは絶望の底にいた。
 アレンに、嫌われた。
 涙が静かに頬を伝う。
 もう、あんな風に名前を呼んでもらえない。
 きっとこのまま部屋を出て行って、二度と会えない。

 …私も、服を着なきゃ…
 ノロノロとソファの背に掛けられた服に手を伸ばすと、二の腕の内側にあるキスマークが目に入った。
 こんな所にも…
「う…」
 嗚咽が漏れた。

「パティ?」
 アレンがパトリシアの方を見る。
 泣いているのを知られてしまった…またアレンを困らせる。
「ごめん」
 アレンは困った顔で言うと、ソファの背に掛けられたブラウスをパトリシアの肩に掛ける。パトリシアがすんすんと鼻を鳴らしながらブラウスに袖を通すと、アレンはパトリシアの前に座り、ブラウスのボタンを上から順に留めていった。
 私…子供みたい。
 泣いて、脅して、怒らせて、服を着せてもらう。きっとアレンも呆れ果ててるわ。
 一番下までボタンを留めると、アレンは右手でパトリシアの腕を引き、左手を髪の毛に差し込むと後頭部を押さえてキスをする。
「……」
 目を瞬かせるパトリシアをギュッと抱きしめた。
「…?」
「泣かせるつもりはなかったんだ。ただパティが俺を信じてくれないのが悔しくて…ごめん」
 優しく背中を撫でられる。
「…正直に言えば、だとパティをめちゃくちゃにしそうだったから…だからってパティを傷付けて放っておくなんて最低だな。俺は」
「…かった…のに」
「ん?」
「めちゃくちゃに…しても良かったのに……むしろ…されたかった…」
 アレンの鎖骨に頬をつけてパトリシアが言う。
「……次は、そうする」
 アレンはパティを抱きしめる手に力を入れる。
「え?」
 次?
「パティを抱くって決めた時点で、もう絶対離さないと決意してたからな」
「…え?」
「修道院には行かせない。ずっと俺の側にいてくれ」
 腕を緩めてパトリシアの顔を覗き込む。
 優しい目。
 コツンと額と額を合わせる。
「好きだ」
「……」
「パティが好きだ」
「…アレン…」
「昔から、ずっと好きだ」
 本当に?
 パトリシアの目に涙が浮かぶ。
「俺の、パティ…」
 ゆっくりと唇が重なった。


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