双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

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「アレン、そういえば、息が楽になってる…」
 朝は少し呼吸が浅かったのに。
「ああ。今は普段通りだ。本当にパティにはわかるんだな」
 ソファに座るアレンは、自分の足の間に座らせたパトリシアを後ろから緩く抱いて言う。
「…気持ち悪くない?」
「気持ち悪い?」
「私…アレンが髪を切って付け毛をつけてるのも…朝、気付いてた…」
 パトリシアが俯いて言うと、アレンは目を見開いた。
「本当に?」
「本当。さすがに自分でもちょっと…と思うの」
「何故?俺は嬉しい」
 パトリシアをぎゅっと抱きしめて髪の毛に頬擦りをする。
「…本当?」
「本当」
 少し振り向いてアレンを見るパトリシアの頬にキスをする。

「あ、パティ。これ」
 アレンは身体を捻ってソファの背に掛けていた自分の制服の上着を手に取ると、内ポケットに手を入れる。
 取り出した折り畳まれた紙をパトリシアの手に乗せる。
「これ…」
「舞踏会の日にパティを探していて落ちてるのを見つけたんだ」
 畳まれたままの紙を手の平に乗せて、パトリシアは俯く。アレンから見えるパトリシアの耳と頬が赤い。
 後ろから手を伸ばしてアレンは紙を開く。「亜蓮」とぎこちなく書かれた文字が現れた。
「……ロード様に薬を飲まされて…とにかく何か手掛かりを残さなきゃと思って…」
「これ、いつも持ってたのか?」
 こくんと頷くパトリシア。
 俺にしかわからない字で俺の名前が書かれた紙。俺に見せるつもりはなかったとしても、やっぱりこんなの、熱烈なラブレターでしかないよな。
 赤くなった首筋、ブラウスの襟に辛うじて隠れる位置に一際赤いアレンのつけた標が見える。
「複雑な字なのによく覚えたな」
「だから…もう我ながら…」
「パティ」
 パトリシアの頬に手を当てて振り向く様に自分に顔を向けさせる。
 赤い頬、潤んだ瞳。ああ、かわいくて堪らない。
「パティが俺を好きで、嬉しい」
 また唇を重ねた。

「そうだわ。アレン、ロード様にも前世の記憶があるみたいなの」
 アレンにもたれて目を閉じていたパトリシアが急に思い出した様に言った。
「前世?」
「…それが、前世ではロード様がアランだったと言ってて」
「アラン?」
 そういえば、連行される時パティに向かって「なあ俺アランなんだよ!?」と叫んでいたな。
「『コンプリートできないなら強引に』とか『あの時のロードも転生者だったのかな?』とか…意味はわからないんだけど、そう言ってたの」
「コンプリート?」
 ゲームに関係する言葉?あのゲームでコンプリート?
 攻略対象者を全員攻略したとしてもハーレムエンドになるだけだろうが…
「パティ」
「はい」
「…とりあえず、ロードの名前を呼ばないでくれ」
「え?」
「不愉快だ」
 驚いた表情でアレンを見るパトリシア。アレンは唇を引き結ぶ。
「…それは…嫉妬?」
「悪いか」
 少し拗ねた口調のアレン。
「ううん。嬉しい」

-----
 
 ソファで後ろから抱きしめられて、髪を撫でられて、時々何かを話して、時々キスをする。
 そんな風に、どの位時間が経っただろうか?
 ずっとこうして二人で居たい。
 でも…
「…ねえ、アレン、私が言うのも…なんだけど、戻らなくて…大丈夫なの?」
「ん?ああ…」
 本当に今更だけど、アレンは生徒会長だし、あんなに皆が倒れていた状況で…私なんかに構ってる場合じゃなかったんじゃ…
「副会長が会長代理を勤めてるから大丈夫だ」
 副会長って…ジュリアナ様?でもジュリアナ様も講堂に居たなら倒れてる筈よね…?
 首を傾げるパトリシアの髪を一束指に絡めながら面白そうにアレンは言う。
「パティ、俺の呼吸が楽になったのは何故だと思う?」
「え?」
 アレンはアランに共鳴して苦しくなったんだから、楽になったと言う事は…
「あ!アラン!?」
 パトリシアは振り向きながら言う。
「正解」
「え?アランの目が覚めたの?」
「ああ。朝俺たちが病室を出て行ったすぐ後らしい」
「そうなの…良かった」
 パトリシアはほっと息を吐く。

「それでアランが副会長として?」
 確かに、アランなら、び、媚薬に慣れる練習してたとロード様…フェアリ様が言っていたし、あの場でも動けるわ。
「副会長として、じゃないな」
「え?」
「付け毛をつけて、アレンとして動いている」
「…え?」
 確かに付け毛をつければ見た目はアレンだけど…
「多少言動が違っても、そうそう見破られないと思うぞ」
 ニヤッとアレンは笑った。


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