双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

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「俺が前世の事を思い出したのは十四歳の誕生日だった」
「うん」
 アレンはパトリシアを緩く抱きしめたまま話し出した。
「十四の誕生日に閨教育があったと言ったろ?」
「うん…」
「その時座学だけでなく、男性の王族が実際に…女性に触れる事…知ってるよな?」
「…うん」
 妃教育の時、そう聞いた。
 妊娠の可能性のない女性と、顔も見えない状態で、声も発せず、とも聞いたし、女性の身体、自分の身体について知る事や、実際のその行為を知っていないと、誘惑などに抗えないから、とも聞いた。
 …それでも胸が痛かったけれど。
「その時、俺はパティを呼んだ」
「え?」
 パトリシアは思わずアレンを見上げる。
「『パティ』と頭の中でその女性を呼んだ。ずっと頭の中の俺の相手はパティだったんだ」
「……」
 良い話……では…ないわよね。でもそんな時にも私を想ってくれたなら嬉しいと思ってしまう私って結構重症なんだろうな…
「そして射精の瞬間に前世を思い出した。パティと、前世の景色と、ゲームの画面の記憶が、こう…ぶわっと広がる感じでグルグルと巡って…俺は気を失ったんだ」
 アレンは頭の側で両手を広げる様な仕草をした。
「一気に思い出したから熱暴走した感じだな」
 閨教育の時に前世を思い出しから、思い出したきっかけを教えてくれなかったのね。

「目が覚めて、頭を整理して、自分が転生した事、ここがゲームの世界だと言う事、そして、パティはアランと婚約する事を理解して…俺は、諦めてしまったんだ」
 パトリシアの髪をゆっくり撫でるアレン。
「ゲームでだったから、それが当たり前で運命なんだと。俺がパティを好きなのが間違ってるんだと思ってしまった。パティはゲームの通りにアランを好きなんだろう、時間が経てばきっと自分の気持ちも薄れるだろうと…」
「うん…」
「…しかし、全然薄れなくて、とにかくパティと距離を取らなくてはならないと考えたんだ」
「それで、夏季休暇のお茶会や保養地で別行動を?」
「そうだ。アランといるパティを見たくなかった」
「私も…舞踏会の時『好き』って言ったらアレンが嫌そうな顔をしたから…困らせたんだと思って…だから避けられてるんだと…エリザベス様と楽しそうにしてるアレンを見てるのが辛かった」
 パトリシアはアレンの首元に頬を押し付ける。
「あれは…あの時パティは俺をアランだと思ってそう言ったんだと思ったから…俺の名前を書いた紙を拾って、もしかしてパティも俺の事を好きなのか?と思った後だったし、余計に…だから『嫌そう』じゃなくて『辛そう』の間違いだな。あの時はパティが正確に俺たちを見分けられてるって知らなかったんだ。ごめんな?」
「ううん…」
 パトリシアの髪に頬をつける。
「パティ」
「ん?」
「俺はもう絶対にパティを諦めないから」
「…私も…アレンを諦めない」
 パトリシアがアレンの首元に頬擦りをすると、アレンはパトリシアの背中に回した腕に力を入れた。

-----

「ロードは?また部屋に篭っているのか?」
 フェアリ伯爵家の家族用リビングに入って来たロードの義父が言う。
「ええ」
 フェアリ伯爵夫人でロードの義母がソファに座って言う。
「やっと家に戻って来て、春からは懲役監に収監されると言うのに…困った奴だな」
「ええ…戻って来てから話し掛けてもあまり返事もしてくれなくて…」
 義母が困った様に言うと、義父も頷く。

「ロードが伯爵位を継げないならまた養子を取らなくてはな…」
 義父がため息混じりに言うと、義母が言いにくそうに
「旦那様…」
 と声を掛けた。
「うん?」
「あの…まだはっきりとはわからないのですが…私…月のものが…」
 もじもじとしながら言う義母に、義父は大きく目を見開いた。
「子が…?」
「まだはっきりとは…」
「そっそうか。医者だな。医者を…」
「旦那様、もう少し日が経たないとわかりませんわ」
 ソワソワしてソファから立ち上がり掛けた義父を義母が止める。
「ああ、そうなのか。と、とにかく身体を厭うてくれ」

 リビングの扉の外に立っていたロードは、その会話を聞いて静かに扉の側を離れた。
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