51 / 79
50
しおりを挟む
50
「パティの王子様の登場か」
ロードはソファにもたれながら、自分の部屋に入って来た男を見て皮肉気に笑う。
「…アレン・ルーセントだ」
男は被っていた茶色の髪の鬘と、茶色の色付きの眼鏡を外すと、ロードを睨むように見ながら言う。
紫の髪と瞳の男がロードの前に立った。
「アレン?」
ロードが訝しむ様に言うと、アレンは頷く。
「あの時パティを助けに行ったのは、俺だ」
「…は?」
ロードは座ったままでアレンを見上げた。
「アランではなく、アレンだ。俺が、パティの、相手だ」
ゆっくりとそう言うと、ロードは目を見開く。
「は?パティの婚約者はアランだろ?」
「アランとの婚約は正式に解消された。俺とエリザベスとの婚約も近い将来解消される」
「…は?パティの相手が?アランじゃなくアレン?どう言う事だ?」
ロードは片手で頭を押さえると下を向いてブツブツと呟く。
「…ロード・フェアリ、お前、転生者なんだな?」
「は?…何…」
ロードがアレンを見上げると、アレンは真剣な眼差しでロードを見ていた。
「…まさか」
ロードが大きな目を更に開いてアレンを見つめながら小さな声で呟くと、アレンは真剣な表情のまま、言った。
「そのまさかだ。俺も、転生者なんだ」
-----
「つまり、お前は最初アランとして生きて、次には日本人として生まれて、前世がこのゲームの舞台だったと知り、それから今度はロードとして生まれて来たのが、今、と言う事なのか…」
アレンが半ば呆然としながら言うと、ロードは不機嫌そうに頷いた。
「そうだ。前世でコンプリートボーナスの知識を手に入れたから、今度こそパティを幸せにするんだと思ってたのに…何だよ。アレンはゲームを知ってたから俺に靡かなかったのかよ。道理でベスちゃんにもなかなか近付けないし、レスターも落ちない筈だよ」
吐き捨てるように言うロードにアレンは眉を顰める。
「コンプリートボーナスを狙って攻略対象者だけではなく、悪役令嬢たちにも手を出していたのか…」
「そうだよ。最終的に卒業パーティーまでに全員を落とせなかったら無理矢理にでも…するつもりでシミヒプノを育てていたんだ」
シミヒプノの実を絞った液は睡眠鎮痛剤…つまり麻酔になるのだ。ロードは、最後の手段として、対象者を昏睡させてでも事に及ぼうとしていたと言う事だ。
「ビビアン・ミルトンの件は想定外だったんだな?」
「当たり前だ。ビビアンが居なくなったらコンプリートも出来なくなるだろうが。……死なせるつもりなんてなかったし、罪悪感だってちゃんとあるよ…」
ロードは苦しそうに顔を歪める。
良かった。とアレンは思った。
ロードが、登場人物だから生きようが死のうが、自分が狙っていたコンプリートができなくなった事以外どうでも良いと思うような人物ではなくて良かったと。
「ライネル・コーンウェルから伝言を預かっている」
アレンがそう言うと、ロードはパッと顔を上げた。
ロードと、ライネルと、アランは、互いに会う事を禁じられている。学園ですれ違う事があっても声を掛ける事はできない。
ロードは秋期の始業式の日以来学園には行っていないので、ライネルもアランも顔を見る事すらないのだ。
「『俺が恨んでるのは俺だけだ』と伝えてくれ、と」
「…ライネル」
ロードの瞳に薄っすらと涙が浮かぶ。
…好きな女を失うのがどんなに辛いか。一度目の生で、パティが離れた場所で亡くなったと知った時の喪失感と後悔。ましてライネルは目の前でビビアンを失って…どれだけの後悔があるか、想像すら追いつかない程だろう。
俺のせいなのに。ゲーム通りのシナリオなら、登場人物が死ぬなんて有り得ないのに、コンプリートのためにシナリオを逸脱した俺のせいなのに。
「……」
俯くロードをアレンは黙って見つめる。
「…アレン」
俯いたまま、ロードが言う。
「何だ?」
「アレンはパティを好きなんだよな?」
「ああ。そうだ」
「パティも、アレンを好きなんだよな?」
「ああ」
「ベスちゃんが婚約解消されるのはかわいそうだけど…」
「ああ。エリザベスには…できる限りの事をしたいと思っている」
「俺は、ロードとして生まれて来たのは今度こそパティを幸せにするためだと思ってたんだ。とにかく、幸せになるパティが見たいんだよ!」
ロードはテーブルに手をついて立ち上がりながらアレンを見据えて強く言う。
「…約束する」
アレンも真っ直ぐにロードを見つめて言った。
「パティの王子様の登場か」
ロードはソファにもたれながら、自分の部屋に入って来た男を見て皮肉気に笑う。
「…アレン・ルーセントだ」
男は被っていた茶色の髪の鬘と、茶色の色付きの眼鏡を外すと、ロードを睨むように見ながら言う。
紫の髪と瞳の男がロードの前に立った。
「アレン?」
ロードが訝しむ様に言うと、アレンは頷く。
「あの時パティを助けに行ったのは、俺だ」
「…は?」
ロードは座ったままでアレンを見上げた。
「アランではなく、アレンだ。俺が、パティの、相手だ」
ゆっくりとそう言うと、ロードは目を見開く。
「は?パティの婚約者はアランだろ?」
「アランとの婚約は正式に解消された。俺とエリザベスとの婚約も近い将来解消される」
「…は?パティの相手が?アランじゃなくアレン?どう言う事だ?」
ロードは片手で頭を押さえると下を向いてブツブツと呟く。
「…ロード・フェアリ、お前、転生者なんだな?」
「は?…何…」
ロードがアレンを見上げると、アレンは真剣な眼差しでロードを見ていた。
「…まさか」
ロードが大きな目を更に開いてアレンを見つめながら小さな声で呟くと、アレンは真剣な表情のまま、言った。
「そのまさかだ。俺も、転生者なんだ」
-----
「つまり、お前は最初アランとして生きて、次には日本人として生まれて、前世がこのゲームの舞台だったと知り、それから今度はロードとして生まれて来たのが、今、と言う事なのか…」
アレンが半ば呆然としながら言うと、ロードは不機嫌そうに頷いた。
「そうだ。前世でコンプリートボーナスの知識を手に入れたから、今度こそパティを幸せにするんだと思ってたのに…何だよ。アレンはゲームを知ってたから俺に靡かなかったのかよ。道理でベスちゃんにもなかなか近付けないし、レスターも落ちない筈だよ」
吐き捨てるように言うロードにアレンは眉を顰める。
「コンプリートボーナスを狙って攻略対象者だけではなく、悪役令嬢たちにも手を出していたのか…」
「そうだよ。最終的に卒業パーティーまでに全員を落とせなかったら無理矢理にでも…するつもりでシミヒプノを育てていたんだ」
シミヒプノの実を絞った液は睡眠鎮痛剤…つまり麻酔になるのだ。ロードは、最後の手段として、対象者を昏睡させてでも事に及ぼうとしていたと言う事だ。
「ビビアン・ミルトンの件は想定外だったんだな?」
「当たり前だ。ビビアンが居なくなったらコンプリートも出来なくなるだろうが。……死なせるつもりなんてなかったし、罪悪感だってちゃんとあるよ…」
ロードは苦しそうに顔を歪める。
良かった。とアレンは思った。
ロードが、登場人物だから生きようが死のうが、自分が狙っていたコンプリートができなくなった事以外どうでも良いと思うような人物ではなくて良かったと。
「ライネル・コーンウェルから伝言を預かっている」
アレンがそう言うと、ロードはパッと顔を上げた。
ロードと、ライネルと、アランは、互いに会う事を禁じられている。学園ですれ違う事があっても声を掛ける事はできない。
ロードは秋期の始業式の日以来学園には行っていないので、ライネルもアランも顔を見る事すらないのだ。
「『俺が恨んでるのは俺だけだ』と伝えてくれ、と」
「…ライネル」
ロードの瞳に薄っすらと涙が浮かぶ。
…好きな女を失うのがどんなに辛いか。一度目の生で、パティが離れた場所で亡くなったと知った時の喪失感と後悔。ましてライネルは目の前でビビアンを失って…どれだけの後悔があるか、想像すら追いつかない程だろう。
俺のせいなのに。ゲーム通りのシナリオなら、登場人物が死ぬなんて有り得ないのに、コンプリートのためにシナリオを逸脱した俺のせいなのに。
「……」
俯くロードをアレンは黙って見つめる。
「…アレン」
俯いたまま、ロードが言う。
「何だ?」
「アレンはパティを好きなんだよな?」
「ああ。そうだ」
「パティも、アレンを好きなんだよな?」
「ああ」
「ベスちゃんが婚約解消されるのはかわいそうだけど…」
「ああ。エリザベスには…できる限りの事をしたいと思っている」
「俺は、ロードとして生まれて来たのは今度こそパティを幸せにするためだと思ってたんだ。とにかく、幸せになるパティが見たいんだよ!」
ロードはテーブルに手をついて立ち上がりながらアレンを見据えて強く言う。
「…約束する」
アレンも真っ直ぐにロードを見つめて言った。
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
真実の愛を見つけた王太子殿下、婚約破棄の前に10年分の王家運営費1.5億枚を精算して頂けます?
ぱすた屋さん
恋愛
「エルゼ、婚約を破棄する! 私は真実の愛を見つけたのだ!」
建国記念祭の夜会、王太子アルフォンスに断罪された公爵令嬢エルゼ。
だが彼女は泣き崩れるどころか、事務的に一枚の書類を取り出した。
「承知いたしました。では、我が家が立て替えた10年分の王家運営費――金貨1億5800万枚の精算をお願いします」
宝石代、夜会費、そして城の維持費。
すべてを公爵家の「融資」で賄っていた王家に、返済能力などあるはずもない。
「支払えない? では担保として、王都の魔力供給と水道、食料搬入路の使用を差し止めます。あ、殿下が今履いている靴も我が家の備品ですので、今すぐ脱いでくださいね?」
暗闇に沈む王城で、靴下姿で這いつくばる元婚約者。
下着同然の姿で震える「自称・聖女」。
「ゴミの分別は、淑女の嗜みですわ」
沈みゆく泥舟(王国)を捨て、彼女を「財務卿」として熱望する隣国の帝国へと向かう、爽快な論理的ざまぁ短編!
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる