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アランはエリザベスの言葉にきょとんとした表情を返す。
「裏切られた…のかな?」
「裏切られたと思いませんの?」
エリザベスはずいっと隣に座るアランに迫る。
「…アレンは昔からパティを好きだったんだ。それは双子の俺が一番知ってたし…だから想いが実って良かったな、としか」
「アレン殿下に対してはそうかも知れませんけど、パトリシア様に対しては!?」
「パティもずっとアレンを好きだったなら良かったなと思うよ。婚約解消してもパティが幼なじみで大切な女の子なのには変わりないし」
そう言うアランに、エリザベスはふるふると小刻みに震えながら言う。
「…そんな。あ、甘いですわ。殿下!」
「そうかな?」
「王族の婚姻は国と貴族との契約ですわ。想いが実って良かったなどという個人的な次元の話ではないのです!」
アランにぐいぐいと迫るエリザベス。
気圧されて上半身を後ろに傾けるアラン。
「それはそうだが…でもエリザベス嬢もアレンがパティを好きな事、以前から知ってただろ?」
「……え?」
エリザベスは思い掛けない事を言われた様に前のめりの姿勢のまま止まる。
「え?ベスちゃん前から知ってたの?」
二人の遣り取りを黙って見ていたロードが驚きの声を上げた。
「ああ…覚えていないのか…」
アランは顎に手を当てて言う。
「何…」
「始業式の日、講堂で皆が倒れた時の事」
「あの時?」
ロードが興味津々の表情で身を乗り出す。
「何か…言ったんですか?私が?」
エリザベスは記憶を辿る様に目を泳がせた。
「ああ。エリザベス嬢を舞台裏の控室へ運んだ時、最初エリザベス嬢は俺をアレンだと思っていたんだ。付け毛をつけていたからな」
アランは自分の後頭部を指差す。
「なるほどね。俺は髪を切ったアレン殿下がパティを助けに来たのを、アラン殿下が来たんだと思ったもんな。髪型がそうならそう思うだろう」
ロードが頷いた。
「……」
エリザベスはじっとアランを見ている。
「エリザベス嬢はパティがロードに連れ出されたのを見ていた。だから朦朧としながらもそれを俺に教えてくれたんだ」
「へえ」
「……」
「それで俺は『パトリシアはアランが助けに行ったから大丈夫だ』と言った。その時の俺はアレンだからな」
「うん」
「……」
黙ってじっとアランを見るエリザベス。
「そうしたら、エリザベス嬢は『アレン殿下はパトリシア様を好きなのに、どうして?』と言った。どうしてパティを助けにアレンが行かなかったのか、と言う意味だと取ったが…違うか?」
アランはパトリシアを見て言う。エリザベスは視線を下に落とした。
「それは…」
「それで、エリザベス嬢が泣きそうになったから、俺は付け毛を取って、実は俺がアランで、アレンはパティを助けに行ったと告げた。そうしたら…エリザベス嬢は…笑ったんだ」
「笑った?」
ロードが首を傾げて言う。
エリザベスは俯いたままだ。
「『良かった』と呟いて、笑った。まるで…」
赤い薔薇の様だった。
と言い掛けて、アランは言葉を止めた。
俺があの時からエリザベス嬢に好意を持っている事は、言うべきじゃないよな。
「まるで?」
ロードが言うと、アランは苦笑いを浮かべる。
「いや。だから…エリザベス嬢は以前からアレンがパティを好きな事を知っていた筈なんだ。それもそこで笑って『良かった』と言うという事は、アレンの想いが通じるのを願っていたのではないかと…」
「違います!」
エリザベスが顔を上げた。
頬も耳も赤い。
「「かわっ…」」
アランとロードがほぼ同時に「かわいい」と言い掛け、同時に自分の口を塞ぐ。
「「……」」
二人で「お前もか」と言う表情で顔を見合わせた。
「『かわ』?」
エリザベスが同じポーズを取る二人を交互に見る。
「…いや。エリザベス嬢『違う』とは?」
アランが口元を押さえたままで問うと、エリザベスはまた視線をソファの座面へと落とす。
「…確かに、私はアレン殿下がパトリシア様を想っていらっしゃる事には気がついておりました。しかし、想いが通じるのを願ったりはしておりませんわ」
下を向いたままでそう言うエリザベス。
あ、なるほど。
ロードはふと気付く。
きっと本当のベスちゃんは、アレンを恋愛対象としては好きじゃなくて、自分との婚約の件は別にすればアレンの想いが通じれば良いと思っていたんだ。いや、今も心の奥底では思っているんだ。
ただ、今は現在進行形でゲームの真っ最中だから、アレンに近付く相手は、それがヒロインではなく同じ悪役令嬢でも、例えアレンの想い人でも、とにかく「敵」と見做されて、でもアレンへの恋心はないから嫉妬とかじゃなく、自分の立場とかプライドとかのせいで許せない気持ちになってて…
だからアレンから引き離すために「パトリシア様を傷物にして」って言い出したんだろう。
アランはエリザベスの言葉にきょとんとした表情を返す。
「裏切られた…のかな?」
「裏切られたと思いませんの?」
エリザベスはずいっと隣に座るアランに迫る。
「…アレンは昔からパティを好きだったんだ。それは双子の俺が一番知ってたし…だから想いが実って良かったな、としか」
「アレン殿下に対してはそうかも知れませんけど、パトリシア様に対しては!?」
「パティもずっとアレンを好きだったなら良かったなと思うよ。婚約解消してもパティが幼なじみで大切な女の子なのには変わりないし」
そう言うアランに、エリザベスはふるふると小刻みに震えながら言う。
「…そんな。あ、甘いですわ。殿下!」
「そうかな?」
「王族の婚姻は国と貴族との契約ですわ。想いが実って良かったなどという個人的な次元の話ではないのです!」
アランにぐいぐいと迫るエリザベス。
気圧されて上半身を後ろに傾けるアラン。
「それはそうだが…でもエリザベス嬢もアレンがパティを好きな事、以前から知ってただろ?」
「……え?」
エリザベスは思い掛けない事を言われた様に前のめりの姿勢のまま止まる。
「え?ベスちゃん前から知ってたの?」
二人の遣り取りを黙って見ていたロードが驚きの声を上げた。
「ああ…覚えていないのか…」
アランは顎に手を当てて言う。
「何…」
「始業式の日、講堂で皆が倒れた時の事」
「あの時?」
ロードが興味津々の表情で身を乗り出す。
「何か…言ったんですか?私が?」
エリザベスは記憶を辿る様に目を泳がせた。
「ああ。エリザベス嬢を舞台裏の控室へ運んだ時、最初エリザベス嬢は俺をアレンだと思っていたんだ。付け毛をつけていたからな」
アランは自分の後頭部を指差す。
「なるほどね。俺は髪を切ったアレン殿下がパティを助けに来たのを、アラン殿下が来たんだと思ったもんな。髪型がそうならそう思うだろう」
ロードが頷いた。
「……」
エリザベスはじっとアランを見ている。
「エリザベス嬢はパティがロードに連れ出されたのを見ていた。だから朦朧としながらもそれを俺に教えてくれたんだ」
「へえ」
「……」
「それで俺は『パトリシアはアランが助けに行ったから大丈夫だ』と言った。その時の俺はアレンだからな」
「うん」
「……」
黙ってじっとアランを見るエリザベス。
「そうしたら、エリザベス嬢は『アレン殿下はパトリシア様を好きなのに、どうして?』と言った。どうしてパティを助けにアレンが行かなかったのか、と言う意味だと取ったが…違うか?」
アランはパトリシアを見て言う。エリザベスは視線を下に落とした。
「それは…」
「それで、エリザベス嬢が泣きそうになったから、俺は付け毛を取って、実は俺がアランで、アレンはパティを助けに行ったと告げた。そうしたら…エリザベス嬢は…笑ったんだ」
「笑った?」
ロードが首を傾げて言う。
エリザベスは俯いたままだ。
「『良かった』と呟いて、笑った。まるで…」
赤い薔薇の様だった。
と言い掛けて、アランは言葉を止めた。
俺があの時からエリザベス嬢に好意を持っている事は、言うべきじゃないよな。
「まるで?」
ロードが言うと、アランは苦笑いを浮かべる。
「いや。だから…エリザベス嬢は以前からアレンがパティを好きな事を知っていた筈なんだ。それもそこで笑って『良かった』と言うという事は、アレンの想いが通じるのを願っていたのではないかと…」
「違います!」
エリザベスが顔を上げた。
頬も耳も赤い。
「「かわっ…」」
アランとロードがほぼ同時に「かわいい」と言い掛け、同時に自分の口を塞ぐ。
「「……」」
二人で「お前もか」と言う表情で顔を見合わせた。
「『かわ』?」
エリザベスが同じポーズを取る二人を交互に見る。
「…いや。エリザベス嬢『違う』とは?」
アランが口元を押さえたままで問うと、エリザベスはまた視線をソファの座面へと落とす。
「…確かに、私はアレン殿下がパトリシア様を想っていらっしゃる事には気がついておりました。しかし、想いが通じるのを願ったりはしておりませんわ」
下を向いたままでそう言うエリザベス。
あ、なるほど。
ロードはふと気付く。
きっと本当のベスちゃんは、アレンを恋愛対象としては好きじゃなくて、自分との婚約の件は別にすればアレンの想いが通じれば良いと思っていたんだ。いや、今も心の奥底では思っているんだ。
ただ、今は現在進行形でゲームの真っ最中だから、アレンに近付く相手は、それがヒロインではなく同じ悪役令嬢でも、例えアレンの想い人でも、とにかく「敵」と見做されて、でもアレンへの恋心はないから嫉妬とかじゃなく、自分の立場とかプライドとかのせいで許せない気持ちになってて…
だからアレンから引き離すために「パトリシア様を傷物にして」って言い出したんだろう。
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