55 / 79
54
しおりを挟む
54
「…アレン殿下?」
扉の前に立つ男をエリザベスは呆然と見つめた。
「アランの方だよ。あれは」
エリザベスの耳元でロードが言う。
「アラン殿下?」
エリザベスが困惑していると、アランはツカツカと部屋に入って来てエリザベスに覆いかぶさったロードの肩を掴んだ。
「エリザベス嬢から離れろ!」
「はいはい。すごい剣幕ですね。アラン殿下」
ロードは起き上がると両手を顔の横に上げて「降参」のポーズを取る。
「エリザベス嬢に何をしたんだ!?泣いてるじゃないか」
アランはロードの肩を掴んだまま、憤怒の表情で言う。
「ベロチュー。あ、胸も揉んだ」
しれっと言うロードの胸倉を掴むアラン。
「ロード!」
「服の上からだし、ベスちゃんが不穏な事言いに来たって教えてあげたんだから多少のご褒美は許してくださいよ」
「泣かせて、怖い思いをさせて、何がご褒美だ」
「教えて…とはロード様、どういう事なんですか?何でアラン殿下が…?」
エリザベスが起き上がりながら言う。
「さっきお茶を頼みに行った時に、王宮へ遣いを出したんだ。『ベスちゃんが何か企んでる』って。ただ俺はアレン殿下に伝えたんだけどね。何でアラン殿下が来たのかは俺も知らないよ」
胸倉を掴まれたまま、肩を竦めて言うロード。アランは舌打ちしながら手を離した。
「…何故俺がアランだとわかる?」
「簡単だよ。俺がベスちゃんを組み敷いてるのを見て、俺を止めようとするのがアレン殿下、ベスちゃんを助けようとするのがアラン殿下だから」
アレンなら、転生者同士でほんの少しの友情もお互いに感じてるし、あの場面では俺を止めようと「ロードやめろ」と叫ぶだろう。もちろんアレンがベスちゃんを心配してないって訳じゃないけどね。
アレンではなくアランがここに来たと言う事は、アランは俺かベスちゃんに特別な気持ちがあるからじゃないかな?
男に組み敷かれるベスちゃんを助けたい気持ちがあるから第一声で「エリザベス!」って叫んだんだろうね。
つまり、アランはベスちゃんに好意がある。と言うのが俺の推測。
「私…を?助けよう…?」
エリザベスは眉を顰めて小首を傾げる。
ベスちゃんは困惑した表情だな。ホントかわいい。やっぱり邪魔が入らないように鍵しとけば良かった。
でもなあ、俺は伯爵家の養子で、しかも爵位は継げないし、ベスちゃんを傷物にしても責任取れないしなあ。
「エリザベス嬢、大丈夫なのか?」
ソファに座り直すエリザベスに手を差し出すアラン。
「はあ…まあ…」
エリザベスが手をアランの手に乗せる。エリザベスの手が小さく震えているのに気付き、アランは反対の手をエリザベスの手に重ねた。
「アラン殿下?」
「…怖かったんだろ?震えている」
さすさすと、エリザベスの手の甲を労わるように摩る。
「怖…かった…です」
ポロッと一粒、涙が落ちた。
うわー普段気の強いベスちゃんの一粒の涙。これは破壊力抜群だわ。
ロードはそう思いながらそっと立ち上がると、エリザベスが座るソファの向かい側へと移動する。
アランは慌てて自分の上着のポケットからハンカチを出してエリザベスの頬に当てた。
ゴシゴシと擦るように拭くとエリザベスは
「っ。痛いですわ」
と顔を背ける。
「ああ、ごめん。力加減が…」
「お気持ちは…ありがとうございます」
アランからハンカチを受け取ると、自分の頬をそっと押さえる。
エリザベスの隣にアランが座ると、エリザベスはそのハンカチを見て眉を顰めた。
「ベスちゃん?ハンカチがどうかした?」
ロードがそう言うと、エリザベスはじっとハンカチを見つめる。
「この刺繍パトリシア様ですよね?」
「ああ」
ハンカチの角にオーキッドの刺繍が施されている。
「婚約解消されたのにまだパトリシア様が刺繍されたハンカチをお使いなんですね」
真顔で言うエリザベス。
「…別に険悪になって婚約解消した訳ではないし、新しくするのもおかしいだろ?現状、俺のハンカチには全てその刺繍が入ってるんだ」
「どうして?」
俯いて言うエリザベス。
「エリザベス嬢?」
エリザベスはパッと顔を上げるとアランを睨んで言った。
「婚約解消はアラン殿下が罪を犯したせいかも知れませんが、パトリシア様はアレン殿下と恋仲になって…アラン殿下はパトリシア様に裏切られたのですよ?何故そんなに平然とされているんですか!?」
「…アレン殿下?」
扉の前に立つ男をエリザベスは呆然と見つめた。
「アランの方だよ。あれは」
エリザベスの耳元でロードが言う。
「アラン殿下?」
エリザベスが困惑していると、アランはツカツカと部屋に入って来てエリザベスに覆いかぶさったロードの肩を掴んだ。
「エリザベス嬢から離れろ!」
「はいはい。すごい剣幕ですね。アラン殿下」
ロードは起き上がると両手を顔の横に上げて「降参」のポーズを取る。
「エリザベス嬢に何をしたんだ!?泣いてるじゃないか」
アランはロードの肩を掴んだまま、憤怒の表情で言う。
「ベロチュー。あ、胸も揉んだ」
しれっと言うロードの胸倉を掴むアラン。
「ロード!」
「服の上からだし、ベスちゃんが不穏な事言いに来たって教えてあげたんだから多少のご褒美は許してくださいよ」
「泣かせて、怖い思いをさせて、何がご褒美だ」
「教えて…とはロード様、どういう事なんですか?何でアラン殿下が…?」
エリザベスが起き上がりながら言う。
「さっきお茶を頼みに行った時に、王宮へ遣いを出したんだ。『ベスちゃんが何か企んでる』って。ただ俺はアレン殿下に伝えたんだけどね。何でアラン殿下が来たのかは俺も知らないよ」
胸倉を掴まれたまま、肩を竦めて言うロード。アランは舌打ちしながら手を離した。
「…何故俺がアランだとわかる?」
「簡単だよ。俺がベスちゃんを組み敷いてるのを見て、俺を止めようとするのがアレン殿下、ベスちゃんを助けようとするのがアラン殿下だから」
アレンなら、転生者同士でほんの少しの友情もお互いに感じてるし、あの場面では俺を止めようと「ロードやめろ」と叫ぶだろう。もちろんアレンがベスちゃんを心配してないって訳じゃないけどね。
アレンではなくアランがここに来たと言う事は、アランは俺かベスちゃんに特別な気持ちがあるからじゃないかな?
男に組み敷かれるベスちゃんを助けたい気持ちがあるから第一声で「エリザベス!」って叫んだんだろうね。
つまり、アランはベスちゃんに好意がある。と言うのが俺の推測。
「私…を?助けよう…?」
エリザベスは眉を顰めて小首を傾げる。
ベスちゃんは困惑した表情だな。ホントかわいい。やっぱり邪魔が入らないように鍵しとけば良かった。
でもなあ、俺は伯爵家の養子で、しかも爵位は継げないし、ベスちゃんを傷物にしても責任取れないしなあ。
「エリザベス嬢、大丈夫なのか?」
ソファに座り直すエリザベスに手を差し出すアラン。
「はあ…まあ…」
エリザベスが手をアランの手に乗せる。エリザベスの手が小さく震えているのに気付き、アランは反対の手をエリザベスの手に重ねた。
「アラン殿下?」
「…怖かったんだろ?震えている」
さすさすと、エリザベスの手の甲を労わるように摩る。
「怖…かった…です」
ポロッと一粒、涙が落ちた。
うわー普段気の強いベスちゃんの一粒の涙。これは破壊力抜群だわ。
ロードはそう思いながらそっと立ち上がると、エリザベスが座るソファの向かい側へと移動する。
アランは慌てて自分の上着のポケットからハンカチを出してエリザベスの頬に当てた。
ゴシゴシと擦るように拭くとエリザベスは
「っ。痛いですわ」
と顔を背ける。
「ああ、ごめん。力加減が…」
「お気持ちは…ありがとうございます」
アランからハンカチを受け取ると、自分の頬をそっと押さえる。
エリザベスの隣にアランが座ると、エリザベスはそのハンカチを見て眉を顰めた。
「ベスちゃん?ハンカチがどうかした?」
ロードがそう言うと、エリザベスはじっとハンカチを見つめる。
「この刺繍パトリシア様ですよね?」
「ああ」
ハンカチの角にオーキッドの刺繍が施されている。
「婚約解消されたのにまだパトリシア様が刺繍されたハンカチをお使いなんですね」
真顔で言うエリザベス。
「…別に険悪になって婚約解消した訳ではないし、新しくするのもおかしいだろ?現状、俺のハンカチには全てその刺繍が入ってるんだ」
「どうして?」
俯いて言うエリザベス。
「エリザベス嬢?」
エリザベスはパッと顔を上げるとアランを睨んで言った。
「婚約解消はアラン殿下が罪を犯したせいかも知れませんが、パトリシア様はアレン殿下と恋仲になって…アラン殿下はパトリシア様に裏切られたのですよ?何故そんなに平然とされているんですか!?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
35
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる