双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

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 ラナンキュラスが上手く咲いたし、夏にはナスタチウムが咲くな。ナスタチウムは秋まで咲くし、冬になったらカレンジュラとビオラも咲くし、きっとビビアンも喜ぶよな。
 ライネルがそう考えながら薬草畑のあった花壇へと近付くと、ラナンキュラスの花の傍に制服姿の女生徒がしゃがみ込んでいるのが目に入った。
「バーンズさん?」
 女生徒はベアトリス・バーンズ。去年の生徒会書記で、同じく生徒会会計だったライネルと同い年で、この春に二年生になったばかりだ。
「…あ」
 ライネルが近付きながら声を掛けると、ベアトリスは顔を上げた。
 あれ?バーンズさん、眼が潤んでる?
 これは、気付いてない振りをした方が良いかな。
「ラナンキュラス、綺麗だろ?初めてにしては上手く咲かせたと思わない?」
 ライネルはそう言いながら、ベアトリスとの間に花壇を挟み、背の高い花の影へしゃがむ。こうすればお互い顔は見えない。
「…うん。綺麗だわ」

 バーンズさんもロードと…関係があったんだよな?それに婚約者のエドワード・ラングトンも。
 生徒会で一緒だった時はジュリアナ・キャメロン副会長と言い争ったりしてたし、もっと勝ち気な印象だったけど、今は随分大人しそうに見えるな。
 黙ってじっと花を見ているベアトリスを視界の端に入れながら、ライネルは花壇の雑草を取る。
 水をやりたいけど、どけって言ってるみたいになるから…今はやめておくか。
「…コーンウェル君はロードを好きだったの?」
「はぇ!?何?急に」
 いきなりロードの事!?
「ごめんなさい。…ロードとの事、後悔してないのかなと思って…」
 ベアトリスは眉を下げてライネルを見ている。

 後悔?後悔はしたよ。もちろん。
 俺がロードとならなければビビアンにも何事もなかった。
 それでもロードを好きになったのは事実で、それが悪い事だったとは思わない。
 後悔してるのは、そのせいでビビアンを蔑ろにした事。別れるなら別れるでハッキリさせれば良かったのに、ただ放置して、思い詰めさせてしまった事だ。
「……」
「…ごめんなさい。後悔していない訳ないわよね」
 俯きながらベアトリスが言う。
「うん…まあ、後悔はロードを好きになった事じゃないけど、後悔はしてるよ」
「私は…ロードを好きになった事を…後悔してる…」
「そうなんだ」
 ベアトリスは俯いたまま、話を続けた。

「私…婚約破棄されたの」
「…!」
「エドワード様、浮気は許せないって。自分もロードと…なのに。でもラングトン家は侯爵家で、しがない伯爵家の我が家では婚約解消じゃなくて破棄になるのにも抗えなくて…」
 婚約破棄…
 つまりバーンズさん側の有責という事になったのか。
「それで私、学園を卒業したら修道院に入れられる事になったの」
「ええ?」
 驚いてベアトリスの方を見たライネルに、ベアトリスは少し微笑んだ。
「そもそもこの婚約も、我が家への財政支援ありきで、エドワード様に婿入りしてもらう予定だったの。だからエドワード様は私の二つ下の妹と改めて婚約されて、それで元婚約者の私が家に居ては不味いの」
「妹と…」
「不貞で婚約破棄されるような娘じゃ嫁の貰い手もないし、厄介払いね」
 自虐的に笑うベアトリス。

 どうしてこうなったんだろう?
 私は我が家の財政の事なんて知らなかった…親に定められた婚約に反発する気持ち。そして、一生に一度だけでも「恋」をしてみたかった。
 それでロードを好きになって…
 でもいつの間にかロードを想う気持ちも失くなって、残ったのは婚約破棄と修道院行きの事実だけ。
「これからの学園生活でどんなに仲の良い友達や、例えば恋人ができたとしても、修道院へ行けば恋人とは別れ、友人とも長い間には疎遠になるかも。勉強も将来に役立つのかどうか…そう考えると、何を思って学園生活を送れば良いのかわからなくて…」
 コーンウェル君の前では絶対に口には出せないけど、私も死んだ後こうして弔いの花を植えてくれるような相手が欲しかったな。
「俺は学園を卒業したら刑に服して…それから神学校へ行って神官になろうと思ってるんだ」
「え?」
「だからバーンズさんとも学校奉仕や医療奉仕の場で会う事もあるかも知れないね」
 ライネルはニコッと笑う。
 コーンウェル君、私の事ずっと覚えててくれるの?

「バーンズさん、好きな色は何色?」
「え?…黄色」
「じゃあこの花壇にこれから、黄色のマリーゴールドを植えるよ。来年の春には黄色のラナンキュラスも咲かせる」
「…コーンウェル君」
 ベアトリスの眼に涙が浮かぶ。
「オレンジと黄色の花壇はきっと明るくて心も和むよね」
「そうね。楽しみだわ」
 ベアトリスは涙を拭って笑った。



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