双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

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 カークランド公爵邸を訪れたレスターは、出迎えた公爵家のフットマンの一人がレスターを睨む様に見ているのに気付く。
 …この男か。この男がミッチェルに俺とロードの事を告げたんだろう。
 二十歳前後か?学園で見た覚えはないからミッチェルと同じ歳か一つ上くらいかも知れんな。今は執事になるべく修行中という処か?

「殿下!?」
 ミッチェルの私室に入ると、驚いた表情のミッチェルが立ち上がる。
「ミッチェル、人払いを」
 レスターは立ち上がったミッチェルの腰に片手を回すと、廊下に立つフットマンをチラッと見る。
「…でも」
「頼む」
「わかりました」
 ミッチェルは部屋の隅に控える侍女に合図をすると、侍女は部屋を出て、扉を閉じた。
 扉が閉じる時、フットマンが悔しそうな表情を浮かべるのをレスターの視界は捉えていた。

「今日はどうされたんですか?」
 先日レスターに「大嫌い」と言った名残か、少しツンと澄ましてミッチェルは言う。
「誤解を解きに来た」
「誤解とは、何の事ですの?」
 視線を逸らすミッチェル。腰に回した手に力を入れて、レスターはミッチェルを抱き寄せた。
「ひゃあ!」

 レスターはミッチェルの背中をゆっくりと撫でる。
 ミッチェルのドキドキと早い鼓動がレスターに伝わった。
「ミッチェル…俺の心には今ミッチェルしか居ない。これからもだ」
「…嘘」
「嘘ではない。ロードに惹かれたのは確かだが、去年の秋期始業式の日にロードが起こした事件で、俺は倒れたミッチェルを王宮へ連れ帰ったな?」
「…はい」
 講堂で倒れたミッチェルは、目が覚めるとレスターの私室のベッドの上でレスターに抱きしめられていたのだ。
「あの時ミッチェルは薬と睡眠剤のせいで朦朧としていたが、ずっと俺の服の袖を掴んで離さなかった」
「……はい」
 身体が熱くて、熱くて、そして切なくて、薄っすら眼を開けた時、心配そうな殿下の顔が見えて…安堵して、そして離れて欲しくなくて…ずっと袖を掴んでいたのは覚えているわ。
 そして目が覚めたら抱きしめられていて…せ…制服は着ていたから何もなかったと思うけど。
「離れようとすると子供の様にイヤイヤと首を振るミッチェルは…物凄くかわいかった…」
「!」
 え?イヤイヤって…私がしたの?そしてそれをかわいいと思われたの?殿下が?
「あの時から俺の心にはミッチェルしか居ない。ミッチェル…好きだ」
 レスターがミッチェルの髪を撫でる。
「……」
 ミッチェルがおずおずと顔を上げると、レスターが少し頬を染めて、愛おしそうに自分を見ていた。
「ミッチェルが好きだ」
 レスターはそう言うと、ミッチェルの唇に軽くキスを落とした。
「…で…殿下…」
「最近ずっと『殿下』だけで、名前を呼んでくれないのは怒っているからか?」
「気付いて…」
「もちろん。俺はいつでも敬称なしでミッチェルに名前を呼ばれたいと思っているんだからな」
 チュッと、もう一度キスをする。
「…レスター殿下」
「敬称はいらないんだが…まあ名を呼んでくれるだけでも良いか」
 チュッチュッと頬と目尻にキスをする。
「レスター…」
 潤んだ瞳で自分を見るミッチェルに、唇を重ねると舌を差し入れた。

「ふ……ん…レ…スター…」
「…は…ミッチェル…好きだ」
 ちゅくちゅくと音を立てて口内を蹂躙すると、唇を離す。
 ぎこちなくもレスターに応えようとするミッチェルがかわいくて仕方がない。
「レスター…好き…」
 蕩けた瞳。やっと聞けた言葉。
 ああ、かわいい。
 レスターはぎゅうっとミッチェルを抱きしめた。

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「フレデリック様」
 屋敷から飛び出すように出てきたジュリアナは、馬車を降りたフレデリックの前に立つ。
「ジュリ。久しぶりだね」
 なるべく自然に、と心掛けてフレデリックが笑顔を見せると、ジュリアナの瞳が潤んだ。
「…っ」
「ジュリ?」
「も…もしかして今日は…婚約解消のお話に来られたのですか?」
「え?」
「やはり、私…フレデリック様に嫌われて…?」
 ポロポロと涙が落ちる。
 ジュリに会いに行けと言ったパットが「お兄様がジュリアナ様の気持ちを知るのが怖いように、ジュリアナ様も怖いんです」と言っていた。
 つまり、ジュリは俺に嫌われるのが怖かった?

「違う。違うよ。ジュリ、ごめん」
「フレデリック様…?」
 フレデリックはジュリアナの手を取ると、もう一方の手でジュリアナの頬の涙を拭った。
「ごめん。俺の方が大人なのに、余裕なくて情けないな」


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