双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

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 白いドレスのドレーンを長く引き、婚儀を終えた二人が大聖堂から出て来ると、大聖堂の周りを取り囲んだ人々から大きな歓声が上がった。
「パトリシア様お綺麗…」
「アレン殿下も麗しいわ」
「さすが大恋愛で結ばれたお二方、ため息が出るほどお似合いね」

 アレンがパトリシアを抱き上げると、観衆から「キャー」という歓声が上がり、ほうっとため息が漏れた。
「民たちが随分好意的になったな」
 アレンがパトリシアの耳元で言う。
「エリザベス様のおかげね」
 パトリシアが観衆に向かって小さく手を振ると、また歓声が上がる。

 第二王子アレンが、エリザベスとの婚約を破棄し、双子の弟で第三王子アランの婚約者であったパトリシアと婚約した時は、「パトリシアはアランとの婚約が解消される前からアレンと通じていてエリザベスから奪略した」「第三王子が王位継承権を失くしたので第二王子に乗り換えた」「アレンがパトリシアに横恋慕し、無理矢理略奪した」「アレンがパトリシアを手に入れるためにアランを失脚させるよう企んだ」などなど、良くない噂が溢れていた。

 その空気を一変させたのが、一年前に文芸誌に連載された小説だ。

 第二王女と、その双子の妹の婚約者との、悲恋。
 互いに想い合っているのに想いを伝えられない展開は読者をじれじれさせ、様々な困難にハラハラし、ライバル出現にドキドキし、互いの立場を思い遣りもだもだする二人にやきもきし、諦めそうになると涙を流し…
 思いが通じ合った回が掲載された文芸誌は通常の倍の売り上げがあったそうだ。

 そして、人々は大人気を博したこの物語に、自国の第二王子と弟の婚約者だった侯爵令嬢を重ね合わせ、アレンとパトリシアを取り巻く空気が好意的な方向へと変わったのだ。
 そして、連載を纏めた単行本が発売された一か月後の今日、二人の婚儀が執り行われた。

 観衆から羨望の眼差しを向けられつつ、パトリシアを抱いて馬車へと歩くアレンを見ながら、エリザベスは大聖堂の大扉の前でニヤリと笑う。
「ふふふ。小説に踊らされる民衆を眺めるのはなんて愉快なのかしら」
 そう呟くエリザベスの両側に立つアランとロードは同時に肩を竦めた。
「リジーは素直じゃないなあ。アレンとパティのためにあの小説を書いたくせに」
「アレン、あのお話は謎に包まれた匿名作家が書いたのよ。私が書いたって大きな声で言わないでちょうだい」
 エリザベスはジロッとアランを睨む。
「ベスちゃんにあんな文才があるとはね」
 ロードが言うと、エリザベスは顔をぶんっと振って反対側のロードを睨んだ。
「ロード!だから、匿名作家!」
「はいはい」
「それに別にアレン殿下とパトリシア様のために書いた訳ではないわ。ただ単に暇だったから、目の前の二人を題材にしたと言うだけよ」
「はいはい」
 何だかんだ言って自分があの小説を書いたと認めちゃってるのがかわいいよね。ベスちゃんは。
 ロードはそう思いながらアランに目配せをする。
 パトリシア様は他人の婚約者を奪ったり、打算で乗り換えたりするような子じゃないってみんなにわかってもらわなくっちゃって言いながら小説書いてたのに、意地張って…リジーは本当にかわいいな。
 アランもそう思いながらロードに向かって頷いた。

-----

「パティ…ウェディングドレスも、他のドレスも、誰にも見せずに閉じ込めておきたいような、国中の人に見せびらかしたいような…複雑な気持ちになるくらい綺麗だった」
 婚儀の夜、レースの夜着のパトリシアを、アレンはベッドの上で抱きしめた。
「アレンもすごく格好良かった」
 パトリシアがそう言うと、アレンは抱きしめたパトリシアの首筋にキスをする。
「婚約内定してからもう五年経つのか…パティと結婚できるなら何年掛かっても構わないとは思っていたが、長かったな」
「アレン…」
 額と額を合わせて見つめ合う。そして唇にキス。
「もう我慢の限界だ…」
 唇を合わせたまま、アレンは呟いて、深いキスをしながらパトリシアの背中を支えてベッドへ横たえた。

「…ん…アレン…」
「パティ…約束を覚えてるか?」
 深いキスをしながらアレンが言う。
「…や…くそく?」
 頬を赤くしてを潤ませたパトリシアがアレンを見る。
「今度パティを抱く時は…めちゃくちゃにする…と」
 パトリシアの頬がますます赤くなり、パトリシアは思わず両手で顔を覆った。
 アレンはパトリシアの手の上にキスをする。
「…覚えてる」
 そう呟くパトリシアの顔を隠した指の間から見える額も、耳も、首筋も赤い。
「アレンに……めちゃくちゃに…されたい…」
 聞こえるか聞こえないかの声でパトリシアは呟く。
 アレンはそっとパトリシアの手を握って顔を隠した手を退けた。
 真っ赤な顔で恥ずかしそうに目を伏せるパトリシア。
 ああ、かわいい。俺のパティ。パティに会うために俺はこの世界に転生して来たんだ。きっと。
 アレンは
「…覚悟しておけ」
 と呟くと、口角を上げてパトリシアにキスをした。



         ー 了 ー



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