ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。

ねーさん

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「私がクラリッサ嬢を周りの悪意から護ります」
 ネイト様が真剣な表情でお父様に言って、私の心臓が跳ねる。
 ネイト様を見ると、少し微笑んで頷いてくださって…
 ああ~どうしよう。好き。

は受けてもらえるという事かね?」
 お父様がにこやかな表情で言った。
 例の話?
 私がお父様へ顔を向けると、お父様は何となく私を揶揄うような表情で片眉を上げる。
「まだクラリッサ嬢に求婚を受け入れていただいておりませんから、その話は後ほど」
「そうか」
 お父様に頭を下げるネイト様と頷くお父様。
「私はこれからロンダムの処罰に関して議会へ出す意見書を書く。その間にクラリッサと話すといい」
「お心遣いありがとうございます」
 お父様がソファから立ち上がると、ネイト様も立ち上がり胸に手を当てて礼を取った。

 私とネイト様は庭へ出て、並んで歩く。
 取り止めのない話をしながら、私はずっとドキドキしていた。
 求婚。確かに昨夜ネイト様は「俺と結婚してくれ」と言ってくださった。
 それでレオノーラ殿下に恋愛感情を抱いた事はないって…
 これからネイト様の気持ちを聞かせてもらえるのかも。それに「贖罪」の意味も。

 八角形の屋根の四阿に用意されたお茶の席に着くと、ネイト様は私を真っ直ぐに見る。
「クラリッサ」
「はい」
「昨日も言ったが、決して愉快な話ではない。でも俺の…俺と幼なじみの話を聞いてくれるか?」
「はい」

-----

あれは、俺が十五歳、レオノーラが十六歳、そしてオーレリアが十四歳の夏期休暇。

 オーレリアは茶色の髪に青い瞳の令嬢で、レオノーラの妹で、俺の幼なじみだ。
 レオノーラは学園で出会った第一王子に一目惚れされ、以前から非公式に婚姻の申し入れを受けていた。レオノーラも満更でもなさそうな様子だったが、第一王子はいずれ王太子、国王になる。その妃になる決意はなかなか固まらないようだった。
 俺は何となくオーレリアと結婚するのかなと思っていて、オーレリアも俺を慕ってくれていた。
 剣の腕に覚えがあった事もあり、格上の侯爵家の令嬢と結婚するには近衛騎士団に入るのが手っ取り早いかな、とぼんやり考えていた。

 脅迫文が届くようになったとレオノーラから相談を受けたのはレオノーラが学園の三年生になった頃で、俺が二年生、オーレリアが学園に入ったばかりの一年生だった。
【第一王子殿下の妃を辞退しろ】
【第一王子を誘惑するな】
 という内容の手紙が最初は週一回、夏期休暇の前には毎日のように寮へ届くようになり、内容も段々とレオノーラが俺や俺の兄たちと深い仲だとか、身体で王子を篭絡したとか、事実無根の誹謗中傷になり、危害予告、放火予告、果ては殺人予告とエスカレートしていったのだ。
 もちろん俺やレオノーラの実家も犯人を探したし、学園や都立の騎士団へも相談したが、誰の仕業か突き止められなかった。

 夏期休暇に入ると、怯えたレオノーラとオーレリアは領地へ帰り、俺は王都に残り都立騎士団で鍛錬をした。
 僅かな胸騒ぎはあったが、領地へは脅迫文が届かなかったので、そこは安全地帯だと俺は思っていた。いや、そう思いたかった。

 ダンヴァーズ伯爵家の領地屋敷からレオノーラとオーレリアの家の領地屋敷までは馬車で半日、馬ならもっと早く着く。
 しかし王都から領地までは馬で駆けても三日かかる。
 俺はせめて領地へ戻っていなければいけなかった。

 レオノーラが何者かに攫われた。
 との連絡が俺に届いた時には、既に攫われて三日が経っていた。
 急ぎ領地へと戻った俺を待っていたのは──

 レオノーラと間違えられ、攫われたのはオーレリアだったという事実。
 そして……陵辱され暴力に晒され心身共にボロボロになり、助け出されたその日に屋敷のバルコニーから身を投げた、オーレリアの変わり果てた姿だった。

「私が…私が外に出るのを嫌がったから、オーレリアが代わりに孤児院へ慰問へ行って……私のせいよ。私のせいでオーレリアが……」
 泣き崩れるレオノーラに、俺が掛けられる言葉などない。
 俺が、側にいれば。
 慰問に着いて行ってやれば。
 いや、せめて領地に戻っていれば、駆け付けて、探して、助けられたかも知れないのに。
 俺は、傷付いたオーレリアが自ら命を投げ出すのを止める事すらできなかった。



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