ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん

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「東国とこの国は公用語が同じなので語学留学って訳にいかないですし、私にはデリスさんみたいに医学を学ぶのは無理ですし…」
 うーんと唸って首を傾げるアイリス。

「アイリス、僕は、学園を卒業したら銀山の坑道の跡地利用に取り組もうと思っているんだ」
 ウォルターがアイリスを見つめながら微笑んで話し出す。
「元々東国へ行かなくてもそのつもりだったんだけどね。銀の鉱脈も無限にあるものではないだろう?」
「はい」
「鉱脈を求めて坑道を作る。そして銀が採取されなくなって廃道になった坑道は、今は放置されているんだよ。でも山に穴を開けてそのままじゃ危ないよね」
「はい。穴は段々増えますしね」
 大真面目な顔でアイリスが頷くと、ウォルターは嬉しそうに笑った。
「そうなんだ。生態系にも影響があるだろうし。それで、その廃道を埋めたり、植物を植えたり、場所によっては跡地を見学できるようにしたり、地盤などが許せば坑道の中に何か施設を作ったり。そういう活動をして行こうと思って」
「はい」

「ファン兄さんは、鉱山病…呼吸器や消化器の病や、銀皮症などの予防と治療に取り組むと言っていたよ。それに採取量が減少したり品質が落ちたりして銀山自体を閉じなければならなくなった時の鉱夫やその家族の後の生活も考えておかなければならないし」
 頷きながら真剣に耳を傾けるアイリス。
 ウォルターはアイリスの両頬の火傷の上に貼られた絆創膏に片手を伸ばしてそっと触れる。
「ウォル…さん?」

「アイリス、僕は兄さんとこんな話ができるようになるなんて考えた事もなかった」
 頬をウォルターの手の平で覆うように包まれた。
「はい」
「アイリス、好きだよ」
「はい…え!?」
 急な告白に目を見開くアイリス。
 みるみる頬が赤くなるアイリスに、ウォルターは破顔して、アイリスに顔を近付けると、絆創膏を貼られた頬にキスをする。

「ふっ、不意打ち…」
 アイリスは耳まで赤くなって上目遣いでウォルターを見た。
「うん。ごめん。赤くなったアイリスがかわいくて」
「~~~っもう!何で絆創膏の上なんですか!?」
「ははは」
 ポカポカと両手でウォルターの胸を叩く。
 痛くもなく、ウォルターにとってはただただかわいいだけだ。
「じゃあ、絆創膏貼ってないところにキスしても良い?」
 ウォルターはそう言うと、両手でアイリスの頬を包む。
 絆創膏の上からでも頬が熱をもっているのを感じた。
「……はい」
 小声で、恥ずかしそうに言うと、目を閉じる。
 そんなアイリスにウォルターはゆっくりと顔を近付けて、唇を重ねた。

 数秒経って顔を離すと、アイリスがぎゅうっと目を瞑っていて、ウォルターはまた破顔してアイリスを抱きしめる。
「アイリスが東国へ行ったらしばらく会えないと思うと、離れがたいな…」
「はい」
 アイリスもウォルターの胸に顔を埋めて、そろそろと背中に手を回した。

「話を戻すとね、アイリスには東国で植物学を学んで欲しいんだ」
 アイリスを抱きしめたままでウォルターが言う。
「この状態で話を戻すんですか?」
 アイリスもウォルターに抱きついたまま、くすくす笑いながら言う。
「離れがたいから仕方ない」
「私も同じですから、これはもう仕方ないですね。植物学…ですか?」
「そう。食用や薬用の植物や、どんな土壌でどんな植物が育ちやすいか、その土地に合わせた作物の品種改良とか。東国の学園を出たらそういう分野を専修できる大学へ進学して留学を続けて欲しい」
「はい。その知識がウォルさんの役に立つんですよね?」
 アイリスは顔を上げてウォルターを見た。
「そう。埋め戻した坑道跡地の緑化や、その近辺に住まう元鉱夫が作物を栽培するのに役立てて欲しいんだ」
 ウォルターが頷いて言うと、アイリスはにっこりと笑う。
「わかりました。がんばります」

「うん。はあ…かわいい…本当に離れがたい…」
 ウォルターはそう呟くと、もう一度アイリスにキスをした。



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