ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん

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番外編2

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2

 再び前髪を下ろして眼鏡を掛けたアンドリューは、セラフィナと大学構内の散策に出掛ける事になった。
 アイリスとウォルターは別行動。つまりお見合いであれば「後は若い二人で」という状態だ。

 校舎と校舎の間の、緑の多い庭のような場所にあるベンチに並んで腰掛ける。
「あの…変な言い方で気に障ったら申し訳ないのですけど…学園時代にはものすごくモテたと言う事ですか?」
 セラフィナが言うと、アンドリューは困ったように笑った。
「有り体に言えばそうですね」
「生活に差し障りがあるほど?」
「ありました」
「どんな風に…?」
 興味津々でセラフィナが聞く。
 アンドリューが眉間に皺を寄せたのが近くにいるセラフィナにはわかった。
「まず、寮の下駄箱と、教室の机は毎日手紙と贈り物で満杯でして、朝、寮の外と、夕方寮の前で複数人が待ち伏せしているのは当たり前。休憩時間になると女子生徒が押し寄せて来るので、休憩になると同時に隠れるために走って教室を出ていました。たまに授業が長引くと逃げられなくて、私の周りを取り囲んだ女子生徒同士が喧嘩になったり…」
「まあ」
「幼い頃から色々あったので、ある程度慣れているつもりでしたけど、想定を上回っていました。更にそれが段々とエスカレートして…」
「ええ?」
 驚くセラフィナにアンドリューは眉を寄せながら笑う。

「寮にいる時も、窓ガラスに小石が投げられたり。それを無視していると、ガラスが割れる程の石になり、その内、態と窓を割って、贈り物などが投げ込まれるようになりまして」
「ええ…」
 眉を顰めるセラフィナ。
「その『贈り物』が、女性の長い髪の毛の束や、相手の署名のある婚姻届などになり」
「ひいっ」
 セラフィナは思わず息を飲んだ。
「寮の食事や飲み物に薬などを盛られるようになったので、三年生の時退寮し、特別に家から通学したり、家庭学習をしたりするようにしてどうにか卒業しました」
「く…薬?」
 セラフィナが眼を見開いてアンドリューを見る。
「眉唾物ですが、惚れ薬と言われる物や、所謂媚薬なども…」
「ええ!?」
 驚愕の表情のセラフィナに、アンドリューは思わず吹き出した。
「はははっ。セラフィナ様、表情豊かですね」

 あ、笑うと意外とかわいい感じになるんだわ。この人。
「そう?それはきっとアイリスの影響ね」
 セラフィナは首を傾げて言う。
「ああ…確かにアイリスさんも上位貴族や王族でも物怖じしないし、感情表現も素直ですよね」
「あ、でもアイリスに先に堅苦しくない友達になってって言ったの私の方だったわ」
「ではアイリスさんがセラフィナ様の影響を受けて、セラフィナ様がアイリスさんの影響を受けて…」
「相互作用かしら?相乗効果?」
「なるほど」
 顎に手を当ててセラフィナが言うと、アンドリューは更に笑った。

「誰か決まった方とお付き合いをされたりはしなかったんですか?お相手がいれば皆さまも諦めたり…」
 セラフィナがそう言うと、アンドリューは眼鏡の奥の目をウロウロと泳がせる。
「……実は、なくもないんです」
「なくもない?」

「退寮して少し経った頃に、公爵家の令嬢と知り合いまして。真面目で、私の容姿に興味がなくて、頭が良くてかわいい子だったので、それこそこういう子と付き合えば皆、納得してくれるのでは、と」
「ええ」
 そんな理由で異性と交際するのは少し打算的だと思うけど、それまでの状態を聞けば何とかならないかと考えるのも無理ないわよね。
「しかし、その彼女が他の女生徒たちから虐められ、吊し上げられまして……慌てて別れました。と言ってもまだ手も握っていませんでしたけど」
 苦笑いを浮かべるアンドリュー。
「……」
 …ああ、きっとアンドリュー様、その子の事、ちゃんと好きだったのね。
 何だか気の毒で何て言えばいいのか…

「大学では眼鏡と髪で顔を隠して学問に邁進していたし、基本的に本気で勉強や研究をしたい人の集まりなので、トラブルなくやって来れましたけど、これから先、顔を隠した弁護士などを信頼して依頼しようという人はいないと思うんです」
 アンドリューは気を取り直して言った。
「つまり、大学を出たら顔を隠すのをやめるのですね?」
「はい。実社会では流石に学園の頃の再来にはならないでしょうが、不安もあります。ですから、この国を離れて更に伴侶も得られる、セラフィナ様との婚姻は私にとっては渡りに船の話なのです」
 真っ直ぐにセラフィナを見る。
「なるほど…」
 それに、アンドリュー様は口には出さないでしょうけど、公爵令嬢でも吊し上げられたなら、それ以上の女性でないと…って事でもあるんだろうな。
 何せ私、王女だし。



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