ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん

文字の大きさ
78 / 80

番外編3

しおりを挟む
3

 ルイーザの屋敷から大学に通うアイリス。
 セラフィナが東国に来た際は、ウォルターが東国の王都に構えている屋敷に滞在するのだが、今日のセラフィナはルイーザの屋敷のアイリスの部屋にいる。
 アイリスと夜通し語るために泊まりに来ているのだ。
「で、セラ、アンドリュー様はどう?」
 ベッドにうつ伏せになって、両手で頬杖をついたアイリスが言う。
「今まで見た事ないくらい美形で驚いたわ」
 ベッドの横に座って緩いサイドテールに髪を結びながらセラフィナが言った。
「確かに。私も最初に見た時は思わず眼を覆ったもの」
 日差しを遮るように額に手を当てる。
「あー何だか眩しい感じがするのよね。わかるわ」
 うんうんと頷くセラフィナ。

「じゃなくて、結婚相手としてどう?の『どう?』よ」
 アイリスがクスクスと笑う。
「うーん…まだよくわからないわ。アイリスは何故アンドリュー様を私に会わせようと思ったの?」
 そうセラフィナが聞くと、アイリスは苦笑いを浮かべた。

「あのね。ラウル殿下から頂いた嫡男じゃなくて婚約者のいない令息リストにもちろんアンドリュー様の名前はあったのよ。でも、セラも聞いたみたいに学園時代がちょっと異常な感じだったじゃない?」
「でもそれはアンドリュー様が悪い訳ではないわよね?」
「そうなんだけど…異性関係のいざこざのある男性ひとをわざわざセラに薦めないわ」
「それはそうね」
 じゃあ何で今回そのアンドリュー様を薦める事になったんだろう?

「調べるという程の事をしなくても、学園に入る前の事も耳に入って来たし」
「え?」
 学園に入る前の話は聞いてないけど…そういえば「幼い頃から色々あった」って言われてたわ。
「アンドリュー様のお家、ハーン伯爵家って、家族全員が美形なのよ。お兄様二人も学園生時代はアンドリュー様ほどじゃなくても似たような感じだったそうだし、お父様もお母様も独身時代には……」
「そうなの?」
「うん。ハーン家の三兄弟は全員幼い頃に誘拐された事があるとか。もちろん身代金目的じゃなく。あとはその…女性に限らず男性にも襲われた事があるとか…それは未遂だったそうだけど、まあとにかく色々噂があって、アンドリュー様に確認したら『全部事実』ですって」
 …何と言うか「幼い頃から色々あった」で済まされる感じではないわね。それは。
「そんな感じだから、候補からは外してたの。でも大学で私が階段から落ちた時、アンドリュー様が助けてくれようとして一緒に落ちた事があって」
「ええ?」

 アイリスが階段を下りようとしていた時、後ろから来た学生が偶然アイリスにぶつかり、足を踏み外した。
 たまたま隣にいた男性が咄嗟にアイリスの腕を掴んだが、流石に片手で大人の女性を支え切る事は不可能で、二人とも階段から落ちた。そのたまたま隣にいた男性がアンドリューだったのだ。
「その時、女性とは出来るだけ関わらないようにしていた筈なのに、アンドリュー様は私を助けようとしてくれたの。幸い私もアンドリュー様も怪我はしなかったけど、怪我はないか気遣ってくれて、救護室にも連れて行ってくれて、良い人だなって」
「そうなのね」
「その事を報告したらウォルも興味を持ったみたいで、ちょうど坑道の跡地利用の件で法学系の有識者を探してたから『会ってみたい』って言われたの」
 それはお兄様としては、アイリスに男性が接近したから牽制する意味もあったのかも。
「実際会ったら気が合って、良く二人でとかデリックと三人でとかで食事したり、お茶したり、たまにはお酒を飲んだりしてるわ。ウォルと一緒の時間はデリックの次くらいで、私より長いのよ。それで、ウォルとしてはアンドリュー様に向こうの国での法的手続きなどを任せたいんだって」

「じゃあアンドリュー様は私と結婚してもしなくても向こうへ行くの?」
「うん。東国こっちだと例えば学園の同級生とかが依頼にかこつけて押し掛けて来たりしそうで嫌なんだって。とにかく環境を変えたいって言ってたわ」
「……」
 確かに媚薬を盛るような人なんだから、あの手この手、どんな手でも使って近付いて来そう。
 何なら国を超えてでも……

 ……うん。
 大きく頷くセラフィナ。
「セラ?」
 アイリスが黙って急に頷いたセラフィナを見上げる。
 セラフィナはアイリスの方へ振り向いて笑って言った。
「アイリス、私、アンドリュー様と結婚するわ」



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

恋は、やさしく

美凪ましろ
恋愛
失恋したばかりの彼女はひょんなことから新橋の街中で上司にお姫様抱っこされ……!? ――俺様な美形上司と彼女とのじんわりとした恋物語。 性描写の入る章には*マークをつけています。

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

退屈扱いされた私が、公爵様の教えで社交界を塗り替えるまで

有賀冬馬
恋愛
「お前は僕の隣に立つには足りない」――そう言い放たれた夜から、私の世界は壊れた。 辺境で侍女として働き始めた私は、公爵の教えで身だしなみも心も整えていく。 公爵は決して甘やかさない。だが、その公正さが私を変える力になった。 元婚約者の偽りは次々に暴かれ、私はもう泣かない。最後に私が選んだのは、自分を守ってくれた静かな人。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

厄災烙印の令嬢は貧乏辺境伯領に嫁がされるようです

あおまる三行
恋愛
王都の洗礼式で「厄災をもたらす」という烙印を持っていることを公表された令嬢・ルーチェ。 社交界では腫れ物扱い、家族からも厄介者として距離を置かれ、心がすり減るような日々を送ってきた彼女は、家の事情で辺境伯ダリウスのもとへ嫁ぐことになる。 辺境伯領は「貧乏」で知られている、魔獣のせいで荒廃しきった領地。 冷たい仕打ちには慣れてしまっていたルーチェは抵抗することなくそこへ向かい、辺境の生活にも身を縮める覚悟をしていた。 けれど、実際に待っていたのは──想像とはまるで違う、温かくて優しい人々と、穏やかで心が満たされていくような暮らし。 そして、誰より誠実なダリウスの隣で、ルーチェは少しずつ自分の居場所を取り戻していく。 静かな辺境から始まる、甘く優しい逆転マリッジラブ物語。 【追記】完結保証タグ追加しました

処理中です...